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◆ことばの話2403「落語は席か題か」
12月9日の新聞用語懇談会放送分科会。助数詞について話し合っているんですが、その中で、「落語」の数え方をどうするか?という噺・・・いや、話が出ました。
東京の委員からは、
「『席』としか言わない」
ということだったのですが、関西の委員からは、
「演じるのは『席』だが、噺の演目は『題』で数えることもあるのではないか?」
という意見が根強く、物別れというか痛み分けに終わったような感じで、
「席(上方では演目は題も)」
というふうになったのですが、会議が終わって数日経って、共同通信の委員からこんなメールが届きました。
『12月11日(日)夜、NHKラジオ第一放送の「ラジオ名人寄席」を聴いていたところ、案内役の玉置 宏氏が「本席は落語2題でございます」という表現をしていました。確か、審議ではNHKの方も「題は使わない」とおっしゃっていたように思うのですが・・・。』
ということでした。そこで、私もインターネット上でどのくらい使われているかを調べて見ました。
GOOGLE(12月13日)では、「落語○題」、「落語○席」という丸の中に、漢数字と洋数字を入れて検索してみたところ、
「落語一題」= |
8件 |
「 二題」= |
3件 |
「 三題」= |
68件 |
「 四題」= |
6件 |
「 五題」= |
2件 |
「 六題」= |
1件 |
「 七題」= |
0件 |
「 八題」= |
0件 |
「 九題」= |
0件 |
「 十題」= |
0件 |
「落語1題」= |
3件 |
「 2題」= |
124件 |
「 3題」= |
26件 |
「 4題」= |
67件 |
「 5題」= |
34件 |
「 6題」= |
0件 |
「 7題」= |
4件 |
「 8題」= |
0件 |
「 9題」= |
0件 |
「 10題」= |
0件 |
「落語一席」= |
237件 |
「 二席」= |
4件 |
「 三席」= |
89件 |
「 四席」= |
16件 |
「 五席」= |
18件 |
「 六席」= |
2件 |
「 七席」= |
2件 |
「 八席」= |
3件 |
「 九席」= |
1件 |
「 十席」= |
10件 |
「落語1席」= |
64件 |
「 2席」= |
153件 |
「 3席」= |
73件 |
「 4席」= |
45件 |
「 5席」= |
26件 |
「 6席」= |
14件 |
「 7席」= |
10件 |
「 8席」= |
10件 |
「 9席」= |
1件 |
「 10席」= |
22件 |
ネット上では、「題」も「席」も両方使われているように思えるのですが、どうでしょうか。 |
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2005/12/13 |
(追記)
2006年1月8日(日)、私も玉置 宏さんが司会をしているNHKのラジオ、聞きました、車の中で。「ラジオ名人寄席」という番組で、玉置さんは、
「落語二席、お聞きいただきます。」
と言っていました。そしてそのあと、
「一席目、代わり目。…おかみさん二題。二席目、厩火事でございます。」
五代目・志ん生が1961年9月1日に、新宿の末広亭で演ったものでした。
「席」も「題」も使うのですねえ。 |
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2006/1/11 |
(追記2)
NHKの原田さんからメールをいただきました。
『道浦さんの「追記」を見て、はたと気づき、私なりの結論に達しました。
「落語を数える場合(合計)は『席』を使う。このうち、同じジャンル(『○○噺』など)をまとめて言う場合は『題』も使う」
という結論です。
落語の世界には「三題噺」という、その場で即席でつくるものがありますが、
この「題」とは「題材」「テーマ」「キーワード」などを意味しています。
1/8の玉置さんは、「席」と「題」を、その内容から区別して使ったのではないかと思います。寄席全体では「落語2席」、中身は「おかみさん(噺)2題」という考え方です。
落語には「人情噺」「廓噺」「艶噺」「怪談噺」など、ジャンル別に「○○噺」がありますが、これらについては東京でも「題」を使うと思います。ですから、
「きょうは落語を5席、このうち人情噺は3題」
というような使い方が本来なのではないでしょうか。
また1回の寄席全体であっても、仮に三遊亭圓朝の作品だけを演ずるなら、「席」ではなく、「圓朝○題」のほうがふさわしいかもしれません。(なお「上方噺」の「噺」は内容ではないので、「○題」は無理だと思います。また「小咄」の数え方は「○つ」でしょう)
12/11のは、番組で「題」という言い方が出たということであって、玉置さんが「落語○題」と言ったかどうかは不確かなのではないでしょうか。
つまり、「席」と「題」が東西で対立したり、並立したりするのではなく、大きく「席」があって、その中の分け方で「題」も使うということではないでしょうか。
ですから、原則的には「落語は『席』」を優先したほうがいいと考えます。』
なるほど、玉置さんの「席」と「題」から分析すると、そういうことかもしれませんね。原田さん、ありがとうございました。 |
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2006/1/15 |
(追記3)
2月7日午前2時過ぎのNHKラジオ「ラジオ深夜便」で、女性アナウンサーが、
「春風亭柳昇さんで『○○○○』と、五代目古今亭今輔さんで『ねぎまの殿様』、落語2題、お楽しみいただきました。」
と言っていました。柳昇さんの演目は聞いたけど忘れてしまいましたが、「おかみさん2題」のように同じ傾向のネタではなく、別のネタでした。そうすると、原田さんが「追記2」で提案されたような形ではないということになりますが・・・。
そもそも、「席」というからには、パフォーマンスをしていなければ「席」とは呼べないのではないでしょうか?落語の台本と言うかネタそのものの数え方と、口演した落語では数え方が違うということなのでしょうかね。
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2006/2/14 |
(追記4)
1月31日の深夜24時過ぎ(だから実質2月1日の午前0時過ぎ)のNHK大阪で放送していた落語番組、冒頭を少し見ました。案内役は演芸研究家の小佐田定雄さんで、
「それでは2席続けてどうぞ。」
と言っていました。最初に出てきたのは、林家小染さんで演目は『試し酒』。「酒は命を削るかんな」と言っていましたが、その「かんな」は「頭高アクセント」で、
「かんな(HLL)」
でした。私も関西弁だとそう言ってしまいがちですが、これだと花の「カンナ」みたいです。標準語のアクセントでは大工さんの道具は、
「かんな(LHH)」
です。もちろん、上方落語では標準語アクセントで話す必要はありませんし、もし標準語だと、「上方」落語になりませんね。「2席目」は、笑福亭仁智さんの『老女A』。中森明菜さんの『少女A』を思い浮かべますね。これは聞きたかったのに、放送時間が遅いため・・・眠ってしまいました。残念。
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2007/2/2 |
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