• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民114人目
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  • 2011.10.27

 今週はアニメーションディレクター故鳥居宥之(ひろゆき)さんです。

 またまたステキな昭和の香りを放つ業界の先輩の訃報が届いてしまいました。鳥居さんは僕にとってその人となりがお手本であり、すごい人オーラがでているのにぜんぜん身近に感じられて…不思議な感触を持つ“おじさん”でした。

 そもそも僕と鳥居さんの接点は1990年9月15日放送「コボちゃんスペシャル 秋がいっぱい」です。まだ敬老の日が9月15日と決まっていたころ、この90分スペシャルの監督として出会ったのです。エイケンのプロデューサー小野さん[94]や宣弘社の伊藤さんらと共に、足掛け7年にわたるアニメ「コボちゃん」シリーズスタートの地固めが出来たのは、この鳥居監督の手腕に寄るところが大きかったですね。

 まだ20代のひよっこプロデューサーだった僕が、番組のカタチなどに対する要望を一生懸命説明する目を、じっと見つめて聞いてくれて少し間あっておもむろに「わかりました」と言ってニヤッとした鳥居さん。その笑顔にどれだけの安心感をもらったかわかりません。90分という長尺に4コママンガという素材、いくつもの苦労はあったと思いますが“敬老の日のプレゼント”のように祝日の午後を飾り、関東で16.3%(ビデオリサーチ調べ)もの視聴率を取った番組となりました。

 あまり本人の口から聞くことは無かったのですが「桃屋」のCM「のり平アニメ」をキャラクターデザインから演出までかれこれ40年も担当していました。あのCMが持ってた軽妙洒脱さは出演の三木のり平さん由来であることはもちろんですが、少なからず鳥居さんのキャラクターも重なっていたことも確かです。

 制作会社エイケンの前身TCJでアニメーターとしてスタートした鳥居さんは、その後「宇宙少年ソラン」「サスケ」「忍風カムイ外伝」「おんぶおばけ(YTV作品!)」「サザエさん」などの演出を手がけていきます。僕が懐かしくジンとなる作品ばかりです。先日TAF功労賞を受けられた脚本家・雪室俊一さんも「鳥居さんはサザエさんに絶対必要な監督だった」とおっしゃってました。

 小野さん[94]のアニ民にこんなことを書きました。[もうみんなイイ年をしたアニメコボちゃんスタッフが(山梨県の)小野さんの家に集まった事がありましたね。楽しかったなあ、垣根の無い気心が知れた仲間と言うのはこーゆーみんなを言うのでしょう]ここはもちろん鳥居さんも一緒だったのです。

 思い起こせば先述のコボちゃんSPのお話を村田さん[6]が持ってきたのは1988年秋。先日10月10日その村田さんと数年ぶりにTAFアニメアワードの会場で会ってるころ、鳥居さんは旅立たれたようです。とにかく飄々として江戸っ子気質でキレが良くてまんまる笑顔が妙に子供っぽくて…。9月までは全然元気だったそうなのに本当に悔しいです。享年71歳、早すぎますね。心からご冥福をお祈りいたします。