-
『アニメ村のステキな住民たち』アニ民88人目
- 2011.04.21
今週は声優の難波圭一さんです。
超ベテラン声優の難波さんと初めてお会いした作品は1989年「シティーハンター3」になりますか。ちょっと高めなトーンボイスと、その粘着力ある演技は一度聞いてしまうと、なかなか耳から離れてくれません。
レギュラーでキャステイングさせてもらった事はなく、「シティーハンター」でも「金田一少年の事件簿」でも「名探偵コナン」でもその時その時のゲスト出演がほとんどです。なのでそんなによくお会いする訳ではないんですが、アフレコのあとの打ち上げ食事会には必ずって言っていいほど来てくれて、毎回業界や声優のウラ話をチャメっけタップリに聞かせてくれたりします。
実は金田一の時の事、僕が一生涯忘れる事が出来ない事件?が起きた事がありました。その首謀者はもちろんチャメっけタップリな難波さんでありました。それはある金田一のアフレコが終了したあと、いつも打ち上げと称して食事をするお店Bでの事です。普通なら僕もアフレコに参加したあと一緒にお店に行くのに、その時は別件でアフレコには間にあわず(そこですでに仕事になっていない)、みんながBで盛り上がった頃に合流するタイミングとなってしまったのです。
「遅れてスミマセーン」と言いながら僕がドアを開けてお店に入ると、いつもの様に仲間が20人以上いるかという店内の様子がおかしいのです。「だいたいTV局のプロデューサー自身がアフレコに来ないなんて番組を大切にしていない証拠だ!」通る声で言い放ったのが難波さん。なんだ?何かもめているのか?僕はみんなの席を左に見ながら入り口と反対の奥にあるトイレへと駆け込みました。「落ち着け!東映アニメの清水さんもちゃんといたし、電話でアフレコが順調な事は確認した。ならばその後、たとえばこの店で何かあったのか?」
先に仕事になってないと言いましたが、毎週必ず参加しているアフレコにこの日は遅れて行けなかった後ろめたさもあって、想像は悪い方へ傾いていきます。とにかく番組に悪い影響を与える事だけは無い様にしなくちゃ、と意を決して空いている席につき、一番に目があった二又さんに何があったのか聞こうとするのを流され、金田一役の松野にも背を向けられ、清水さんにこっそり聞こうにも要領を得ません。必死の僕に針のムシロの様な数分が過ぎたところで、なぜか周りから小さく笑い声が…。
その瞬間「ドッキリだよーん!」と叫んだのも難波さん。聞けば1時間以上前から全員で僕をハメるために打ち合わせしてたとのこと。唖然としている僕に、その日遅れた負い目があるとは言え、ここまで見事にはまるとは思わなかった、だいたいそろそろ来るかな、とみんなが思っていた時間よりもさらに僕が遅れたため、ほとんどの人はその事を忘れていた、とは同席していたみなさんの弁。それがかえって場の空気にリアリティを呼んでいて、難波さんだけはキッチリその役を果たしたっていう訳でした。
それにしても恐ろしむべきは役者という人種。僕にクレームを言うその言い方に演技という匂いは全く感じないのです。その人がその場で本気で当然のように口にした、ただそれだけ。こーゆー人は敵にまわしたくないですね。…僕がその日に口にしたにがーいビールの味を、細かくみなさんに説明したいような夜でした。
さてその難波さん、映画「名探偵コナン 沈黙の15分」にもゲストで出演してくれてます。犯人含めた容疑者チームの一人ですが、さてどんな役どころで登場か、ぜひスクリーンの前で確かめて下さい。という訳で難波さん、ぼくはあの夜を絶対忘れることができません。でも正直に言ってすごく感謝もしています。それから難波さんに会うたびに逆に妙な親近感を持つ事が出来たのですから。「タッチ」のかっちゃんから今回の映画コナンまで幅広い演技に加えて、今は後進の育成に力を注いでいる難波さん。これからもその演技力で視聴者はもちろん僕らスタッフもビックリさせて下さいね。そしてそのうちこの僕が難波さんをきっちりと…(笑)。