• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民12人目
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  • 2009.10.29

 今週の住民は役者・声優の神谷 明さんです。

 数多くいる声優の中でもその道の第1人者は誰?という問いに多くの方が名前を挙げるのが神谷 明さんでしょう。僕もずいぶんと長いお付き合いになりますが、一番最初に神谷さんをお見かけしたのは東京に出てきてまもないころです。それはYTV東京支社があった有楽町線麹町駅のホームでした。もちろん声をかけられるわけもなく、ただ「神谷さんでも地下鉄に乗るんだ」的な感想を持った記憶があります。

 その神谷さんとあまり時をおかずお仕事でご一緒になるなんて、めぐり会わせとは面白いものです。というのも「シティーハンター」の企画を進めているときに当然キャステイングの話になりますが、当時すでに他局で「北斗の拳」ケンシロウと「キン肉マン」キン肉マンをされてて、いろいろな意味で同じ少年ジャンプのものをできる余地はないんじゃないか、と思えたからです。なのにオーディションに参加してくれちゃいました。そしてこだま監督もいち押しで決定、実はジャンプ編集部サイドから、たまたま編集部に訪れていた神谷さん自身にシティーハンターはどうですか?と声がかかっていたそうで、これはやはりめぐり会わせなんだなと得心したのを覚えています。

 1987年4月月曜19時のTVアニメ「シティーハンター」放送開始(ちなみに19時30分は「きまぐれオレンジロード」同時スタートでした)、神谷さん演じる冴羽リョウと伊倉一恵さん演じる香とのコンビネーションは見事にハマり、原作者・北条 司さん描くスタイリッシュな絵柄と、エピック・ソニーの何人ものアーチストによる都会的な音楽も支持されて、それから10年以上も続く人気シリーズになったのです。神谷さんは番組の挿入歌も歌ってくれましたよね。

 そして1989年10月「YAWARA!」がスタート。この作品でも神谷さんは主人公・猪熊 柔に想いをよせる2枚目・風祭進之介を演じてくれます。バルセロナ五輪に向かってTVシリーズとして丸3年続いたこの番組は、1996年のアトランタ五輪に合わせてSPで復活、完結編がNTV「金曜ロードショー」で放送されました。

 そうなると僕は思います、神谷さんと一緒にお仕事をすると長く続く作品になるのではないかと。実は「名探偵コナン」のスタートは決して順調なものではありませんでした。でも毛利小五郎の役を神谷さんにお願いできて、高山さん山崎さんと一緒に家族同様のチームを作ることができたところで、この作品の成功が見えてきた気がします。やはり神谷さんとは“良いジンクス”が確かにそこにあったのです。

 そういえば小五郎の声は、自分の台詞の他に変声機でコナンが小五郎の声で話す、といういわば別キャラ2面性を持つ表現が必要なので本当に難しく、初めの数回は神谷さんがいろんな試行錯誤をされてたのを覚えています。あのユニークなしゃがれ声の小五郎は、まさしくプロフェショナルなキャラクターボイスと言えますね。

 同じように「シティーハンター」当時から、冴羽リョウの声は2枚目と3枚目を併せ持った、完成度の高い総合芸とも言えるキャラクターボイスなんだと神谷さんは言ってましたね。そんなこともあってか自分の事務所を「冴羽商事」と名づけるほどです。さらには全国各地で精力的に活動されている「ふれ愛コンサート」では「毛利のおっちゃんの歌」なんて楽しい替え歌を披露してくれてる神谷さん。役者として声優として、ほぼ本人と同化してるいくつものキャラクターを愛し続けてくれてます。この度はほぼ14年間にわたる毛利小五郎を、本当にありがとうございました。

 でもコナンも続くし神谷 明さんの活躍も続きます。もちろん僕との23年を越えるお付き合いはこれからも増えていきます。経営者や先生としての後進の指導はもちろんですが、飲むたびに話し合ってます“理想のチームで理想のアニメーション作り”を目指して、これからも一緒にゆっくりがんばっていきましょうね。冒頭の写真はちょっと前の東京・大塚での食事会、左から冴羽商事・古川さん、スワッチ、TMS・吉岡P、神谷さんです。