◆ことばの話1780「36億色」
アテネ・オリンピックまで、あと2か月あまり。ボーナス・シーズンを前に、今、家電業界は、大型・薄型テレビ商戦に熱が入っているということです。そういった話題を「ニューススクランブル」でSディレクターが取り上げ、私がナレーションを担当しました。その中で、某M社の大型のプラズマテレビの最大の特長は、
「世界最高、36億2000万色」
の色が表現できるということでした。
そ、それはスゴイ!
でもここで疑問が。それは、
「可視光線の色は連続したスペクトラムだから、その中から『○○色』と言うためには、その色に名前を付けて他の色と区別することが必要なはず。果たして36億2000万もの色の名前があるのだろうか?」
という疑問です。もしかしたら個別の色の名前はつけずに、36億色を大きく12色ぐらいに分けて、たとえば「赤の1番」から「赤の3億番」までナンバーリングしているとか。それとも「理論上は36億色出ているはず」ということで「じゃあ36億色、全部言ってください」と言っても「それはできない」ということなのか。いずれにしてもちゃんとした「色の名前」はないような気がします。
どうなんでしょうか?
その後、同じプラズマテレビの中吊り広告を電車の中で見かけました。そこには、今度はなんと、
「暗いところでは85億8000万色」
と書いてあるではないですか!一気に36億から85億!人口急増が問題になった頃の中国の人口だって、こんなに急には増えません。これは何を根拠にこういう数字を出しているのか。そこで、パンフレットに書いてあるフリーダイアルに電話して聞いてみたところ、電話に出た男性がこんな回答を。
「テレビは、RGBの階調がそれぞれ1536ですので、36億2000万色ということなんですが。」
「RGB(アール・ジー・ビー)ってなんですか?」
と質問したとたんに思い出しました、光の3原色は「赤・緑・青」でした。だからこの「RGB」というのは、
「Red(赤),Green(緑),Blue(青)」
のことだと。聞いてみると、そのとおりでした。
「て、ことは赤は『明るい赤』から『暗い赤』まで、グラデーションのようにちょっとずつ色の感じ(=色調)が違う色が1536通りあって、その掛け合わせで、1536の3乗、1536×1536×1536が36億2000万色ということですか?」
「おっしゃるとおりでございます。」
実際に計算してみると、「1536の3乗」は正確には、
「36億2387万8656」
でした。でも根本的な疑問は残ります。つまり、
「その1536色あるという赤の色の、それぞれの色の違いは、どのように決まるのですか?それと、中吊り広告では、暗いところでは85億8000万色と倍以上に増えていたのですが、これはどういうことでしょうか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
結構長い沈黙がありました。
「光の色は、グラデーションで可視光線の色はすべて見えているけれども、それを何色あるか分けるのは、こちらで名前をつけて区別するからで、その分け方によって、虹のように7色にしか分けられないこともあるし、そちらでおっしゃるように36億色と言うこともできるわけですよね。その区別の基準について聞きたいのですけど。」
と畳み掛けると、
「えー、少し技術の者と相談してお答えしてもよろしいでしょうか。」
というので、こちらも素朴に知りたいと思っているだけなので、こちらの名前と電話番号、この疑問についてホームページで書きたい旨を伝えたところ、しばらくして電話がかかってきました。
「プラズマテレビはデジタルですので、その分解能で言うと11ビット、理論的には1536色ということなんです。」
ビットが、ちょびっと、ようわからん。
「理論的には1536色ということは、たとえばその1536色に1番から1536番まで番号をつけた場合に、1番の赤と2番の赤の区別は、人間の目では不可能ということですか?」
「左様でございます。」
あくまでも対応は丁寧です。
「じゃあ、その『色の差』はどういうふうに決まっているんですか?」
「プラズマテレビはデジタルですので、明るさは11ビットの分解能の違いがあるのですが、デジタルに変換する時に、微小な光の点滅の回数によって、明るさに違いが出てくるのです。それによって色の違いと言いますか、同じ赤でも明るさの違いが出てくるのです。」
