◆ことばの話1980「浜ちゃんと濱ちゃん」
映画『シュレック』の日本語吹き替え版で、主人公の緑色の怪物の声を担当したダウンタウンの浜ちゃんこと浜田雅功(はまだ・まさとし)さん。タレントとして活動する時は、
「浜田雅功」
ですが、声優の時は、
「濱田雅功」
と旧字体の「濱」を使うのだそうです。知らなかったなあ。朝の番組で『シュレック』の放送を宣伝するためにスーパーを「浜田」で出したディレクターが、
「声優の時は『濱田』だろ。そういう細かいところにも気を配らなくちゃ、ダメだよ。」
と反省会で注意を受けていました。いや、そやけど、それはボクがディレクターやってても、たぶん同じ間違いをするなあ・・・。
「濱田雅功」=595件
「浜田雅功」=7万4700件 と、圧倒的に「浜田雅功」の方が多いのですが、それでも声優の「濱田雅功」も500件以上ありますね。『シュレック』『シュレック2』のほかに「ポケモン」の「ヤドキング」というキャラクターの声も「濱田」が担当しているようです。 旧字体と新字体、こういう具合に使い分けている人もいるわけですね。
2004/11/24
◆ことばの話1979「国道○号線」
10月下旬、NNN西日本ブロックの研修会が広島で開かれました。受講者である各局の若手〜中堅アナのビデオを見て、講師はコメントするのですが、その中で四国のある局のアナウンサーが台風中継の中で、
「国道○号では」
と言っているのを見て、私は、
「NNN系列では、『国道○号線』と『線』をつけて読むことになっていますよ。
とコメントしたところ、あとで、高知放送と日本海テレビから、
「うちの局では『線をつけない』で読むことになっているのですが・・・」
という問い合わせをもらいました。 以前から全国ネットのニュースを見ていて「系列の中でも統一されていないなあ」と感じていたので、これを機会に調べてみようと、系列を超えて、各局の現状について知り合いのアナウンサーを中心にメールを出して調べてみました。ボチボチ返ってきたメールによりますと・・・(「線」を付ける局は○、つけないところは●、判らないところは△をつけました)。
<日本テレビ系列>
○(読売テレビ)
「線」をつける。
○(日本テレビ・T氏)
「線」を入れて読んでいたと思うが・・・。 「国道20号の踏み切りで・・・」というより、「国道20号線の踏み切りで・・・」と言った方が言い易いと思うのだが。しかし報道が勝手にマニュアルを作って「線」を付けないと決めているかもしれないので、要注意。
●(日本海テレビ・T氏)
弊社では「国道○号」と言うようにしており、国土交通省でも「国道○号」としている。 昔は系列どおり「○号線」と言っていたが、建設省が○号と改めてから、○号に変えた。 今のところ、うちの会社ではローカルルールで「国道○号」と言っているようだ。 ところで国道を英語で表すと 「ROUTE 9」→国道9号 県道では 「LINE 181」 県道181号線 で、英語表記にすると同じ「道」でも違う意味合いが含まれているようだ。弊社は、県道には「線」をつけている。
●(札幌テレビ・A氏)
STVでは、ニュース報道の時は「線」はつけないという申し合わせ事項がある。ただし、不注意な若手などがたまに「〜号線」と言ってしまう場合がある。問題なのはバラエティー関係の番組の際。たとえばコーナー企画のタイトルで、「国道12号線の旅」だとシックリ行くが、「国道12号の旅」だと、何となく硬いイメージがあるかも・・・。行政側の呼称と、世の中の呼称が違っている場合は、困る。
●(青森放送・M氏)
私が現役時代国道に「線」はつけませんでしたし、後輩にもそのように指導しました。県道・市道はつけました。
●(ABS秋田放送・T氏)
