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『イラクりょこう日記〜家族ですごした
「戦場」の夏休み』
(よしおかふみ吉岡詠美子、吉岡逸夫、
エクスナレッジ、 2004,2,27)
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表紙の写真がいい。つい、買ってしまった。しかし。内容はというと、新聞記者のお父さんと元新聞カメラマンのお母さんに連れられて、小学2年生の女の子(7歳)が夏休みの家族旅行に行くというもの。サブタイトルのとおりです。イラクに行ったのは2003年の7月26日から8月9日。イラク戦争の「終結」から3か月、という時期だ。
「2年2組よしおか ふみ」と書かれた、ふみちゃんが書いた絵日記および写真は、夏休みの宿題(自由課題か)として、小学校の先生にも提出された。それとお母さん、お父さんがそれぞれの「旅行記」を書いたものを合わせて1冊の本にしてある。ユニークではある。しかし。本の中で新聞記者のお父さんも書いているが、周囲から見ると、小学2年生の「子連れイラク訪問」はあまりにも無謀に思える。もちろんほとんど何事もなく無事に帰国できたのは喜ばしいが、2年生のふみちゃんの初めての海外旅行の土地として、また小学2年生の子どもを連れて行く場所として、あの時期のイラクはふさわしいところだったろうか。他人の家庭の教育方針に口を出すつもりはないが、こうやって本まで出してしまうとなると、「ちょっと、違うのではないか」という思いはぬぐいきれない。
お父さんの「情緒的な報道を排したリポート」はなかなかだと思うが、子どもを連れて行くというのは、少なくともうちではやらない。中学生なら考えるが、小学2年生では、何が何やら分らないのではないか。先にやることがあるのではないか。「あとがきにかえて」での父と子の会話を読んでみると、
パパ:イラクへ、また行きたい?
ふみ:べつに。
パパ:どうして?辛かったから。暑いとか、言葉が通じなかったから?
ふみ:そんなんじゃない。
パパ:じゃあ、今度はアメリカへ行こうか?
ふみ:イヤ、北海道へ行きたいの。
パパ:北海道?何しに?
ふみ:スズランを見たいの。
パパ:スズランなんか、アメリカにもあるよ。
ふみ:えっ、あるの?
パパ:あるさ、アメリカは広いもの。
ふみ:ふみはきれなものが見たい。パリの国へも行きたい。
ほら、明らかにふみちゃんは嫌がっているじゃないか。親の気持ちを無理強いしてないか?イラク行ったあとにアメリカですか。いいじゃない、北海道で、北海道にもイラクに自衛隊を送り込んだ基地がありますよ。
子どもは親の所有物ではない。

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