◆ことばの話2580「平米と立米」

ちょっと古いのですが・・・今年の2月28日に放送していた「ジオ彩都のぞみ丘」という物件(分譲マンションだったと思います)のコマーシャルで、
「平均95平米(ヘイベイ)」
と言っていました。「平方メートル」ではなく。ニュースではこの「平米(ヘイベイ)」は使わないのですが、一般的にはよく使われているのでしょうね。
一方、4月12日、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館、4月24日号:NO.19)に連載中の漫画『我が名は海師(うみし)』(原作・小森陽一:作画・武村勇治)の第76話「新たな重圧」という回で、沢村 武というサルベージ・マスター(沈没船などを引き上げる仕事)の、
「なんせ事故船には1800立米(リュウベイ)のLPGが積まってっからなあ〜」
というセリフがありました。この、
積まってっからなあ〜」の漢字は、
詰まってっからなあ〜」
だと思いますが。ま、いいかこれは。(もしかしたら、積荷としての表現は「積まってる」と専門用語で言うのかもしれませんが。)
それより、
「立米」
というのを使ってますね、「立方メートル」ではなく。
やはり現場の言葉としては、まだまだ「平米(ヘイベイ)」「立米(リューベイ)」は使われていると考えていいようです。
ついでながら、このマンガの主人公の難波麟太郎が、沢村について語った独白で、
「こんな独創的な計画をわずかな時間で思いつくなんて…こいつ…どれだけの場数ふんで…『450(ヨゴレ)』てきたんだ…!?」
というのがありますが、「キツイ仕事」「危険な仕事」のことを「450」と書いて「ヨゴレ」と呼ぶのも現場の言葉なのでしょうね。警察関係用語で、「ホームレス」や「浮浪者」のことを「ヨゴレ」と呼びますが、それと関連はあるのでしょうか?よくわかりませんが・・・。
2006/6/16


◆ことばの話2579「終売」

先日、小学3年の息子と家の近くの定食屋さんに入って、息子が「親子丼」を頼んだところ、
「すみません、親子丼は、もう売ってないんです・・・」
と言われました。この前来た時には食べたのに・・・と思ってメニューを見ると、「親子丼」の横の値段が記された上に紙が張られていて、そこには、
「終売」
と書かれていました。「売り切れ」「売切れ」「売切」ならばすぐに意味がわかり、違和感はないのですが、この「終売」という言葉は初めて目にした気がして、ちょっと違和感がありました。売る立場からの専門用語のように感じますね。読み方はおそらく、
「シューバイ」
でしょうが、意味は「売り切れ」でいいのでしょうか?いくつか辞書を引いてみましたが、この言葉は載っていません。Googleを検索してみたところ(6月16日)、
「終売」=12万1000件
でした。結構使われています。実際に使われている文脈としては、
「誠に勝手ながら下記の製品は終売とさせていただきました。」
「下記の商品につきまして、終売致します。ご愛顧いただきありがとうございました。」
「終売商品」
という感じで、どうやら「終売」は「売切れ」ではなく、その商品を製造販売することをやめた、つまり、
「(製造中止による)販売の中止、終了」
を意味するようです。
さりげなく、特に奇異に思わずに受け入れていますが、まず自分からは使わない言葉ですね。
2006/6/16


◆ことばの話2578「乳房再建」

5月13日の日経新聞に
「乳がんの乳房再建 患者の脂肪を活用」
「福岡の病院 臨床研究へ」
という見出しが。この「乳房再建」の、
「乳房」
は、「ちぶさ」と読むのでしょうか?それとも「にゅうぼう」と読むのでしょうか?医学用語としては、
「にゅうぼう」
と読むような気がするのですが、アナウンス部のI部長に聞くと、
「読売新聞記者の千葉敦子さんが書いたドキュメントは、たしか
『乳房(ちぶさ)再建』だったと思うけど。」

という答えが。そこで、知人の内科医O君にメールで聞いてみました。すると、
「はい、『にゅうぼう』です。今、乳腺外科(にゅうせんげか)が注目されています。案外(?)乳癌の方は多いです。」
という答えが返ってきました。やっぱりね!
女性にとっては、大変重要なことですし、乳がん撲滅のために、頑張りましょう!・・・って、言われとも・・と思うかもしれないけど、男にも何かできることがあるはずですよ。
2006/5/23