「じゃあ、その『点滅の度合い』が『明るさの違い』になって、その『明るさの違い』によって、色が区別されているのですね。」
「左様でございます。」
今度はなんとなく、わかった気がしました。
「では、暗いところでは85億色になるというのは、なぜなんでしょうか?」
「それは、人間の眼の感度の違いにもよるのですが、暗いところの方が陰影が表せるといいますか、明るいところだとその差が出にくいので、理論上は11ビットということになっているのですが、そこまでは見ることができないのですが、暗いところでは理論どおり、2048色になりますので、2048の3乗で85億8000万色ということになります。」
「2048の3乗」を計算してみると、正確には、
「85億8993万4592」
でした。まあ、端数はあんまり関係ないもんね、ここまで来れば。
この「2048」というので気づきました。これは1024の2倍。ということは、これは2の何乗かの数字ではないか?と思って計算してみると、「2048」は、「2の11乗」でした。つまりこれが「11ビット」と言うことかな。ちょびっと、判ったぞ。もう、ええっちゅに。
「つまり、36億色すべての色に名前が付いて、区別できているわけではないのですね。」
「ハイ、そのとおりでございます。」
ほぼ、考えていたとこり、聞くことは聞いたので、丁重に礼を言って電話を切りました。
「36億色」も「85億色」も、理論上の数値であって、その1色1色の積み重ね、足し算で出て来たものではないと。
根拠はわかりました。
ここからは理系の話・デジタルの話ではなく、文系の話です。
「大きな数字、細かい数字は信用するな。」
誤解のないように言っておきますが、このM社のテレビがそうだと言うのではありません。しかし、よくわけのわからない数字を全面に押し出しているものに対しては疑ってかかることが必要です。もし、この36億2000万色というテレビと、37億色のテレビがあってどっちがキレイでしょうか?と聞かれたら、理論上は「37億色」ということになりますが、それは「数字が大きい」ということ以上の意味は持たないのではないでしょうか。つまり、一般の生活の中の感覚で答えるなら、
「どちらも同じぐらいきれい」
ということで引き分けになると思います。最近のデジタルカメラの「画素」の数にしたって、ある程度まではその数字が持つ意味がありますが、それ以上は、本当に使う側にとって意味のある数字なのかどうか。
そのあたりを考える必要があると思います。
2004/6/18
◆ことばの話1779「ウォシュレットの言い換え」
Wアナウンサーから質問です。
「ウォシュレットって特定商品名ですよね。言い換えはどう言えばいいんでしょうか?」
ああ、たしかに「ウォシュレット」はTOTOの特定商品名ですね。なんて言えばいいのかな?ちなみに、INAXの同様の商品の商品名は、「シャワートイレ」だそうです。
日本テレビの『日テレ放送用語ガイド』(2003,12)を引いてみると、「ウォシュレット」の言い換えは、
「温水洗浄便座」
と書いてありました。でも、「温水」じゃないこともあるので(というか、温水にしたり冷水?にしたりという温度調節はこちらでできるので)、「温水」ははずして、単に、
「洗浄便座」
でもいいかもしれません。でもそれだと「温かみ」が消えて、直接的なイメージがありますね。厳密に言えば、
「"何を"洗浄することができる便座なのか」
も書くべきなのでしょうが、さすがに実もフタもないので・・・いえ、「身」もフタもないので、それは「暗黙の了解」ということでしょう。
この商品が出てきた時の、戸川純さんがやっていたコマーシャル、
「オシリだって洗って欲しい」
は衝撃的でしたねえ。でもそれは、
「世の中にそう言うものもあるんだなー」
と思っただけでした。実際に初めてこの手のものを使ったのは、今から10年前、取材先の会社のトイレでした。腰を下ろすとその便座にはなんと、ボタンがいっぱいついているではありませんか!ヘンなボタンを押したら、大変なことになりそうな気がして、ドキドキしながら、エイヤッとばかりにボタンを押すと、
「ウィーン」
