• 『アニ民218人目』 声優の加藤精三さん
  • 『アニ民218人目』 声優の加藤精三さん

  • 2014.02.13

 今週のアニ民は、業界創成期からずっとトップ声優として活躍してこられた故 加藤精三さんです。僕らの世代からすると加藤さんの声を聞くだけでその作品世界を感じてしまう、それが一つだけではなくいくつも、そんな存在。あまりに超有名なのでここで記す必要もないのでしょうが、どうしても記憶に鮮明に残るのが「巨人の星」の星一徹役でしょう。あの頑固親父を存分に表現されて、視聴者に強いキャラクター輪郭を与えました。実は一度しかなかったらしい“ちゃぶ台返し”も含めて、一つのキャラクターとして認知されていますが、僕としてはそれよりもっと奥まった、飛雄馬に対しての血の通った人間としての父親像をはっきりと示して見せてくれてたような気がしてます。

 そして「名探偵コナン」でお願いしてた役が警視庁のお偉方・松本管理官。威厳ある発言やキレのある指示に見ているこちらも、一つ背筋にスジが通ったようなピシッとしたしっかりしたものを感じました。画面に登場するだけでその事件の大きさが左右されるので、進行上では登場タイミングが大切なキャラクターです。原作の青山先生も松本管理官を出すような事件かどうか、結構考えていらっしゃるに違いありません。加藤さんが声で登場することすなわち警視庁を揺るがす大事件、っていうことですから。

 TVシリーズ「名探偵コナン」最後の登場は昨年1月に放送された「命を懸けた現場中継」三話シリーズでしょうか。事件の解決を目指すのはもちろんですが、タブレットに映った瀕死の状態の高木刑事を助けんとする的確な指示は、目暮警部や佐藤刑事にビシビシ伝わり、その声から伝わる緊張感はこのストーリーの生命線でした。あのわれらがコナン君をしても、松本管理官には抵抗しないというか触れられない威厳みたいなものを感じてたような気さえします。事件解決後のラブな二人のキスシーンを一番喜んでいたのは他ならぬ松本管理官だったのかもしれません。このシリーズの放送からちょうど一年たった1月17日、残念ながら永久への旅立ちをされてしまいました。

 神谷明さんの加藤さんに対する追悼発言に「激しくも優しい先輩」というのがありました。そう言えば毛利小五郎を演じてた先代の神谷さん、元は警視庁にいて松本管理官の部下でもあったのですね。役者仲間でもリーダー的立場だったのでしょう。そして実はおそらくずっとコナンの出演声優陣最年長の座を守っていただきました。その存在と演技に震えるような感動を、強い感謝に代えて変えてひたすら頭を下げさせていただきます。

 繰り返します、加藤精三さん。本当に長い間素晴らしい声と演技をありがとうございました。享年86歳、心よりご冥福をお祈りいたします。