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『アニ民229人目』声優の故 矢田耕司さん
- 2014.06.05
今週のアニ民は声優の故 矢田耕司さんです。
それは突然の訃報でした。あの日夕方、アフレコスタジオのロビーにいた一人の携帯が鳴って、それが強い哀しみの始まりでした。僕が矢田さんと最初に出会ったのは「シティーハンター」ですが「金田一少年の事件簿」はもちろん、「名探偵コナン」では帝丹高校の校長先生を演じてもらってたりして。
でも何よりビックリしたのは我が読売テレビの最初のアニメ作品「黄金バット」や「巨人の星」にも出演してもらってたことです。「ルパン三世第一シリーズ」や「宇宙戦艦ヤマト」もそうなので、もうパーフェクトに読売テレビアニメの歴史を担ってもらってたんだなって改めて感心してしまいます。
僕にとっての矢田さんは「エンジェル・ハート」の陳侍従長であり「まじっく快斗」の寺井寅之助であります。この両作品では出演してもらった時は毎回アフレコ後の打ち上げにいつもご一緒してもらってました。
矢田さんはさすが役者というかいつもカッコいいんです。身なりがオシャレで英国紳士調なのに、一緒に飲んで話し出すとその身近なオジちゃん感覚が本当にステキでした。お酒を飲むほどに気持ち良く赤らんだ小柄な紳士との楽しい会話は、いつもいつまでも時の経つのを忘れさせてくれました。
矢田さんの演技の特徴は“なぜか憎めない老人”なんですが、そのキャラの内面に凛としたものを感じさせてくれるところです。ともすれば単におどけたりふざけたりするとそのシーンにオチをつけるだけに終わるんですが、矢田さんが演じるとオチだけでなくそのシーン全体を支えてくれるというか、もう少し深い意味があるような気がしてしまうのです。
それはお酒の席でも同じで、ユニークな経験の思い出話を大笑いして聞きながら、結局はおしゃれな矢田さんのフトコロ中で気持ちよく楽しんじゃってる自分によく気がついたものです。
ゴルフの腕も上級でプレーもスタイルもハイレベルで楽しんだ人でした。所属プロダクションのゴルフコンペではプレーも見事な腕前ですが、プレー後のパーティーもコトのほか元気でハイテンション。(他の人もみな声が大きいのですが)矢田さんの声もうるさいくらいにぎやかで、矢田さんの席は隅っこにしなくちゃ、とスタッフがボヤくほど。ご自分のゴルフクラブなどを更新する度に、そんなスタッフに惜しげも無く差し上げてたそうです。
埼玉県新座市で執り行われたお通夜に参加してきました。夕暮れに浮かびあがる立派なセレモニーホール。ここで役者仲間や業界関係者といったい何人の方々に会えたことか。この集まった人たち一人ひとりが、矢田さんの明るい笑顔が突然なくなった喪失感にさいなまれているに違いありません。
人が切れない焼香の列の先の祭壇には、スーツでキメた矢田さんがいました。それは僕らを大きく包んでくれてたいつもの超笑顔ではありませんでした。でもその笑顔は一緒に時間を過ごせた僕らの宝物にさせておいてくれるということですよね。矢田さん、シブくて楽しく元気なジイさんキャラを本当にありがとうございました。どうか天国で安らかにおやすみ下さい。享年81歳、心よりご冥福をお祈りします。