• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民29人目
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  • 2010.02.25

 今週は「名探偵コナン」文芸担当の飯岡順一さんです。

 飯岡さんは「名探偵コナン」TVシリーズのしょっぱなからスタッフしてくれてる数少ない制作メンバーの一人です。でも僕が最初に出会ったのは1985年のアニメ「ロボタン」制作時。そのころからいつもコワイ顔をしてほぼすべての脚本に厳しい意見を投げかける飯岡さんに、ちょっととっつきにくい意識を持っていましたね。

 そんな飯岡さんはしかしとんでもない歴史と実績の持ち主であります。かの「ルパン三世」はTVシリーズスタート時から文芸を担当。「ルパン三世officialマガジン」(双葉社刊)では’ルパンと共に35年’なんていう連載もされてたほど。「ガンバの冒険」「元祖天才バカボン」など東京ムービーのそうそうたる歴史を担ってます。

 実は僕のアニメデビュー作「ロボタン」を担当してもらってたわけではなかったのですが、なぜかそのころから知っていました。やはりあのころのスタッフでやりあってた居酒屋での交流のたまものでしょうか。でもあんまり自分のことを良く言われた記憶はないのですが。

 なので本当にお仕事をご一緒するのは1996年6月「名探偵コナン」第1話のシナリオ会議からでした。いやそう言えばコナンは第2話から先行して制作しましたね、だって第1話にはコナン君がほとんど出ないので。それからほぼ毎週1回TMSの会議室などで飯岡さんと会っていることになります。

 その歴史の中でこれまでコナンの脚本を書かれている脚本家さんはのべ40人以上。おそらくそのほとんどの人が飯岡さんを恐れているかもしれません。今まで飯岡さんがボツにしたプロットは数知れず、そのペーパーを積み上げただけで人の背くらいになってます。会議中いつも最後に意見する飯岡さんの突っ込みは鋭く厳しく、それまでこれで行けるかな、と思わせた原稿を見事にひっくり返すこともしばしば。長年ミステリーに親しんでつちかってきたその含蓄に富んだ意見は、未だにシャープで切れ味鮮やかに伝わります。

 でもわざわざそんな言い方をしなくていいのに、と思うようなシーンも・・・。

 なかなか取っつきにくいタイプで、見た目も含めて昭和な憎まれオヤジを自認する飯岡さんは、でも「名探偵コナン」にとってその作品クオリティを守る最後の防波堤のような存在なのでしょう。青山先生の原作に負けない面白いオリジナルストーリーをお届けできる背景には、多くのすご腕脚本家に加えて、何かとバッサバッサと切り捨ててそして組み立てていく、ちょっとコワイ憎まれオヤジのカゲを感じてもらえると、見てもらうコナンの面白さも倍増するかもしれませんね。