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『アニ民277人目』東宝株式会社 宣伝部の林原祥一さん
- 2016.05.26
今週のアニメ日記は東宝株式会社 宣伝部 林原祥一さんです。劇場版「名探偵コナン」の宣伝を手がけて4年目の宣伝プロデューサー(=宣プロ)林原さんが、今回の「純黒の悪夢(ナイトメア)」がとんでもない成績を出す大きな原動力になったのは間違いありません。そんな林原さんと初めて会ったのは先代の宣プロ・平野さんの紹介だったと思います。
その時の林原さんってまだ20代前半。青山先生と同じ鳥取県出身で、コナン担当は運命だと言ってましたね。でも、今思い出してもそのころからなんだかしっかりしていて、すでに駆け出し然とはしてなかったですね。少し小柄ですがあごひげもクールで「モテルックス」の林原さん、ここでせっかくなのでそんな林原さんがこの4年間、コナン劇場版においてやってきたことを挙げてみましょう。
まずは第17作「絶海の探偵(プライベート・アイ)」。舞台になる自衛隊海軍のイージス艦バックに、ゲスト声優の柴咲コウさんを中心に、彼女が演じた女性自衛官30人以上を集めてパブリシティ写真を撮りました。その甲斐あってか劇場版シリーズの最高成績を獲得。その年の「ルパン三世vs名探偵コナンTHE MOVIE」の宣プロも務めてもらい、ルパンのキャラも借りたユニークな宣伝で、なんと興行収入が42.3億円という大ヒット。そしてすぐ続いた18作目「異次元の狙撃手(スナイパー)」も劇場版コナン史上初の40億円越えとなる41.1億円を記録。
記憶に新しいところでは第19作目「業火の向日葵」のキッドスティールプロジェクトでしょうか。「少年サンデー」誌上初という“ロゴが盗まれた表紙”号がリリースされたり、TVシリーズでもエンド部分の絵が盗まれたカタチの放送をしたり、果ては改名した「鳥取砂丘コナン空港」でも空港を挙げてキッドの仕業に見せたスティールイベントを決行。そういえば東京・原宿のKIDDY LANDのDYが盗まれ、KID LANDになっていたのも驚かされました。極めつけは画伯と言われる俳優・田辺誠一さんを起用した脱力感満載ポスター。今でも見ると思わずニヤリとしてしまいます。
そして今年は劇場版20周年!黒ずくめの奴らとのバトルという事で林原さんが考え出したのがB.I.P=ブラックインパクトプロジェクト。昨年ロゴが盗まれた「少年サンデー」、今度は表紙が真っ黒に染まり、TVシリーズではエンドの絵がほぼ黒く放送されました。極め付けが、とにかく黒いという事で、コナン君キャラで作ったB.I.Pポスターと同じ構図で、あの色黒の松崎しげるさんにコナン蝶ネクタイをしてもらい撮影した秀逸な画像。ボクらは「SHIGERUポスター」と呼んでます(笑)ご覧になった方もいると思いますが、ボクは初見の時、一瞬なんだかわからない黒いインパクトの衝撃を受けた後、思わず吹き出し、さらにジワジワくる面白さに耐えきれない感じでしたね。
林原さんはこれらの宣伝活動を、ほとんど自ら考え実行してくれます。宣伝というのはなかなか本当の効果を計るのは難しいものですが、劇場版コナンの場合は実際に4年連続右肩上がりの成長を続けています。ボクのラジオ「スワラジ」に出演してもらった時に、「あまり映画は観てきてなかったけど宣伝活動には興味があった」と語ってくれました。それで東宝に入社してるのはさすが。わがラジオスタッフも「最近の仕事が出来る若者、っていうタイプですね」なんていう感想を言ってました。
さて東宝宣伝部において劇場版「名探偵コナン」の担当をされた方々は、いずれも卒業された後も大きな活躍をされています。歴代担当を挙げますと、戸嶋さん、大垣さん、上田さん、幕内さん、平野さん、そして林原さん。それぞれがみな、間違いなく死力を尽くして各作品のパブリシティ活動をしてくれました。その積み重ねを武器にして、今の林原さんがその活動範囲をさらに拡大してることになります。そのおかげもあって劇場版コナン20作目は驚異的新記録の成績をたたき出せました。本当に感謝です。
そしてわれわれスタッフはすでに次のステージに視野を向けています。「名探偵コナン」という作品が大きくなればなるほどその舵取りはいろんな面で難しくなっていきます。でもこと「宣伝」という分野の航海士はキマリですよね。どうかこれからも大型客船コナン号?の舵取りを、楽しくやんちゃに面白く、よろしくお願いいたしますね。