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『洞窟オジさん・荒野の43年〜平成最強のホームレス驚愕の全サバイバルを語る』
(加村一馬、小学館:2004,5,10)
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私の読書日記を読んでくれたというI新アナウンス部長が、
「おれも月に何十冊も、本、読んでるけど、みっちゃんと重なる本、ほとんどないなあ。」そう言って、「最近読んでおもしろかった本」として薦めてくれたのがこの本。
親からの虐待を受けたことがきっかけで家出。足尾銅山の洞穴で愛犬・シロと暮らし始めた一馬少年は、毎日が食べ物を確保することの戦いだった。ヘビ、カタツムリ、コウモリ、ネズミ、ウサギ、イノシシ、シカ、カブトムシ、ミミズ・・・まあ、なんでも手当たり次第に食べなければ生きていけない山の生活。ルバング島の小野田さんを思い出したが、こちらは昭和21年生まれの少年が13歳からというから、昭和34年からの43年。「現代」である。シロの死後、だんだん里に降りてきて、自分を息子のように扱ってくれた新潟のおじさん・おばさんの親切の話やら、親切なトラックの運転手の話、「お金」というもの知ったことや「女」を知ったこと、「魚釣り名人」と呼ばれた時代、そしてこうした生活に終止符を打つことになった、去年(2003年)の逮捕事件。自動販売機から金を盗もうとバールでこじ開けようとしていたところをつかまったことで、彼の43年にわたる放浪生活が明らかになったのだ。語りおろしがまた、いいんだよなあ。
これを読んで、「あっ!」と思い出した。たしかこの話、去年の「あさイチ!」の「朝ネタ・バリューパック」で紹介したぞ!あのおじさんかあ・・・。
今は、魚釣り名人時代の"弟子"で身元引受人になってくれた人の家で、そこの家業である内装業の職人として働いているというこの加村さん、57歳。私はとてもこんなパワフルな"アウトドア生活"はできそうもない。スゴイ!の一言に尽きる。でも、そういった生活を始めることになった家出の動機が、「干し芋」は「マムシの干物」の「つまみ食い」を理由に父親から受けた「虐待」というところが、ショックだった。いかに少年期・少年期の子供への接し方が重要であるかということを、改めて考えさせられた。児童虐待は、何も最近の問題ではない、昔からあった。綿々と続いているのだ。その側面、にようやく社会の注目のスポットライトが当たったに過ぎない。そう思うと暗澹たる気持ちになったのだった。
今は内装職人として働いている加村さん。だが・・・・近い将来、また山か川に戻ってしまうのではないだろうか・・・。
なお、この本は加村さんに強い興味を覚えた「女性セブン」の記者の取材によるものであることを、最後に付け加えておく。

★★★★
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