◆ことばの話2577「綺麗好”き」

先週、出張で岩手に行きました。いわて花巻空港で、盛岡行きリムジンバスに乗ろうと、切符売場カウンターに行ったところ、後ろにあった看板の文字に目が留まりました。
「綺麗好”き」
清掃会社の広告看板です。なぜか「好」の字の右肩に「”」と濁点が付いています。別に濁点をつけなくても
「きれいずき」
と濁って読むと思うのですが。岩手は訛って濁るのでしょうか?
そんな疑問を持ちつつJR盛岡駅前に着くと、その駅前のホテル「メトロポリタンホテル盛岡」のショッピングモール「フェザン」の名前のローマ字表記が、
「FESA”AN」
でした。これも濁点が付いているのです、それもアルファベットに!別に濁点をつけなくても、
「FEZAN」
「Z」にすればよいと思うのですが、それではすんなりと通り過ぎて印象に残りません。デザインとして「S゛」を「ザ」と読ませるから印象付けられるのです。
問題は、なぜ盛岡にこういった表現法が受け入れられ、使われるかです。やはり濁点が好きなんじゃないでしょうか?岩手の人は。
んねなあ・・・。
2006/6/1
(追記)

NHKのHさんから、
「神奈川県内にチェーン店を持つ居酒屋に、『海ぶね(かぶね)』という店があります。このローマ字表記が、
『KAF゛UNE』
となっています。」
という情報をいただきました。ありがとうございます。インターネットで調べてみると、
「茅ヶ崎 海ぶね −KAF'UNE−」
とありました。ネットでは、「濁点」ではなく「ダッシュ」、つまり「点々」と「点(?)二つ」ではなく、「点一つ」でしたが。今度神奈川に行ったときに、寄ってみたいと思います。
2006/6/7


◆ことばの話2576「空中戦」

5月16日夜のTBS「ニュース23」スポーツニュースで、こんなフレーズを耳にしました。
「六本のホームランが飛び交った空中戦を制しました。」
この「空中戦」ですが、普通はサッカーのヘディング戦とか、それこそ戦闘機のバトルなどが「空中戦」と称されるのでしょうが、ここでは、
「(野球の)ホームランの打ち合い」
「空中戦」と称しているようです。
Googleで検索してみると(5月24日)、
「空中戦」= 51万3000件
「空中戦、ホームラン」= 2万0200件
「空中戦、ヘディング」= 2万2900件
「空中戦、戦闘機」= 10万5000件
でした。
『日本国語大辞典』で「空中戦」を引いてみると、
「空中戦」=空中で行なう航空機同士の戦い。空戦。(用例・略)
としか載っていません。ここからの比喩で、スポーツではサッカーなどに使われるところまでは想像できますが、ホームランが飛び交ったら「空中戦」なのかと言うと、
「?」
と答えざるを得ません。誰が言い出したのか知りませんが。サッカーやバスケットボールなど、ジャンプした空中で選手と選手がぶつかり合う「肉弾戦」であれば「空中戦」も理解できますが、
「ホームラン合戦」「ホームランの応酬」
を「空中戦」と称するのは、私は納得行かないのです。
野球中継担当の尾山アナウンサーによると、
「2004年、巨人がホームランバッターをたくさん集めたチーム(打線)を作ったあたりから、よく使われるようになりましたね。私は使いませんが。」
とのことでした。
「空中戦、巨人、ホームラン」
で検索すると、1万0700件(6月1日)出てきました。どういった文章かと言うと、
「しかし、流石は巨人!空中戦で応酬してくる」
「巨人は空中戦で得点していく」
「アーチ連発の空中戦でした」
「巨人、空中戦で連敗ストップ」
「巨人、空中戦でトラをKO!」
「ホームラン四本の空中戦」
「第1戦に6本、第2戦に7本のホームランが飛び出す空中戦」
「ハマスタでの巨人との空中戦と言えば優勝イヤーの象徴的な試合、7/15の試合を思い出します」
「結局両軍併せて9本のホームランという“空中戦”でしたが」
「最近の巨人戦は、ホームラン、ホームランの空中戦ばかり」
とまあ、随分たくさんありますね。もうプロ野球ファンの間では定着しているのかもしれません・・・。今後も「空中戦」、注目していきます。
2006/6/1
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