新・ことば事情
5804「発疹はハッシンか?ホッシンか?」
6月21日に行われた新聞用語懇談会放送分科会で、私からこんな質問を出しました。
『「発疹」を、若いアナウンサーやデスクも「ホッシン」と読んでいます。神戸の女子短大の学生に聞いてみても、皆「ホッシン」と。『新明解国語辞典』第7版では「ホッシン」は「はっしんの古風な表現」と記されていますが、本当に「ホッシン」は「古風な表現」なのでしょうか?(第4、5版では「ハッシンの『老人語』」とあった)最近は「ハッシン」から「ホッシン」へ、回帰しているのではないでしょうか?』
これに対する各社の委員からの意見は、
(新聞協会・I専門委員)「ホツ」のほうが「ハツ」よりも古い。「発議」も、昔は「ホツギ」と言ったが、今は「ハツギ」だ。現在検討している新しい「新聞用語集」の「放送で標準とする読み方例」では「①ハッシン②ホッシン」と既に決定したが、これが変わる可能性があるということか?
(テレビ朝日・A氏)確かに「ホッシン」も聞くような気がする。もし、道浦氏の言うような傾向があるとするならば、個人的な見解だが、「ハッシン」という音の言葉が「メール等の「発信」でよく使われるようになって、「同音を避ける」ために「発疹」は「ホッシン」と読むようになっているのではないだろうか?
(テレビ朝日・B氏)20代~40代後半のアナウンサーに「発疹」をどう読むか聞いたところ、全員「ホッシン」と答えた。「スタート」の意味の「発進」とも音が同じなので、それを避けるために「ホッシン」と言うのではないか?病名では「発疹(ホッシン)チフス」「突発性発疹(ハッシン)」。
(NHK・C氏)伝統的な読み方では大正3年(1914年)の辞書『辞海』では「ハッシン」とあり、「ホッシン」のほうが新しい。「発作(ホッサ)」と混同して「発疹(ハッシン)」も「ホッシン」と読むようになったのではないだろうか?1994年に行った「『発疹』をどう読むか?」というNHKの調査では、「ハッシン」=50%:「ホッシン」=47%だったが、その後「ホッシン」は増えているようだ。
(フジテレビ・D氏)個人的には「ホッシン」と読むが、フジテレビのハンドブックでは「①ハッシン ②ホッシン(古くは「ホッシン」。医療現場は「ホッシン」が多い)」と書いてある。
(TBS・E氏)私は「ハッシン」と読む。TBSでは「①ハッシン ②ホッシン」。『新明解国語辞典』の4版・5版では、道浦氏の言うように「ホッシンは、ハッシンの老人語」だったが、その前の1、2版では、確か「百姓読み」と書かれていたのでは。「医学事典」を引くと「突発性発疹(ホッシン)」など「ホッシン」と読むものが多い。(ここはテレビ朝日・B氏と意見が相違する。)以前は「発疹チフス」も「ホッシンのみ」と書いてあった。
(ABC・F氏)「ホッシン」と読むことになっており。私も「ホッシン」で読む。
(MBS・G氏)個人的には「ホッシン」派だが、会議で「ハッシン」になったので「ハッシン」。
(MBS・H氏)小児科の先生は「ホッシン」と言うが、ハンドブックは「①ハッシン ②ホッシン」となっている。
(KTV・J氏)入社時、当時のアナウンス部長に「ハッシンと読むんだ!」と言われた。先日、アナウンス部の若手3人に聞いたところ、全員「ホッシン」と答えた。
(ABC・K氏)あまり参考にならないと思うが、滋賀の田舎に住む母に聞いたところ「ブツブツができるのが『ホッシン』、皮膚がただ赤くなるだけのは『ハッシン』」と言っていた。
(日本テレビ・L氏)ハンドブックでは「両方○」。「①・②」の順番は付けていない。ただし、1つの原稿・1つの番組の中では統一するようにしている。個人的には「ホッシン」。
(日本テレビ・M氏)個人的には「ホッシン」だったが、入社してから「ハッシン」に直された。
(WOWOW・N氏)プライベートでは「ホッシン」。しかし、入社研修で「ハッシン」と教わったので、今は原稿を読むとしたら「ハッシン」。
(新聞協会・I専門委員)意見を聞いていると、「新聞用語集」では「両方○」とするのが妥当だろう。「ハッシン・ホッシン」の順番は変えずに、変更する。
というように活発な論議が行われたのでした。
(追記)
7月10日の日本テレビ「スッキリ!!」を見ていたら、今、子どもたちの間で、
「リンゴ病」
が流行っているというニュースを放送していました。ほっぺたが赤くなる病気ですよね。正式な病名は、
「伝染性紅斑(こうはん)」
と言うそうです。最近「伝染病」とは言わないで、「感染症」と言うようになっているので、
「感染性紅斑」
なんじゃないかな?とも思ったのですが、それはさておき、この病気の特徴として、
「発疹が出る」
ということの「発疹」を、上重アナと専門医がともに、
「ホッシン」
と言っていました。
(2015、7、10)