• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民69人目
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  • 2010.12.02

 今週は声優の大塚明夫さんです。

 名探偵コナンで双子の横溝兄弟警部を両方とも演じてる大塚さん。ここではいつものように明夫さん、と呼ばせてもらいます。そんな大塚さんと初めて出会ったのは1995年「魔法騎士レイアース」の時。確か大塚さんは主人公の女子中学2年生3人(光・海・風)の一人、鳳凰寺風ちゃんの操る魔神(マシン)〔空神ウインダム〕の役でした。他の二体の魔神を演じるベテラン役者、田中秀幸さんと玄田哲章さんとの三つ巴の演技に、魔神バトルのスケール感をしっかり感じられたという記憶があります。

 実は僕と明夫さんは学年で同級生であります。何かにつけて同じ年代に同じ時代の風を受けていたと思うのですが、明夫さんの話を聞いていると僕とは異質なかなり壮絶な青春を過ごしたようです。まあ、父親が業界のパイオニアたる超有名な声優とあっては、フツーの一般庶民とは成長過程が違うのかもしれません。そしておそらくかなりの紆余曲折あって飛び込んだのが役者の世界。明夫さんがキャラクターを演じる時にいつも、そのキャラ自身が設定されてるものだけではない“何か=プラスα”をかもし出せるのは、そんなもろもろの過去を背負ってのことでしょう。

 そんなことを強く感じたのはもちろんあの「ブラック・ジャック =BJ」という作品においてです。2003年12月に、キャラクター生誕30年を記念した2時間スペシャルのアフレコの際にそれまでとは何か違う出会い方をしました。そこでのBJというキャラクターの模索的な会話から、お互いの距離がずいぶん近くなった気がします。実はBJはこのTVスペシャルのかなり前に、アニメビデオ作品として10本が作られていてそれも当然明夫さん。というわけでご本人はBJイメージがしっかり出来ていたのですが、その時はそれに反してTV放送を前提にしたキャラ造りの再構築をお願いしたのです。

 それは、簡単に言うと子供にも伝わるBJということ。月曜夜7時の放送ということもあって、原作と違って第1話からピノコがいる設定にしたりいろいろ工夫しました。あのニヒルな厭世観さえ漂わせるキャラから一線を引き、わかりやすいヒューマニズム方向に向いてもらったのです。みなさんご覧になっていかがでしたか?結果は賛否両論、とにかく手塚治虫教にどっぷりはまっている僕が、手塚眞監督らと満を持して制作したスペシャルは見事成功。それを受けそれから約1年後に始まったTVシリーズは2年間続きましたが残念ながらそこまで。最後の半年にチャレンジした「ブラック・ジャック21」では、明夫さんはもちろん制作側の僕たちも全てをさらけ出してがんばったのですが、結果を出せずじまいに終わってしまいました。でもそんなことがあってもBJという手塚先生が生み出したキャラクターは不滅です。今でもCMなどでも明夫さんBJは健在ですよね。

 それにしても「名探偵コナン」11月27日と12月4日放送「湯煙密室のシナリオ(前後編)」に久しぶり出演は横溝重悟の方。舞台が箱根なので神奈川県警登場、ちなみに兄の参悟の方は静岡県警所属です。で、どちらかといえば荒っぽく直情的な弟の方がやりやすいという明夫さん。いつぞやの映画で兄弟が一緒に登場した時などはちょっと見ものでした。それにしてもこの双子兄弟の名前、参悟重悟(サンゴジュウゴ)なんて、もうコナン15周年を祝うために出てきていたキャラみたいですね。

 最近は2人だけのほうがしっかり飲めたりするかなあ。役者と制作、一緒の世界にいてもお互いの立つフィールドは微妙に違っているけど、送り出す作品に込めるタマシイの強さ大きさは同じなようです。半世紀以上こき使ってきた身体にだけは気をつけて、これからもこの世界でゆっくりじっくり楽しくチャレンジし続けていこうな。