野沢尚といえば、『破線のマリス』で華々しくテレビ業界の内部を描いた鬼才。編集の女性があそこまで一人で力を持つ、というのは、同じテレビ局員としては、そしてチームワークでないと仕事を進められないテレビという仕事を知っている身としては「うそ臭さ」を覚えたのだが、それにしてもおもしろいサスペンスを書く、という印象があった。
その後、読売テレビのドラマ「リミット」の原作者としてお世話にもなった。番組の記者会見の司会をした時に、野沢さんご本人にもお目にかかった。(と言っても個人的に特に言葉を交わした、ということはなかったのだが。)
文庫化されたこの本、よく読んでみると、「破線のマリス」の続編ということで、またしても舞台はテレビ局。報道番組「ナイン・トゥ・テン」(なんだか、久米宏の所属する事務所「オフィス・トゥ・ワン」を想起させるではないか。)を巡る3つの話が描かれている。そして、第一章と第二章がベースとなって、第三章以降につながっていく。その当たりは巧妙に構成されていると言えるだろう。
読みやすい本で、引き込まれてゴールデンウィーク中に一気に読んだ。(2002年1月の刊行されたものの文庫化)。 |
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