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#122「チリ/サンティアゴ」 10月10日(日) 午前10:25〜10:55


 今回のお届け先は、世界最高峰のサーカス団、シルク・ドゥ・ソレイユ・キダムの公演が行われているチリ・サンティアゴ。そのキダムで縄跳びパフォーマーとして活躍する田口師永さん(34)と、東京に住む父・東治さん(68)、母・絹代さん(65)をつなぐ。7年前、キダムのオーディションに合格し、以来世界中を旅しながら舞台に立ち続ける息子を、両親は「こんなに続くとは思っていなかった。ケガをしないように最後まで頑張って欲しい」と、応援しながら見守っている。

 世界の頂点に立つ超一流のパフォーマーたちの中、唯一人の日本人として奮闘する師永さん。現在は縄跳びチームのリーダーとして、演技の構成も手がけ、チームでのコンビネーションや、ソロでのアクロバティックな演技で華麗な縄跳びパフォーマンスを披露し、観客を魅了している。

 幼い頃から運動が大好きで、幼稚園から高校まで器械体操を続けていた師永さんが、縄跳びパフォーマンスと出会ったのは24歳の時。その道で生きていく事を決意した師永さんは、勤めていた会社を辞め、仲間と世界中を旅しながらパフォーマーとしての腕を磨いた。「会社を辞めるとき、『次はどうするんだ』と聞かれ、『縄跳びをやろうと思う』と言ったら、『それだけは社長に言うな』と言われた。白い目で見られている感じでした(笑)」と、師永さんは振り返る。そして27歳の時、キダムがパフォーマーを募集していることを知り、師永さんは自分たちが生み出した縄跳びの技のビデオをキダムに送り、見事採用された。その決断に両親は一切反対しなかったという。「『そうか』とうなずいて、『やってみたらどうだ』と言ってくれた。たった一言でも肯定してくれたことは、自分のやりたい方向へ進む上で大きな後押しになった。感謝している」と師永さんは話す。

 年中世界各地を放浪するキダムは、一つの共同体のようなもの。メンバーは決まった住居を持てないため、皆ホテル暮らしで、師永さんも昨年6月に入籍した妻の麻理さん(29)と共に世界中を転々としている。「8年間ホテル暮らしです。常に引っ越しみたいなものですが、どんな環境でも馴染みます」と笑う師永さん。週に1度の休演日には、決まって夫婦で町へ繰り出し、麻理さんも「いろいろなところに行けて楽しい」という。キダムが次の開催国へ移動する際には、1週間ほど休みが取れるため、その国の観光名所には夫婦で必ず訪れるという。

 キダムは世界中のパフォーマーが一度は立ちたいと憧れる舞台。入団を希望する若者は後を絶たず、競争も激しい。師永さんが在籍する7年間に、なんとメンバーの3分の2が新人と入れ替わったという。しかも公演は週に10回。34才という年齢は決して若くはない。「今のレベルでのパフォーマンスができなくなったときは自分から辞めるとき。レベルを下げてまでやろうとは思わないし、そこまで甘い世界じゃない」と師永さんは語る。

 そんな師永さんに両親から届けられたのは、小学校の時に体育の授業で使っていた「縄跳び頑張りカード」。"一つ一つ目標をクリアしたあの頃のように、夢を追い続け、頑張ってほしい"という思いが込められていた。師永さんは、そのカードを懐かしそうに見つめながら、「60才で仲間と縄跳びチームを組みたい」と夢を語る。