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『カラー版・地中海都市周遊』
(陣内秀信、福井憲彦、中公新書
:2000,7,25)
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まるで旅行会社のパンフレットのようなタイトルだが、観光ガイドブックではない。ベネティアの素晴らしく美しい写真が表紙になっているほか、「カラー版」と銘打っているだけあって、素晴らしく美しい写真が満載で、地中海に面した街の都市論・建築論・文化論を、法政大学建築学科教授の陣内秀信氏(1947年生まれ)と学習院大学史学科教授の福井憲彦氏が、対談で"周遊"している。
ちょっと専門的な部分があるのとカタカナが多いので、まったくイタリアやスペインの地中海沿いの街に行ったことがない方や興味のない方にはとっつきにくいかもしれないが、それでも写真を見ているだけで、うっとりすることは請け合い。一度でもそういった都市に行ったことがある人は、もっと興味を持って読める。そして行ったことがないそのほかの地中海都市に行ってみたくなる、きっと。
迷路のように入り組んだこういった地中海都市の町の構造を「非効率的」と決め付けてきた20世紀的な都市論とは違った、暮らす人にとって心地よい都市を、21世紀には気づかなくてはならないのではないか。地中海都市に住む人は真に「都市型人間」で「都市性」の高さが地中海世界の特徴であるとも書かれている。また、南イタリアの地中海都市の中には相互扶助の精神を持ったコミュニティもあり、それは日本の下町にちょっと似ている、という記述にも眼がひかれた。
それにしても、これだけ写真が入って980円+税=1029円は安いんじゃないのかな。保育社のカラーブックの新書版のような感じもした。

★★★
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