• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民193人目
  • 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民193人目

  • 2013.07.04

 今週のアニ民はアニメーターの神村幸子さんです。神村さんと初めてお会いしたのは「シティーハンター」の立ち上げの頃です。キャラクターデザインと作画監督をお願いしたところからなんです。でもそれは監督をこだま兼嗣さんにお願いしたことは絶対影響あります。だって神村さんはこだまさんの奥さまなんですから。

 でも奥さまだからキャラクターデザインをお願いします、なんていう簡単な仕事の世界じゃないことはわかりますよね。この時も時間のない中、原作の北条先生(アニ民167)に提案した候補の中から見事に選んでいただき、その後のアニメ快進撃を突き進む原動力になってもらったんですよ。

 でも実際にこだま監督の描こうとする世界観に一番近い作品になったのは神村さんのおかげが大きいと思います。だって一つ間違えれば主役はあの“もっこりリョウちゃん”なので、女性ファンに嫌われちゃうことだってあったのです。こだまさんが「シティーハンターは女性に不快感を与えないように努力した」裏には神村さんの支えや協力があったに違いありませんから。

 その後も僕は「名探偵コナン」始めいくつかの作品でお世話になりますが、一番記憶に残っているのが「ブラック・ジャック」ですね。メインキャラクターデザインや総作画監督を務めてもらったのですが、最初のED大塚愛「黒毛和牛上塩タン焼680円」の作画には驚きました。だってただただピノコがカワイイんですもの。ピノコの一挙手一投足がすべて愛おしく、歌の力もあるのですが、最初に見た時の“ごちそうさま”気分にも似た(牛タンなだけに?)満足感みたいな感情をよく覚えています。

 神村さんの描くキャラクターは線が綺麗でリンとしたところがあるのに、どことなくあたたかい何かを持っていてとても魅力的です。そして最近はアニメーター業界を良くしていこうという使命感から、後進の指導も含めた活動を数多くこなしています。そしてまたまた僕との接点ができたのが「アニメミライ」であります。アニメーターの先立である神村さんは、実績も含めたその地位を持って、“新人アニメーター育成プロジェクト”であるアニメミライに、プロダクトマネージャー桶田さん(アニ民177)とがっつり手を組んで参加されています。というか、こと“育成”の部分は基本的に神村さんの采配ですよね。

 とにかく見て面白い企画を選ぼうとする選考委員である僕たちと、その作品の制作課程が有意義なアニメーター育成になるかどうか、の目線で企画を見る神村さんたち。その対立は今後のアニメーションを背負って立つ人材と企画を、との討論になり、詰まるところ、日本のアニメーションの未来を考えることにつながるわけです。先日発表あった「アニメミライ2013」の4企画はどれもその両者を兼ね備える作品だと自負してます。

 アニメージュで連載されてたカワイイ1ページマンガ「食べ物にはいつも感謝のココロ」には、僕がこだまさんに差し上げた大阪みやげなどを数回取り上げてくれてました。ちゃんと選んでお渡ししたものなので、その伝わり方がすごく嬉しかったなあ。そして今回もアニメミライの会合の際に、神村さんにお渡ししたメモがしっかりこだまさんに流れ、久しぶりにこだまさんと会食できたりします。別に直接電話すればいいのですが、ビリヤードでワンクッションあってボールをポケットに落とすような所作の重なりがすごくハッピー。人間関係チェーンとでも言いましょうか、繋がってるよね、っていう感覚は最高です。

 絵を描く大先輩として、そしてそのスペシャルな技法を少しでも後進に指導伝承しようと日々努力されてる神村さん。アニメミライの一連の作業は膨大で大変でしょうが、そろそろまたステキな新しいキャラデザの世界も見せてくださいね。