• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民72人目
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  • 2010.12.23

 今週はグループ・タック社長 故田代敦巳さんです。

 今年は猛暑が続いたせいか、関係者にも訃報がいつもよりも多く感じました。その中でも特にこの人のお名前に故をつけなければならないのがとても辛い悔しい、信じられないそんなバカな、と大声で叫びたい。耳を疑う知らせからもう5ヶ月が過ぎようとしてます。僕にとってそんな友人の田代さんと初めてお会いしたのは1994年9月のこと。僕が10月から月曜夜7時30分「魔法騎士レイアース」の放送を目指していた時、7時からの相方の作品「ストリートファイターIIV」の制作会社が田代さんとこのタックでした。

 田代さんに紹介してもらったストIIVの主役2人は羽賀研二さんと辻谷耕史さん。後に「犬夜叉」でべったり一緒になる辻谷さんとはこの時が初めて。実は月曜夜7時アニメはこの年の4月から9月までお休みしていて、10月からはリスタート!大きな勝負を仕掛けるタイミングだったのです。できることは全部やる、を合言葉に別作品なのに何度か打ち合わせをしてかなりなパブリシティ協力がお互いにできました。

 そんなことがあったせいか、21世紀を迎えても何かにつけて食事などをご一緒する機会に恵まれ、田代さんの仕事やプライベートを知る事になっていきます。まず特筆すべきは東京国際アニメフェアの功労賞受賞です。ここ3年僕はその賞の審査員をさせてもらってますが、その前の年の受賞を知った時はすぐお祝いの電話を入れさせてもらいました。はるかアニメの黎明期、虫プロ時代の音響監督を始めアニメ業界に多大な貢献をした、それ故の受賞は異論の無い所です。制作会社としても「タッチ」で伝説的な成功をおさめ、その後もそのエネルギッシュな企画開発活動は僕が知る限りでも片手に余ります。

 そんな田代さんとタツノコプロの成嶋さんを紹介し、3人で中野Fで食事してから3年経ってませんよね。その時から事実上始動したのであろう企画が映画「みつばちハッチ」です。その念願の作品の公開初日、劇場に向かう前のランチの際に突然具合が悪くなったと聞きます。映画完成までなかなか大変な現場であったろう事は想像に難くありません。またひとつ大きな作品をやり切ったと安心されたのでしょうか。

 AT-X社長・岩田さんのアニ民文章のTさんは田代さんです。西伊豆の海に面したお宅には2度お伺いしてます。庭先から深夜の海に入っちゃったことがありましたね。トゲで触れない見事なサボテンにお酒の箱をかぶせてナイフでバッサリ、豪快なお土産は自宅でしっかり根を張ってますよ。でかいキャンピングカーの話も最高です、一度乗りたかったなあ。仕事でもあった音響システムコレクションもこれはもう文化財じゃないのか?的なものがあり、僕らの世代では決してそこまではいけないハイレベルの趣味をいくつも操っている感じでした。そしてその一つにワインがありました。大好きなワインはリシュブールでしたね。田代さんのおかげで普通のぼくなら出会う事さえ難しいリシュブールの真髄?に少し近づけたのかも。

 海を連想させる様な青いボトルを集めていましたよね。すごくきれいな一品を手に入れ今度お持ちしよう、と思っていたものはどうしたら良いのでしょうか。何故か僕がレギュラーの仕事をしている火曜日夕方になると電話をくれましたね、本音はいつもお誘いにのりたかった。…もうどうしてもどう言っても最後です。僕に本当の本物の’ダンディズム’を教えてくれた田代さん。享年70歳。心よりご冥福をお祈り致します。