• ■07月30日
  • ■07月30日

  • 2007.07.30

 今回はアメリカ東海岸・ボルチモアで開催され、スワッチとこだま兼嗣監督が参加したコンベンション「オタコン」の話の続きをさせてもらうよ。初めて読むという方はぜひ先週の日記も参照下さい。さてジム・キャリーが主演する心理サスペンス映画「The Number 23」という全米では公開されて数ヶ月になる作品があります。JALの機内先行上映でこだま監督ともどもしっかり観ちゃったんだけど、内容は23という数字に取り憑かれてしまう男の話なんだ。タイタニック号が沈んだ1912年4月15日の数字を足すと23だったり、シェイクスピアが生まれたのも亡くなったのも4月23日だったり、けっこうこじつけなんだけど23って何だか不気味な数字だって言うんだ。ハハって監督と笑ってたけど思い返せば、2人がNYのJFK空港からボルチモアに向かう時、恐怖の欠航表示を受けたのがDELTA航空の23ゲート。おかげでそのゲートには約4時間ステイいる羽目になった。そして何とか最後の便を捕まえて乗れたはいいけど、2人の荷物が載ってなかったのがDL6023便。映画の主人公と同じように僕たちも23という数字に取り憑かれてしまったのか…。

 結局、こだま監督とスワッチ2人とも荷物が届かないままホテルに1泊、1回目のパネルは各種資料がないまま決行。2日目の夜は同じくオタコンに参加していた声優の関 智一さん、能登麻美子さん、マッドハウスで監督をしている浅香守生さんらと一緒に楽しく食事をしました。2人とも着替えがないから昨日と同じ服装だったんだけど、食事後に荷物が空港に届いたという連絡をキャッチ。食事の後、すぐさまスワッチは通訳の唐橋さん(タカさん)と空港に向かったのであります。でも届いていたのは、こだま監督のスーツケースと紙の資料が入ったバッグのみ。嗚呼、スワッチが一番必要な洋服や私物、映像資料のDVDが入ったスーツケースは行方不明のまま。荷物3つの内、見つかったのが2つって事は…。まだまだ23の不気味な偶然は続いていたんだ!これにはタカさんも「『The Number 23』映画の呪いですかね」と真顔状態。で2泊目も自分の荷物なしで過ごすことに…。もう1日遅れたらマジで開けないまま役に立たないままで送り返すことになるじゃん…。もう笑うしかないのにその力もないし、2人のパネルにも大きく影響する。あの大切なブルーのスーツケースは一体どこに行っちゃったのよー?

 そして3日目の朝。昨日さんざんお願いしたホテルのコンシェルジュ(世話係)に再度チェックしてもらって、オタコンのスタッフにもお願いして、あの手この手を尽くしてね。昼12時から始まる2度目のパネルまでに映像資料が欲しかったから、とにかくもう1度タカさんと一緒に車で空港に向かったんだ。この時点でボルチモア空港に3日連続毎日訪れてることになってマス。前夜と同じように皆の荷物がある所を捜して「ああやっぱり無いなあ」と思いながら荷物のカウンター奥の小さい部屋に入ったところ、自分の青いスーツケースが1個だけポツンと立ってて、思わず大きな声で「あった〜!」と叫んでしまいました。荷物受け取り場に大声の日本語が響き渡ったのです。とにかくその荷物を持ってすぐにホテルに帰ったんだけど、その時点で既に午前11時。パネルに間に合うように超特急で洋服を着替えてさっぱりし、映像資料のDVDも持って会場へ向かいちゃんと映像が流れるかをチェック。全ての準備、確認が終わったのが11時50分。ギリギリでこだま監督と一緒の2回目のパネルに突入です。

 この日はアニメ企画の作り方がテーマだったんだけど、2人で一緒にようやく現地の観客に映像を見せる事ができたんだ。「結界師」はどんな作品なんだろうと皆の注目が集まる中、オープニングの映像を流して大拍手、「名探偵コナン」は英語、中国語、日本語に吹き替えたモノを見比べてもらいました。「シティーハンター」は第1話を流したら、すごくイイ反応で結局ストーリーを上映しながらお話を続けました。「シティーハンター」で集まってくれたファンも多くて20年前、10年前、そして現在、と観客と一緒に良い歴史の歩み方をした気がします。こだまさん、タカさん、そしてパネルに参加してくれた観客の皆さん、楽しく密度の濃い時間をありがとうございました。

