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『アニ民298人目』作家の大倉崇裕さん
- 2017.04.06
今週のアニ民は作家の大倉崇裕(たかひろ)さんです。大倉さんには今年の劇場版「名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)」の脚本を担当してもらいました。われわれコナンスタッフが大倉さんと会うきっかけになったのは大倉さんの作品「福家警部補の挨拶」でした。ドラマにもなったこの作品の倒叙法的ミステリーの面白さに、青山先生も気に入ってこちらからアプローチをかけさせてもらったのです。
初めてお会いしたのは一昨年秋ごろ、渋谷のホテルのラウンジでしたっけ。こちらチームは監督や文芸担当、プロデューサーら全7名。一人でおいでいただいた大倉さんを囲んじゃう感じでした。最初から穏やかな、名探偵がゆっくりと犯人を追い詰めていくようなリズムの話し方がすごく印象的で、会ってすぐにでもコナンチームでのお仕事をお願いしたい感じでしたね。
事前打ち合わせの上、百人一首をテーマにし、青山先生との打ち合わせ前に用意してもらった最初のプロットも、オリジナリティにあふれてました。登場人物のキャラクターにも厚みがあり、最初から方向性は変わりませんでしたね。せっかくなのでお得意の?倒叙法的ミステリー要素も、とお願いしてあるのですが、さて、この作品を観ていただいたみなさまはどう受け取られますか、そこもぜひお楽しみにです。ちなみに先に紹介した4月15日土曜18時放送「名探偵コナン 消えた黒帯の謎」はから紅のスピンオフ作品、もちろん大倉さんのシナリオです。公開初日恒例の施策ですが、どちらを先に見ても“あるつながり”を楽しめるようにしてくれました。
そんな大倉さん、子供の頃からさぞ沢山の本をお読みになってる、と思いきや本を読みだしたのは大学になってからだそうです。それもミステリー、最初に手に取ったのがアガサクリスティー「五匹の子豚」と「ナイルに死す」。この名作に心つかまれた大倉青年はそれから、1年間に200冊以上、大学生の間に1000冊は読破したとか。
大好きなのは親が見ていたという「刑事コロンボ」。というわけで大倉さんなりのコロンボミステリーを開発しようと強烈に試行錯誤を繰り返して、ようやくある方法論にたどり着いて書けたのが「福家警部補」でした。コロンボ好きな人が喜んでもらえれば、と思って書き続け、まずミステリーマニアが支持、そして3冊目の本が出た頃にドラマ化されたということです。
一口に倒叙法と言っても先に犯人を見せておけば良い、なんてものではありません。実際に作って書いていくのはものすごく大変だそうです。犯人も殺人方法も見せてしまうので隠すものが何もない状態。福家が犯人を逮捕する最後の決めポイントをちゃんとしておかないと小説として面白くならないので、普通のミステリーものの3倍くらい手間もエネルギーもかかるとか。
そんな中での「名探偵コナン」です。ミステリー好きになった大学卒業の頃に始まったコナンはもちろんその頃から大好き。そして「コナンの歴史は作家としての成長に重なっている」とまでおっしゃってくれました。なので、今回のお話が来た時は脚本を書いたことない小説家に、ホントに大丈夫かなって思ったって。うーん、こーゆーご縁ってすごいし、うれしいですね。
一時はお酒の大手企業の営業もやってたという経歴を持ってる大倉さん、今もお酒はなんでも大好きということです。さらに「刑事コロンボ」で好きな話は「仮面の男」だそうで…もう「お酒」と「コロンボ」ってボクの趣味とマジ重なりまくりです。昨年8月13日に放送された「名探偵コナン 不思議な少年」は大倉さんがコナンに対しての見事なアプローチを示してくれて、コナン世界における10年というのをあざやかにあぶり出してくれた名作でした。今後はどうあれミステリーに関わって行きたい、10年後もコナンも含めて今のまま仕事を続けて行きたいと語る大倉さん。もう超大歓迎です。本当に公私・趣味共にずっとおつきあい下さいね。