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『つくられた障害「色盲」』
(高柳泰世、朝日文庫、2002,7,1)
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皆さんは「色盲検査」を受けたことがあるだろうか?点描画のように丸く描かれた中に、ほかの色で文字などが浮かぶように書かれたのを読む検査。こういった検査で「色盲」「色覚異常」とされた人たちは、大学などの受験資格がなくなったり、つきたい職業の試験を受けることさえできないという差別を受けてきたが、検査で引っかからなかった人たちにとっては、その現状はわかりにくい。名古屋の開業女性眼科医・高柳泰世さんがそういった現実に気付いて、言われなき差別や不利益を解消しようと取り組み始めたのは、今から30年前のことだった。
色覚検査で色覚異常とされた人が、実際に信号や薬の色を間違えることはほとんどなく、外国ではそういった制限や差別がないことを丹念に調べて、社会に訴える活動を続けてきた高柳医師。本書は「色盲」が「つくられた障害」であると気付いた著者の活動記録である。
最近、用語懇談会でも「『色盲』という言葉は差別的なのではないか?『色覚異常』といった方がいいのではないか?」という意見が出たことがあったが、そもそも我々は「色盲」という言葉で定義された状態の認識が薄いということを、本書を読んで痛感した。この本で高柳さんは「色覚異常」という言葉を用いているが、「もっと適切な呼び名はないのか?」ということにも考えは及んでいる。「色盲」「色弱」も不適切、「赤色盲」「緑色盲」「赤色弱」「緑色弱」というのも、赤が見えないだろう、緑が見えないだろう、というふうに間違った感じを抱かせる。その中で出てきた「色覚偏位」という言葉も提起しているが、「偏位」という言葉が難しい。高柳さんは、「いま私が一番いいと思うのは、『色覚特異性』『色覚特性』です。」としてさらに、「あなたもなにか、もっといい呼び名を考えてくださいませんか。」と呼びかけている。

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