 さて荷物の心配もなくなり、パネルが無事に終わった後は、ボルチモア名物はカニ、と言うことで2夜連続でクラブケーキと呼ばれるカニの丸いコロッケみたいな料理を食べます。こう書くとカニクリームコロッケみたいなモノを想像すると思うけど、この料理はカニの身がいっぱい詰まっているミートボールならぬカニ身ボールみたいな料理でムチャクチャうまい!関さんは2夜連続で「アメリカだからとにかく肉!」とばかりにこの日は1.5キロのステーキを注文。少し手伝いましたが見事な食欲。ホントに楽しく美味しくいただきました。ボルチモアには水族館、軍艦、潜水艦もあってすべてが一般公開されてます。短い時間だったけど見学できるだけしました。戦争については日本人とは真逆な感覚の展示が多く、なんだか複雑ですがこーゆー感じでみんなに真実を伝えることは大切だよね、とこだま監督としみじみ会話。それにしてもこの潜水艦は実際に日本の軍艦をいくつか沈めたって。うーん、とにかくこちらで働きながらもオタコンを手伝ってる根木さん、小林さんらにも現地案内を含めて本当にお世話になりました。こーゆーイベントの成功は大勢のスタッフにかかってるよね。その後はさしたるトラブルもなく、2人とも無事に日本に帰る事ができました。ありがとうございました。

 話は変わりますが、23日に放送した「黄色い不在証明」のトリックなどの事がおたよりコーナーで何人かの方に指摘されてます。実はいくつかの指摘が正しいことは事前に理解した上でシナリオ作成を致しました。脚本家の大野さんはヒマワリ(向日葵)の花が開いた状態では太陽を追わない事を調べていましたし、実際の実験は出来てませんが、午後の直射太陽光を4、5時間浴びたら、ヒマワリはあの寝姿のままじゃないかも、少しは光の影響があるでしょう、倒れたまんまとは異なるはず、などと話し合いました。遺体を車のトランクに入れて移動したのは死後硬直の問題もあっておかしいという指摘もありましたが、犯行後数時間ならばトランクの温度の関係もあり、ぎりぎり誤差の範囲と理解しようか、などとも話し合っていました。

 実際少し荒いストーリーであることは認めた上で、このお話で一番見せたかったのは犯行時の最後に「触ったりしてないのにヒマワリが落ちて倒れた」ところです。被害者のヒマワリに対する思い入れは、小五郎の口を借りるまでもなくかなりなもので、その事に対する「ヒマワリの恩返し」の構図が大きいのです。実はコナンのお話にこのタイプの表現(科学的に証明されない出来事)はほとんどありません。それゆえ、犯人からその話を聞いた事に対するコナン君の反応もちょっと薄めです。エピローグの小五郎のヒマワリへの会話にしてもしかりです。このお話ではそんなところを表現したかったのです。以上が今回の「黄色い不在証明」という作品を放送するに至った要因です。

 いつもの事であり、どの作品に対してもそうですが、制作者としてこれがポイントだ!とする思いがある事を、今回はこのような説明にしてお伝えいたしました。いずれにしましても実際にいろいろ応援・ご意見・ご批判をいただくのはうれしいものです。本当にありがとうございます。さらにコナンとしてのミステリーのレベルを維持しつつ、そして設定・ストーリーの面白さを守りつつ、コナンのスタンスをさらに広げていくべく努力や工夫をしていくのは当たり前で、それを踏まえて、あえて誤解や批判を覚悟の上、これはやっていきましょう、的な判断をする事を怖がらないようにしたいと思っています。まずは第一に面白いコナンであることを目指してスタッフ一同がんばって取り組んで行きます。どうかこれからも真摯にもしくは明るく(笑)ご意見いただけますよう、よろしくお願いいたします。

 さて8月6日に放送する「結界師」は「志々尾驚きの経歴」。前回は触りだけだったけど、今回は小さい頃や夜行に来たばかりの頃など、限の知られざる過去が詳しく語られるんだ。その内容はホントに衝撃的なモノでね。正守の口から語られた限の過去に良守はどんな反応をするのか…。そして、本当に限は補佐役を解任されて烏森の地を去ってしまうのか…。限の過去だけじゃなく、今後も明らかになる重要な回だから見逃さないようにね。そして、6日の「名探偵コナン」は「山姥の刃物(後編)」を放送するよ。前編は怖〜い終わり方だったけど、本当にお婆さんはヤマンバなのでしょうか!? 全てが明らかになる後編をお楽しみに!

 そういえばビッグコミックスペリオール誌に2回にわたって、「結界師」の現場ネタがロドリゲス井ノ介「世界の中心でクダをまく(仮)」に登場してます。我らが音楽スタッフ高H嬢の世界戦略を中心に、いろんなスタッフがそれぞれ見事に勝手な言動をしています。もちろんこだま監督も良守役の吉野くんもちょいと名前を変えて登場。とにかく漫画家のロドリーさんが自らこっちの世界へ飛び込んできての渾身のリポート(?)です。ちょっと面白いので良かったら手にとって読んでみてくださいね。