「国道7号」あるいは「7号線」いずれかの呼び方で統一している。国土交通省に聞いたところ、「国道○号線」というのは言わずに、正確には「国道○号」とだけ言うと聞いたので、それ以来は統一させた。「○○線」というと通称のニュアンスが入っているような雰囲気もある気がする。よく事故が起こる道路では「通称・○○線」と言って分かり易くさせることも多々ある。県道の場合は「県道22号」と言わず同じように分かり易く「岩見船岡線」などという言葉を使うことが秋田放送では多い。 先日、農道を県道に昇格させる要望書が市町村長から県に出されたという取材をした。県道はもちろん、農道にもきっちり名前が入っているというのには驚かされた。さらに、国道・県道・市町村道のバランスなどもあり複雑だということも聞き、道路をひとつとっても行政の手続きは大変だなと実感した。
○(福井放送・M氏)
ニュースで出てくる「国道」は、「○○号線」と読む。これまでにも各社でまちまちだったので、確かに個人的にちょっぴり気になっていた。
●(熊本県民テレビ・M氏)
熊本でも「線」は付けません。ちなみに「JR鹿児島本線」の「本」も付けません。
○(鹿児島読売テレビ・N氏)
KYT鹿児島讀賣テレビでは、「線」をつけて読んでいます。特段,何も深く考えず、なんとなく世間様の呼び方にあわせています。
<テレビ朝日系列>
●(テレビ朝日・S氏)
国道の件、基本は表記・読み、ともに「線」をつけないと決めていたと思う。少なくとも私は社会部時代に、国道に「線」をつけた原稿やスーパーは、1行たりとも書いてない。
●(テレビ朝日・M氏)
ANN系列では「国道123号」というように「線」をつけずに読むことを約束事にしている。理由はわからないが私が入社したときには決まってい。とはいえ、報道の記者全体、ましてワイドショーのスタッフにまで浸透しているわけではなく「123号線」などという原稿やナレーションが存在してしまうのも事実。
●(朝日放送・A氏)
「国道○号(線)」については以前より「線」はつけない。
○(朝日放送・M氏)
国道は、一般に倣い「線」をつけるようにしている。
<フジテレビ系列>
○(フジテレビ・T氏)
「線」の件。FNN系列では読む時は「セン」を付けることに統一している。 ○(フジテレビ・S氏) フジテレビ系列では「国道○○号線」と「線」をつけて読むことで統一している。但し、スーパー表記に関しては「線」の省略も可としている。国土交通省では「国道○○号」で「線」はつけないとのことだが(平成8年建設省当事に確認)、「線」を付けた方が納まりがいいし聞きやすいという意見が多かったようだ。
○(関西テレビ・T氏)
FNNでは「線」をつけて読むことを統一事項としている。
<TBS系列>
○(MBS毎日放送・M氏)
国道は「線」をつけるようにしているが、現場に徹底しているかどうかわからない。
△(MBS毎日放送・K氏)
これまで私は、あまり考えずに読んでいた。弊社では特に決めていないようだ。 ただ、西アナウンサーによると、たまたま国交省の役人の方にインタビューした時に そんな話題になり、国交省によると昔は「号線」と言っていたそうだが、今は「線」をつけて呼ばないのだそうだ。昭和30年代に、法律でそう決められたそうである。ただ、ニュースで使うかどうかというのは、また別の判断があるかもしれない。とりあえず、役所ではそうしているそうだ。
○(SBS静岡放送・I氏)
SBSでは「国道1号線」のように「線」を付けて表記している。理由は行政発表が「線」を付けているためで、そんなに深い理由はない。 また、交通情報では道路は「上り線、下り線」、鉄道は「上り、下り」と言おうと決めている。道路が通れるか、電車が動くかが交通情報のポイント。道路は「線」を付けて良いが、電車は「線」はいらない。JRの発表には上り線とあるが、これは誤りと言えるだろう。
○(SBS静岡放送・K氏)
