• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民120人目
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  • 2011.12.08

 さあ、遅れていた名古屋地区でも公開が始まった映画「神☆ヴォイス」。僕のアニ民にこの人を入れないわけには行きません。というわけで今週は主役の一人をつとめてくれた梶裕貴さんです。ここでは最近こう呼ばせてもらってる、かじくんでいかせてもらいます。

 こんなに活躍しているかじくんとは「神☆ヴォイス」が初めての出会いです。代々木にある所属事務所の打ち合わせ室で、佐野監督[117]とも一緒だったその日はうんざりするほど暑い日でした。所属事務所社長ややチーフマネージャーの前で、当代切っての売れっ子声優25歳はどんな会話をするんだろう、とこちらがちょっと緊張して望んだのですが、見事にフツーの優等生。ちょっと拍子抜けしたのもつかの間、撮影の内容や主役としてのキャラクターの会話を重ねるにつけ、果てを見せないその中性的な声にここは強く打ち出すぞ、とかここはゆずらないぞなどの芯の強さが見えてきて、このキャステイングの成功を確信いたしました。

 実は僕らスタッフの中には、この企画の一番最初からかじくんがいました。というより、かじくんをあの主役に想定してストーリーを積み重ねていったくらいです。僕らの女帝・ポニーキャニオン古川さん[109]が「かじくんはぽにきゃんが見出して育てたのよ」と断言。事実ぽにきゃんのオーディションのあと、アニメ「Over Drive」の主人公・篠崎ミコト役に抜擢されています。そのころの印象の強さがまるでブレずに「神☆ヴォイス」の真ん中に一本すくっと通っていくことになります。

 映画が作られていく過程には当然のようにたくさんの困難が待ち受けています。限定されていた映画の収録時間という条件の下、それらを完璧に払いのけるようなそれこそ120%の力を出し切った演技は、主役であると言うこと以上にこの映画にとって強い心臓のような存在でした。白池悠宙と久保寺辰真、かじくんと羽多野渉さんとの力強いツーショットは、劇中アニメのストーリー「リヴァリス」のように、いかにもそこにずっとあったかのような安定感を見せてくれます。これらすべて、役を背負う自覚を持った役者が見せる、強い意思の現われなんでしょうね。

 だいたい声優って言っても、元来演技の勉強を重ねてきた役者であります。今回の企画には、声優というジャンル枠みたいなものがあるのならそれを打ち破り、声優としての可能性を業界内外に示していこうという意図もこめていたので、特にこの二人にはそれを見事に体現してもらったことになります。

 さて、よくよく調べてみたらかじくんには「ヤッターマン」に1度出演してもらってました。おとなしそうな新郎の役でした。ベテラン音響監督のZACK・清水さんも注目しているのでしょう。それにしても深夜枠アニメにも本当によく出演しているかじくん。目の肥えた、いや耳も肥えた厳しいファンも納得させるようなニッチな作品に、ちょっと気の弱そうなまじめな中性的な男の子を演じさせたら、今は右に並ぶものはいない独走的唯一な状態です。そりゃレギュラー10本とかになっちゃいますよね。そんな時でもとにかくどんな忙しくても絶対必要なのが食であります。また少しの時間でも捻出してなんとか僕らスタッフに付き合ってもらって、楽しく美味しい食事をしましょう。そしてアニメのみならずいろんなコンテンツの若き作り手送り手として、強く大きくこの業界を支えて行ってくださいね。写真は「神☆ヴォイス」撮影終了時の3ショット、左から羽多野さん、佐野監督、かじくんです。