というなにやら不気味な音がして、"何かが"下の方で動いています。自分では見ることができない状態で、得体の知れないものが、無防備な下半身の下で音を出して動いているというのは、かなり気持ちの悪いものです。その音が止まり一瞬の静寂のあと、
「シュッ」
という音とともに温水が勢いいよく噴き出し、かの部分に当たります。
ああ。
気持ちええやないの。
「洗って欲しい」というキャッチコピーは本当であったと実感したそれ以来、引っ越した先の自宅にもこの「温水洗浄便座」を取り付けて、ほぼ10年、愛用しています。
もう、全然怖くありません。え?最初はコワかったのかって?そりゃ、怖かったですよ。どこから水が出てくるかも判らないし、もし出先でズボンなんか、びしょ濡れにしてしまったら、カッコ悪いじゃないですか!アナウンス部アルバイトのIさんも、同じ恐怖感をつい先日まで持っていて、と言ってましたよ。
10年前は、濡れたオシリを温風で乾かしてくれる機能も付いていましたが、あまり需要がなかったと見えて(乾かすのに時間がかかるのと、風に乗って臭いも吹き上がってきた、ということもあったと思います。脱臭機能の付いたものもありましたが、あまり効果がなかったのでしょうか。)、最近はそういったタイプはあまり見かけなくなりました。
この「温水洗浄便座」というものは、欧米にはないそうです。外国人が日本にやってきてこれを見ると、目を丸くすると聞きます。こんなことを考えるのは日本人だけなんですかね。日本はロボットの開発も世界で先進的だと聞きますが、この「温水洗浄便座」というものの発想と技術開発力は、日本人ならでは、という気もします。「シャワートイレ」も判りやすい名前ですが、「洗う」という意味の英語「ウォッシュ」に「トイレット」の後半をくっつけた造語「ウォシュレット」というネーミングもなかなかのものだな、と思うわけです。
2004/6/18
(追記)
灯台下暗し、といいますか、我が家のトイレは「シャワートイレ」でした・・・。
2004/7/27
◆ことばの話1778「北米と北アメリカ」
NHKの原田邦博さんからメールが来ました。
「『メキシコは北米か?』
ふだん何気なく『北アメリカ』『南アメリカ』と使っていますが、では『メキシコは?』と聞かれると、一瞬わからなくなります。地理学でいえば『北』と『南』しかありませんから『北アメリカ』なのでしょうが、文化的に考えると『中米』『中南米』となるのでしょう。ただ国連の分類ではいわゆる『北米』『中米』『カリブ諸国』が北アメリカで、トリニダード・トバゴですら『北』扱いです。実は日本の地理の教科書や地図も、これに準じています。放送で『北アメリカ』と言った場合は、はたしてどちらでしょうか。あるいは『北アメリカ』と『北米』は違う概念なのでしょうか。」
うーむ、いつも難しいテーマを・・・。
これに対して、こんな返事を送りました。
原田様
「北米・中米・南米」という分け方があって,これは歴史的・人のつながりとしての分類法でしょう。
「北アメリカ」「南アメリカ」は,地理的な分類ではないでしょうか?
と、ここまで書いて、原田さんとまったく同じ考えである、ということ、読み返して思いました。
メキシコは地理的には「中米」ですけど、ワールドカップの予選では、メキシコは「北中米カリブ海」予選という枠に組み込まれていますね。
文化的に、ということと、あと経済的に「北と南」があるように思います。
北米自由貿易協定(NAFTA)の参加国はカナダ・アメリカ・メキシコです。
北半球に属するのは北米、南半球に所属するのは南米という地理的区分(経済地理的区分)もあるのではないでしょうか。地理的でありながら経済的でもあるのですが。つまり、
北米+中米=北アメリカ
南米=南アメリカ
で、「北米」と「北アメリカ」は必ずしもぴったり100%同じ概念ではないようですね。
言語的には「スペイン語・ポルトガル語(非英語)対英語」が、すなわち「中南米対北米」となり、これが文化的な背景にもつながるでしょう。(=言語文化的区分)
コルテスがやってきたか コロンブスがやってきたか、という500年前にさかのぼって考える必要があるのではないでしょうか。
放送で「北アメリカ」と言うときは、
(1)北米のみ
(2)北中米
のどちらか、ということですね。文脈で判断するということでしょうか?
