◆ことばの話2675「生マグロ」

夕方のテレビで、
「生マグロ水揚げ日本一・・・南紀勝浦港」
という字幕スーパーが出ているのを、アナウンス部でテレビを見ていた数人から、
「『生マグロ』って、何?」
という疑問が。調べてみると、
「生マグロ=水揚げされてから一度も冷凍されないマグロ。」
つまり、近海のマグロの場合のみ可能な形態ですね。もちろん「冷凍マグロ」は、
「いったん冷凍されたマグロ」
です。冷凍されたら「生」とは言えないのかぁ。
それにしても言いにくいですね、この、
「ナママグロ」
というのは。
「すもももももももものうち(李《スモモ》も桃《モモ》も、桃《モモ》のうち)」
「にわにはにわにわとりがいる(庭には二羽、鶏《ニワトリ》がいる)」
みたいに、早口言葉にしてみよう!
「ナママグロ、ナママグロ、ナママグロ、ミ・ナママグロ、あわせてナママグロ、ム・ナママグロ」
いかがでせうか?

2006/10/16


◆ことばの話2674「皇族の『さま』」

報道のS解説委員からメールが届きました。
「道浦さま。皇室関連の方々の敬称の表記に関してです。
『皇太子さま、雅子さま、悠仁さま・・・・』
は、なぜ、「様」ではなく「さま」なのですか?ご教示下さいませ。」
これに対して、こういう答えを返しました。
「『日テレ用語集』69ページのコラムに、こう書かれています。
「皇族に対する敬称にひらがなの『さま』を使うようになったのは、恐らく戦後のことだろう。『様』を使わず『さま』にする理由ははっきりしないが、2003年現在、多くの新聞社、放送局、通信社で「さま」が使われている。皇室に対する親近感の表れと見る向きもある。」
つまり、はっきりとは、わからないようだね。「親近感」から言うならば、「戦後」という大きな区切りより、「ミッチー・ブーム」の皇太子ご成婚以降、つまり昭和34年(1959年)からではないでしょうか?
それと、戦前に教育を受けた人たちは「様」の字を、「永様(=「樣」・・・「様」の旧字体)」「次様」「水様(普通の現在使っている「様」)」の3種類に使い分けていたようですから、そういった気持ちから考えると、戦後に皇族も一般国民もみんな一緒で「(普通の)様」にすることへの抵抗があったという可能性も考えられますね。』
そのあともうちょっと調べてみると、新たに「これがきっかけではないか?」というものを見つけました。
『昭和27(1952)年4月の国語審議会議決「これからの敬語」の中の「敬称」に、
(1)「さん」を標準の形とする
(2)「さま(様)」は、あらたまった場合の形、また慣用語に見られるが、主として手紙のあて名に使う。』
と、ひらがなで「さま」、( )の中に「様」と漢字があります。これが起源かもしれません。
また明治以降の、特に第2次大戦後の「漢字撲滅」の流れなどもあって、「ひらがな表記」が採用されたのではないでしょうか?今は「漢字復活」の時代ですが。
なぜ皇族は「様」と漢字ではなく、平仮名で「さま」なのか、ご存知の方、ご教示ください。
2006/10/12


◆ことばの話2673「高層アパート」

日本時間の10月12日早朝、ニューヨーク・マンハッタンの高層マンションに小型プロペラ機が激突、2人が死亡するという事故が起きました。5年前の「9・11」同時多発テロを彷彿させましたがテロではなく、小型飛行機はなんと、ニューヨーク・ヤンキースのコリー・ライドル投手が操縦していたものでした・・・。
そのニュースを伝えた10月12日の日本テレビ「ニュース・リアルタイム」では、
「高層マンション」
と表現していました。12日の夕刊各紙の表現を見ると、微妙に表現が違います。
(見出し)   (本文)
(読売)高層アパート   50階建て高層アパート
(朝日)高層住宅   50階建てアパート、高層ビル、高層アパート
(毎日)ビル   50階建て高層アパート
(産経)アパート   50階建ての高層アパート
(日経)ビル    五十階建ての高層住宅

「ビル」だったり「アパート」だったり「住宅」だったり。なぜか「マンション」という表現はありません。やっぱり本来の「マンション」ではないからでしょうか。日本じゃないし。
そしてもう一つ気になったのは、50階建てのビルでありながら、
「超高層」
という表現が使われておらず、すべて「高層」となっていることです。ニューヨーク・マンハッタンでは、「50階」ごときでは「超高層」じゃないのでしょう。なんてったってあの「エンパイアステートビル」は「101階建て」ですもんね。では、一体、マンハッタンでは、何階から「超高層」なんでしょうか?
「平成ことば事情2528 超高層は何階から?」もお読みください。
2006/10/12


◆ことばの話2672「楽しくないですか」

10月9日、「ズームイン!!SUPER」を見ていたら、日本テレビ系のワイド番組の司会者が、相互に他の番組にも顔を出すということを宣伝していました。体育の日は「日テレ系・秋まつり」なんだそうです。それを紹介した羽鳥アナウンサーが、
「誰がどこにいつ出てくるかは、わからないんです。楽しくないですか。」
と言いました。思わず、別に楽しかねえよ、とテレビ画面に向かって返しそうになりました。引っかかったのはこの、
「楽しくないですか」
という物言い。押し付けがましい言い方だと、私は感じます。
「楽しいでしょ」
の方が自然だと思いますが、最近こういった
「○○ないですか」
という「疑問形」を取っているようで実は何も尋ねていない上に、しゃべり手の感覚を押しつけている、しかもそのことに関して本人が自覚がないという話し方をする若者が増えています。いやだなあ・・・。あ、でも昔も、
「いやじゃありませんか、○○は」
というような言い方がありましたよね。歌にもなってたかな。「いやじゃありませんか」が、いやだ。少なくとも自分は使わないようにしようっと。
「平成ことば事情2160 〜することは可能ですか」「平成ことば事情1893見せてもらっていいですかあ」も、ちょっと関連があるかもしれません。お読みください。
2006/10/9


◆ことばの話2671「25度前後以上」

朝のニュースの下読みをしていたところ、天気予報の原稿にこう書いてありました。
「予想最高気温は、25度前後以上のところが多く」
最初は全然気にならないで、そのまま読んでいたのですが、3回目ぐらいにちょっと引っかかりました。これは本来、
25度以上のところが多く」
あるいは、
25度前後のところが多く」
のどちらかではないのか?それが混交した表現ではないか?と思ったのです。
そこでディレクターに、
「実際の予想最高気温は、近畿各地はどうなっているのか?」
を見せてくれるように頼みました。データを見てみると、予想最高気温は、
23度から26度」
の範囲でした。そうすると日本語表現として適当なのは、
25度前後のところが多く」
ですね。さっそくそのように変更して、本番ではそう読みました。
よかった。
2006/10/9
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