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『博士の愛した数式』
(小川洋子、新潮社:2003,8,30)
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「本屋さんが選ぶ本大賞」(※1)とかなんとかいう賞を取って「本屋さん絶賛!」というふうな広告を見て「読んでみようかな」と購入。奥付をみてビックリ。なんと初版は去年の8月で、私が購入したのは、なんと17刷です!売れてるんだ!
で、読んでみての感想は、
「映画『ビューティフルマインド』(※2)と川上弘美の『センセイの鞄』を足して、味付けに江夏とタイガース振りかけたような小説」
です。というと「ありきたりなのか」、というとそうではなく、大変上質な、琴線に触れる物語ということです。本屋さんが薦めるのも、頷けるなと。
主人公は、1975年に遭った事故で現在は80分しか記憶が続かない、初老の数学の天才博士。1975年までの記憶プラス現在の80分だけの記憶の中で生きています。
その博士の家に配属された若い家政婦がヒロイン。彼女の目を通した博士の人柄。家政婦の小学生の息子の頭がまっ平らなところから「ルート」というニックネームを付けてかわいがる博士。「数学」という純粋な学問さながらの純粋な博士の人柄。素数を、そしてタイガースの背番号28江夏豊投手をこよなく愛する博士。「28」は、その約数をすべて足すとその数字自体=「28」になるという「完全数」。
途中、博士がルートに出した宿題、「1から10までを足すといくつになるか」の公式を考えるところでは、読む手を止めて、この本のカバーの紙に数式を書き出してしまった私。ついつい引き込まれて発見のある、穏やかな愛の小説です。
結局、タイトルの博士が愛した数式とは・・・数式に秘められた人間の生きざま、人生と愛を、映画のように描いてくれます。読むべし!
これって映像化権、もうどこかが押さえたのだろうか?

(※1)通称「本屋大賞」、正式名称は「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本 2004年本屋大賞」だそうです。
(※2)実在の数学者の伝記をもとにロン・ハワード監督が映画化。2002年のアカデミー賞主要4部門(作品賞・監督賞・助演女優賞・脚色賞)に輝いた。主人公は、プリンストン大学の数学科に在籍している数学の天才・ナッシュ。ナイーブなハートを持つこのナッシュをラッセル・クロウが熱演。また、ジェニファー・コネリーはアカデミー助演女優賞を受賞。(「平成ことば事情664・統合失調症とビューティフル・マインド」参照。)


(この「読書日記」始まってから、初の5つ星!)★★★★★
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