これまでのものをまとめると
(1)地理的(北・南)
(2)文化的(北・中・南)
(3)経済的(北中・南)
(4)言語的(北・中南)
の地域区分があって、そのどの区分化によって同じ「北アメリカ」でも意味合いがかわってくるのですねえ。いやあ、勉強になりました。
これって、アジアやヨーロッパでも当てはまりますよね。きっと、分類の「はざま」の国があるんでしょうね。
なお、大阪には「ミナミ」に「アメリカ村」があります。南米とも北米とも言いませんが「ナンバ」もあります。ついでに同じくミナミの道頓堀と難波駅には「ホクオーというパン屋さんもあります。
ではまた。。。
単純に地理的な区分と思っても、実はそこに歴史的・文化的・経済的な要因が入り込んで、その基準によって区分が変わってしまうこともあるという一例でした。うーん、なかなか難しいですねえ・・・。
2004/6/15
◆ことばの話1777「当たっている」
ポルトガルで開かれているサッカーのヨーロッパ選手権「ユーロ2004」、いやあ盛り上がっていますねえ!え?そんなに盛り上がっていない?・・・私は盛り上がっています。昨日(6月14日)も夜中の3時まで見てしまいました。おかげで、寝不足です。
その、昨日見た「イタリア対デンマーク」の試合。デンマークのゴールキーパーのソーレンセン選手とイタリアのゴールキーパー・ブッフォン選手が、ファインセーブを繰り返し、鉄壁の守りを見せました。それを評してTBSのアナウンサーが、
「今日は、両チームのゴールキーパーが当たっています。」
というふうに3回も、
「当たっています」
と言っていたのですが。「野球のバッター」ならともかく、「サッカーのゴールキーパー」に「当たっている」という表現は、何か違和感があります。思い起こせば、サッカーでは時々耳にするような気もします。専門用語ですね。
Googleで「当たってる、ゴールキーパー」で検索すると、150件ありましたが、その中には、全然違う使われ方をしているものも結構あって、実際「ゴールキーパーの調子が良い」と言う意味の「当たっている」はそのうちの10分の1ぐらい、つまり10数件しかないような感じでした。いくつかピックアップすると、
*「当たっている時のゴールキーパー中河の気合いの入りようをいう。」
*「でも林は、この大会当たっているし、シーズン中に正ゴールキーパーはどのチームも出しづらいだろうなぁ。」
*「あたり(サッカー用語・スラング)
(1)フィジカルコンタクト。
(2)調子がよく、好プレーを連発すること⇔はずれ
『あのキーパー、当たっているな』」
この意味の「当たっている」ですね。「好調で好プレーを連発すること」がゴールキーパーの「当たっている」のようです。もう少し見てみましょう。
*「ブッフォンやカーンのような機動系キーパーは上のようなドリブルでかわそうとすると、勝手にダイブしてきて一発退場なんて事も多々あります(少なくともイエローは出ます)。対人戦でもよく起きるので、相手のキーパーが当たっているときなどは使ってみるといいかもしれません。そうすると、相手もキーパーの飛び出しを押さえてくるので、ループシュートやスルーパスが狙いやすくなります。」
*「でもこのゲームはついている。楢崎が単に当たっている。スーパーセーヴの連続。モニター脇の時計表示が後半44分にならないうちにホイッスル。これもついている。」
と、ここまではゴールキーパーについて「当たっている」を使った例ですが、攻撃のフォワードの選手に使った例も見つかりました。
*「なぜ当たっている久保をジャーンでなく藤山がマークするんだろう。」
