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『江戸前の素顔
〜遊んだ・食べた・釣りをした』
(藤井克彦、つり人社:2004,2,20)
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3分クッキングを担当している日本テレビの高橋雄一アナウンサーが、小松菜について、
「小松菜って意外と東京でも作られている江戸前の野菜なんですね」
と言ったことをきっかけに、「江戸前」ってなんだろうか?と考えていたときに見つけたのが本書。
「私にとっては、心のふるさとである江戸前の海」
で始まるこの本には、「第8章『江戸前』という言葉を検証する」という章があり、著者の「私見」によると、「江戸前」とは「今の東京都内湾」で、また時代とともに「江戸前」の定義する範囲は広がってきたのではないか、とも書いている。
また第1章ではイラスト入りで、江戸前で獲れた(釣れた)魚も記されていて、図鑑のようなおもむきもある。
興味深かったのは、昔は深川でウナギが獲れて、代々、長州藩の川魚御用を務めた服部家の次男として嘉永6年(1853年)に生まれた服部倉次郎という人が「ウナギ養殖の祖」(宮城雄太郎氏『日本漁民伝』による)であるということ。そして下町は地盤が低く、ちょっとした大雨で池が氾濫してウナギが逃げ出してしまうことや、夏には水温が上がって渇水や病気との闘いを繰り返したことから、明治20年には養殖の池を、浜名湖湖畔の静岡県舞浜へ移し、それから今も全国に名高い「浜名湖のウナギ」となったことを、この本で初めて知った。服部倉次郎がいなければ、浜名湖のウナギも、夜のお菓子「ウナギパイ」もなかった、ということか。
とにかく、いずれの記述にも「江戸前」を深く愛する著者の心情がにじみ出ている。
「下町に生まれ釣り雑誌の編集長を務めた著者が『江戸前』の食文化、釣り、言葉の由来を大いに語る!」
という帯の言葉に、嘘はない。

★★★★
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