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『道浦TIME』

新・ことば事情

5982「全治不明」

 

 

大分・杵築市で、父親が自宅に灯油を撒き子ども4人が死んだ火事の裁判が1月26日に開かれました。そのニュースで、生き残った三女の「やけどの程度」が、

「全治不明の大やけど」

と出て来ました。この、

「全治不明」

という言葉は初めて見ました。普通は、

「全治2か月」

など「全治」の後には、

「治るまでの期間」

が記されます。それが「不明」だというのですね。意味はわかります。

検察側の書類を確認すると、そこに「全治不明」と書かれていたので、放送ではそのまま出して放送しました。

グーグル検索(2月3日)では、

「全治不明」=1万9400件

でした。その中でトップに出て来た「ヤフー知恵袋」に、

「傷害事件等のニュース記事にある『全治不詳』のケガというのは、どの程度のケガの事を言うのでしょうか?また、『全治不明』のケガと違うのでしょうか?」

という質問があり、これに対する回答では、

「概ね、1年以上の全治期間がかかるものは、このように表現されているようです。1年以上の全治期間というと、ほとんど後遺症が残るなど"全治"とは言いがたいケガなのだろうと思います。 "全治不詳"と"全治不明"は同じ意味と理解してよいと思います。」

とありました。友人の内科医に聞いてみたところ、

「普通は『全治1か月の大ケガ』のように言うから『全治不明』というのは単に回復までの期間が予想できないくらい重症ということでしょうか?少なくとも内科医は使わない言葉ですね。『全治』って久しぶりに聞きました。外科医が扱う事故などの外傷の場合、補償する期間の目安が欲しいのかもしれませんね」

ということでした。お医者さんでも「全治」を使う医者と、使わない医者があるんですね。

 

(2016、2、3)

2016年2月14日 11:40 | コメント (0)