安原顕、通称ヤスケン。名前だけは聞いたことがあった。1939年東京生まれ。「マリ・クレール」「海」といった雑誌の編集者。本もたくさん書いていて、ジャズに関する著作も多い。そのヤスケンが、自らの好む作家を「再読」して書いた「書評」がこの本。幻冬社のPR誌『星星峡』に連載されていたものをまとめたものである。
「名作50選」とあるが、実は46選しかない。というのも、連載途中の2003年1月20日に、ヤスケンは帰らぬ人となったからである。
ここで取り上げられた作家・作品は、村上龍、吉本ばななに始まり、大江健三郎、島尾敏雄、安部公房、吉行淳之介、幸田文、井伏鱒二、川端康成、庄野潤三、太宰治など、多彩。46人中、私が読んだことのない作家も14〜15人いた。作品のおもしろさをうまく紹介しているので、つい「読んでみようかなあ」という気にさせる。でも、あまりにうまく要約しているので、読んでいない作品も「この要約を読んだから、もう(本物は読まなくても)いいか」と思ったのも事実。ある意味「あらすじで読む名作」に近い部分も。
中には「つまらない」「何がおもしろいのか」というふうにケチョンケチョンにしている作家もあるが、それはそれ、好みの問題だもんなあ。
若い頃読んで「すごい!」と思って何十年ぶりかに読み返して「やっぱりスゴイ」と思った作品もあれば、どこがおもしろかったのかわからない物もあるという。作品は読む人、本人の変化によって、鑑賞のされ方も変わってくるものだということの「人体実験」を行なったようなものか。
この本の「あとがき」の日付は・・・・驚くなかれ、亡くなる12日前の、2003年1月8日である。合掌。 |
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