「線」を付けてわかりやすくする方に賛成。 役人の意向と言えば、静岡と清水を結ぶバイパスが完成する前、バイパス名は「静清バイパス」とし、読み方は「セイセイバイパス」としようということで、当時の在静民放・NHK・国道工事事務所で口頭の申し合わせをした。というのも、ある時期、静岡と清水を結ぶ国道一号線を「静清(セイシン)国道」と言ったことがあり、「清」を「シン」と読むのは本来日本語にはないので、やめようという意図があったのだ。ところが何年か経ってバイパスが完成した時には「セイシン」が国道工事事務所の見解になっていた。理由は、はっきりしない。というより、一時言われていた「静清(セイシン)国道」のことを聞き、「それならにこちらも・・・」と決めたにすぎないだろう。SBS静岡放送は「セイセイバイパス」を貫いていたが、道路案内板にローマ字で「SEISHIN」と書かれ、国道工事事務所からも申し入れがあったことから、ついに折れて「セイシンバイパス」と読むことにした。でも今でも納得していない。
<テレビ東京系列>
○(テレビ大阪・C氏)
「国道の呼称は「国道○号」の原稿が出てきても概ね「セン」を付けて読んでいる。アナウンサーから「センつけますよ」という場合がほとんどで、デスクに厳密なこだわりがないので、特に問題はおきていない。
<NHK>
○(NHK放送文化研究所・S氏)
「線」を付ける。『ことばのハンドブック』に、「国道○○号」か「国道○○号線」かについて以下のような問答が掲載されている。 <質問>交通情報センターからの交通情報では「国道○○号」、NHKは「国道○○号線」である。不統一であるが。 <答>放送では従来どおり「国道○○号線」とする。交通情報でも「国道○○号線」とするように申し入れる。 <参考> 建設省では「国道○○号」であるが、放送では「国道○○号線」とした方が聞き取りやすい。また新聞協会でも、原則として「国道○○号線」に統一している。 掲載誌 : 『放送研究と調査』S49.02 とありそのようにしている。
○(NHK・H氏)
「線」は付ける。理由はおそらく耳で聞いて間違うことがないように。 たとえば「国道20号」と、「線」を付けずに言った場合「国道25」と聞き間違えるおそれがあるからではないか。
<共同通信>
○(N氏)
国道の表記については、「放送用原稿」では「国道○○号線」と「線」を付けるのを原則にしている。(「放送ニュースの手引」41ページ)しかし、「新聞用の原稿」については「国道○○号」を原則にしていて、「線」は付けていない。どうして差がでたのかは不明。(私見だが、多分、放送では「線」を付けた方が、道路としてイメージが湧きやすく分かりやすいからではないか。)
○(FM三重・T氏)
うちでは「線」をつける。「本当は、つけない」ということはわかっているが、つける。日本道路交通情報センターの津市駐在の職員もつける。以前、コマーシャルで「ルート23号」という言い方を指示されたが、これは気持ち悪かった。
●(和歌山放送・H氏)
和歌山放送では以前から国道は「線」をつけないで使用している。特に明確な理由はわからないのだが、・・・。
ということで、すべてがそれぞれの局の「統一見解」とは限らず、それぞれの回答者の個人的見解も含んでいますが、こういった回答でした。
これを見ると、各系列の中でも必ずしも統一されているわけではなさそうです。 放送で「線」を付けるのは、やはり「耳で聞いて判りやすい、間違いにくい」という理由のように思います。一方「線を付けない」という局は、国土交通省などのお役所の決定を元に、「正式名称」を大切にしているということのようです。新聞を注意して読むと、たしかに「線」は付いていないようです。 「線」を「付けた」からと文句を言う人も余りいないだろうし、「付いてない」からと言って苦情が出るものでもないとは思いますが、統一されてないと、なんとなく気持ちの悪いものではありますね。 ご協力いただいた各局の皆さん、どうもありがとうございました。この場を借りて、お礼申し上げます。また、よろしく!
