過去の放送

#2282月10日(日)10:25~放送
コスタリカ

今回のお届け先は中米のコスタリカ。微生物の力を使って環境保全に取り組む有用微生物群(EM)技術者の西川高鶴さん(49)と、滋賀県に住む母・英子さん(70)、コスタリカから日本へ留学に来ている高鶴さんの長男・輝さん(20)、次男・穂さん(17)をつなぐ。かつては農林水産省に勤め、将来を嘱望されていた高鶴さん。母は「ある日突然、辞めて帰って来て、“反対せんとってな。僕はコスタリカに行く”と言われて驚きました」と当時を振り返る。

豊かな自然を誇る一方、まだまだインフラが整備されていないコスタリカ。ゴミは焼却されず埋め立てられ、下水もそのまま川に垂れ流しの状態だ。高鶴さんは、微生物が持つ分解の力を使って産業廃棄物を肥料に変えたり、下水や産業廃水を浄化したりする会社の経営者兼技術者。生態系を壊さず、共存した形で環境保全できる地球に優しいこの方法は今、大きな注目を集めているという。高鶴さん自らも工場などの現場に足繁く通い、微生物の品質管理をするだけでなく、技術指導も行うなど、現地で厚い信頼を寄せられている。

大学で農業を学び、農林水産省ではエリート官僚として将来を嘱望されていた高鶴さん。しかし3年で農水省を辞め、農業指導員としてホンジュラスへ。高鶴さんは「机の上で数字とにらめっこするのが辛かった。実際にものを触り、作って成果を得たかった」と語る。その後、ホンジュラス人の妻・ノエミさん(42)と結婚してコスタリカへ移住。EMと出会い、今の会社を立ち上げた。気がつけば23年。今やこの国は彼にとっても、4人の子どもたちにとっても故郷となった。「コスタリカから汚染という言葉をなくしたい。全体から見たらアリみたいな小さな存在かもしれないが、誰かがどこかで始めないといけない。じゃあ俺がやろうと」。高鶴さんはそんな情熱を秘めてこの仕事に取り組んでいるのだ。

日本へ留学中の息子たちからビデオレターが届いた。そこには留学生活の報告や両親への感謝、そして「恩を返せるように頑張る」というメッセージが語られていた。高鶴さんは「外へ出て行きたいというところは、僕と似ているなと思いますね。自分たちの意志で日本に行ったので、最後まで貫けということは言っています」と話す。そんな高鶴さんには、後悔の念と共に思い出すことがある。忙しさのあまり、死に目にも会えず葬儀にも参列できなかった父のこと。それだけに「母には今すぐにでもこちらに来て欲しい。一緒に暮らしたい」と願うが…。

いま高鶴さんは、コスタリカでは数少ない下水処理場の浄化に取り組んでいる。設備が古く悪臭問題が起こり、下水処理場が独自に他の微生物を入れるなどして対処してきたが、効果がなかったという。それを今年から高鶴さんの会社が請け負い、大きな効果を上げている。こうした国家プロジェクトで結果を出せば、将来的に大きな仕事につながっていく。「やっと“下書き”ができて、これから色を塗っていくという感じですね。今回の仕事を前例にして、もう一歩前に進みたい」と高鶴さんはいう。

そんな高鶴さんへ日本の母から届けられたのは、高鶴さんの大好物、滋賀の名産「鮒ずし」だ。高鶴さんは「まさかコスタリカで味わえるとは!」と大感激。母への想いが募る高鶴さんは「ぜひコスタリカへ来て欲しい。親孝行をしたい」と切望するのだった。