◆ことばの話2546「お日様さん」
4月12日、車でNHKラジオ第一を聞いていたら、吉田拓郎の
『結婚しようよ』
がかかっていました。懐かしいなあ(1971年の曲)と思いながら聞いていると、曲は3番に入り、その歌詞の中に出てきたのが、
「お日様さん」
でした。
「♪雨があがって 雲の切れ間に お日さまさんが 見えたら ひざっこぞうを たたいてみるよ 結婚しようよ♪ンンンー」
あれ?なんだか違和感が。そうか、「お日様」で既に「様」がついているのに、それにさらに「さん」が付いているから、なんだかヘンなのか!
「道浦様さん」
と言うようなものだよね、言ってみれば。当時は全然気づかなかったなあ・・・。
似たような例を探してみましょう。
「神様さん」
これは、それほど違和感はないな。
「仏様さん」
これは違和感があるな。
「おひさまさん」
は「さん」の前が「おひさま」と4文字、「神様さん」も「さん」の前は「かみさま」で、やはり文字。これに対して「仏様さん」は「さん」のまえが「ほとけさま」で5文字、「道浦様さん」は「さん」の前が「みちうらさま」で6文字、ということは、「さん」の前が「4文字」が、一番落ち着くのではないでしょうかね。
要は、「お日様」と言ったときの「様」は敬称というより「名前の一部」と感じられるから、さらに「さん」を付けるのでしょうね。それほど「お日様」という言葉の組み合わせに一体感があるということでしょう。
「アグネスチャンちゃん」
とはちょっと意味が違いますが、違和感は同じです。
Google検索では(4月13日)、
「お日様さん」=613件
でしたが、中には「お日様さんさん」というようなものもあったので、この件数どおりではありません。表記を変えてみると、
「お日さまさん」=176件
でした。吉田拓郎さんは、確か広島出身・・・と思って調べてみると、なんと鹿児島生まれですが、9歳のときに広島に転居していました。関西人が何にでも「さん」を付けるのと同じ傾向が、拓郎さんの言語環境にもあったのでしょうか?
ちなみに驚いたのは、拓郎さんは今年の4月5日でなんと「60歳」になっていたということです。あらまあ・・・。 |
|
2006/4/13 |
(追記)
最近、1歳7か月の娘にせがまれて、よく童謡を歌わせられます。その中の1曲に、「時計のうた」(作詞:溝上日出夫)があります。その歌詞の中に、
「コチコチカッチン お時計さん」
というのがあるのですが、この、
「お時計さん」
というのは、なじみがない言葉ですよね。というより「時計」に「お」をつける例というのは、この歌ぐらいしか知りません。なんでまた「お○○さん」という形なんですかねえ。不思議な歌だ。
|
|
2006/9/6
(追記2)
「追記」で書いた「とけいのうた」では作詞は、「溝上日出夫」になっていますが、家にあった別の絵本では「筒井敬介」になっていました。おかしいな。
「とけいのうた・筒井敬介」 =524件
「とけいのうた・溝上日出夫」= 34件
でした。
音楽之友社のリストを見てみると、どうやら、「とけいのうた」というタイトルの曲が2つあるようで、どちらの曲もあるみたい。で、「コチコチカッチンおとけいさん」は、筒井さんの作詞のようです。
それで、この「おとけいさん」の仲間で、
「おねこさん」
というのを見つけました。『ふうせんねこ』という童話です。「平成ことば事情3176」をお読みください。
2008/3/24
|