2004/11/22
(追記)
2005年5月8日のフジテレビのお昼のニュース、長崎県であった交通事故のニュースで、地元の長崎の局(テレビ長崎だと思いますが)はしっかりと、
「事故があったのは国道251号線で」
と「線」をつけていました。系列でしっかり「線」を付けることになっているようですね。
2005/5/9
◆ことばの話1978「天然ダム」
新潟県中越地震による土砂崩れで、山古志村などの芋川流域にできた「天然ダム」について、国土交通省は11月12日、北陸地方整備局内に、「河道閉塞現地対策室」を設置しました。対策室の名前に「天然ダム」を使わなかったことについては、
「天然という言葉には美しいイメージがあり、災害時にはふさわしくない」
とのことで、
「山古志村の村長も『天然ダム』という表現を避けているし、新聞の投書欄にも指摘があったことに配慮した」
そうです。(読売新聞、11月12日夕刊)当初は、「地滑りによって川がせき止められら湛水(たんすい)域対策室」という長い名称も検討されたそうですが、学術用語の「河道閉塞」を選んだということです。
GOOGLE検索(11月14日)では
「天然ダム」=11万件
「河道閉塞」=830件
「天然ダム、新潟県中越地震」=2万2200件
でした。
実はこの決定が出るより前に、NHKの原田さんから、「天然ダム」についてメールをもらっていました。それによると、
「災害報道でさかんに『天然ダム』が使われているが、『天然ダム』はもともとは、森林などの保水能力の例えだったはず。NHKではなるべく使わないようにしている。」
とのことでした。つまり「天然ダム」の意味が違うという観点から使わないというご意見でした。
また読売新聞は11月13日の朝刊で、
「新潟県中越地震でできた『天然ダム』の呼称を、本紙は今後『土砂崩れダム』に改めます」
という「おことわり」を出しました。
2004/11/14
◆ことばの話1977「
『よ』と『よる』 」
『日本語学』という雑誌の2004年10月号の「ことばの森19」というコラムに、東京大学名誉教授の久保田淳さんが、
『「夜(よ)」と「世(よ)」「節(よ)」、「夜(よる)」と「寄(よ)る」「縒(よ)る」』
という長いタイトルの見開き2ページの文章を書いていました。この中で注目したのは、冒頭部分です。
そこには、
「夜という字は、『よ』と読むときには造語力があるが、『よる』と読むときには造語力がない」
というようなことが書かれていたのです。つまり、
「夜なべ」「夜通し」「夜長」「夜店」「夜回り」「夜目」「夜寒」「夜這い」「夜話(「やわ」とも)」「夜番」「夜更け」
などといった言葉で使われる「夜」という字の読みは、「よ」であって、決して「よる」ではない、ということなのです。
少し納得するとともに思い出されたのは、最近広がりつつある、
「夜ごはん」
という言葉です。これは、「よるごはん」と読みます。けっして「よごはん」ではございません。また、朝日新聞で作家の五木寛之さんが連載しているコラム(本も出ているようです)のタイトルも、
「みみずくの夜(よる)メール」
と「よ」ではなく「よる」です。
ということは、久保田先生がおっしゃるようなこれまでの「夜」という言葉に関するルールが、今は崩れつつあるのかな、とも思ったわけですね。
言葉のルール自体も、長い年月の中で自然に醸成されてきたのでしょうから、当然新しい動きは常に起きているということでしょうかね。
2004/11/22
◆ことばの話1976「お楽しみに!」
報道フロアを歩いていたら、壁に貼ってあった一枚の紙に目が留まりました。そこには、
その日お勧め番組の予告スーパーの文面が記されていました。それを見て「え!」と驚きました。
「今夜10時『スーパーテレビ』潜入!生死の交差点 富士青木ケ原樹海」お楽しみに!」
生死の交差点で自殺者が集まるという樹海を取り上げた番組を、
「お楽しみに」
と言うのは、いかがなものなのでしょうか?その紙の上の方を見ると、
「今夜9時の『火曜サスペンス』監察医・室生亜季子『墜転落死』お楽しみに!」
「墜転落死」を「お楽しみに」・・・・いくらドラマとは言え、どないなもんでしょうか。
とりあえず編成部に、「ちょっと、いくらなんでも・・・」と意見しておきましたが、これを書いた人間の頭の中にはきっと、常套句として、形式として、お勧め番組の後には必ず、
「お楽しみに!」
と付けるものだということが、疑いもなく刷り込まれていたのでしょうね。この「お楽しみに」の意味するところを別の言葉で置き換えると、
「是非、ご覧ください」
なのでしょう。それならばその言葉を使えばいいじゃないかと思うわけです。
実は「スーパーテレビ」のその樹海の放送はすでに終わっており、私も見ましたが、内容は大変シリアスなものでした。とても「お楽しみに」という言葉が似合う内容ではありませんでした。常套句一つの使い方で、本気でその番組のことや視聴者のことを考えているのか、それとも思考停止に陥っているのかがわかります。
気をつけようと思います。
2004/11/15
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