分厚いこの本(524ページ)のカバーは、緑色をベースにした神戸の夜景。というのも、物語は神戸の阪神大震災前夜から始まるから・・・と思っていたら、ど真ん中に東京タワーが描かれているではないか。ダマサレタ。
借金苦で父親が自殺。その葬儀の晩に借金の返済を迫った叔父が、翌朝起きた阪神大震災で工場の下敷きになって死亡。チャンスとばかり、その胸ポケットから借用証を抜き取った雅也。と、死んだと思った叔父が動いた!思わず近くの瓦礫で叔父の頭を殴りつけ、動かなくなったのを確認してホッとして顔を上げた先には、その様子を凝視する女がいた・・・。
さあ、そこから始まる物語の主役は雅也なのか?それとも、雅也が叔父を殺すのを目撃した美冬なのか。息をもつかせぬ物語の展開は、私を久々に小説に引き込んだ。雅也の人物描写やその周辺の世界は、高村薫の『レディー・ジョーカー』に似ていなくもない。東野圭吾の作品を読むのは、実は江戸川乱歩賞受賞作の『放課後』(1985)以来だが、さすがに『放課後』よりは「エンタテインメント度」が上がっていた。
小説って、あまり細切れに読むと、登場人物の関係が分らなくなるから、ちょっと、時間と気持ちに余裕がないとなかなか読めないものだが、今回はわりと一気に読むことが出来てよかった。なかなか、おもしろうございました。『週刊プレイボーイ』に連載されていたもののようだが、連載で細切れで読むより、一気に読んだ方がおもしろい。この本、植村アナウンサーの”お奨め”ということで、借りて読みました。 |
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