これだと、野球のバッターと同じ使い方ですねえ。ちなみに「当たっている、バッター」で検索すると、745件でした。サッカーより多いですね。「当たっている、野球」だと、もっと多くて7680件。でも「金網に当たっている」なんてのも含まれています。
「当たっている、打線」は897件で、これは妥当でしょうか。「当たっている、サッカー」は7300件。これは「組み合わせで当たっている」とか「足に当たっている」とかもあるので、あまり関係ないようです。
まあ、「ゴールキーパーが当たっている」は専門用語と言うよりはスラング、俗語的な感じですから、ちょっと注釈が必要、あまり連発するのは品がないかも知れませんね。
2004/6/15
◆ことばの話1776「全粒粉」
最近耳にするようになった料理関係の言葉、
「全粒粉」
ですが、辞書には載っていないようです。今日(6月17日)放送の「どっちの料理ショー」の中で「全粒粉」で作ったギョーザの粉というのが出てきますが、その中では、「全粒粉」を「ゼンリューコ」と料理人もリポーターも言っています。プロデューサーはそのまま放送するそうです。しかし普通は、
「ゼンリュウフン」
と呼ぶ(読む)と思うのですが、GOOGLEのネット検索(6月15日)では2万件弱、
「全粒粉、ゼンリュウフン」が28件、「全粒粉、ゼンリュウコ」5件でした。
どちらが正しい読み方なのでしょうか?
またいつ頃から使われるようになったのでしょうか?ネットの掲示板「ことば会議室」に質問を書き込んだところ、NISHIOさんからお返事をいただきました。それによると、
『小麦粉料理探求事典』(岡田哲 編、東京堂出版、平成11年6月初版)に、
ぜんりゅうふん 全粒粉→グラハムこ
グラハムこ グラハム粉 (英 graham flour)
小麦の外皮,胚芽を取り除かずに,丸粒のまま粉にしたもの。全粒粉,ひきぐるみの粉ともいう。1839年に,アメリカの医者,牧師のシルベスター・グラハムが,創製した健康素材。〈以下略〉→ぜんりゅうふん
とあります。ちなみに『コムギの食文化を知る事典』(岡田哲 編、東京堂出版、平成13年7月初版)では、「シルベスター・グレアムが提唱〜」となっていたりしますが、同じ「Graham」氏ですね。
また、いつ頃から使われるようになったのか?ということですが、私の好きなビスケットのひとつに、明治マクビティの「ダイジェスティブ・ビスケット」があります。これが最初から「全粒粉」を使っていたような気がします。発売時期は『昭和B級文化論
ザ★おかし』(串間勉、扶桑社)によれば昭和48年(1973年)。ただし当初から「全粒粉」を謳い文句にしていたかどうかは記憶にありません。ボソボソした食感の「全粒粉」が、ことさら有り難がられるようになったのは、食物繊維が有用な栄養素だと認識された頃からでしょうか。
「マクビティ・ダイジェスティブ・ビスケット」、私もよく食べました!懐かしいなあ。隠者どうなってるんだろうか?あのコマーシャルの音楽、品がありましたよね。そして、
「小麦粉の食文化を知る事典」というのがあるのが、すごい!また、東北大学の後藤斉さんからも書き込みをいただきました。
農学、家政学分野では早くから使われていたものと思われます。
国会会議録検索システム 38 - 参 - 農林水産委員会 - 19号
昭和36年03月23日
○政府委員(須賀賢二君)
だから、言葉をかえて申し上げますと、今回の場合は、六十万トンを精麦川として払い下げます大、裸麦から従来の歩どまりで精麦を取りまして、それで、従来の歩どまり大体五八%、その五八%で精麦を取りまして、そこに麦ぬかができます。それから四十万トンの方は、大体全粒粉全部四十万トン。そうしてその麦ぬかと全粒粉をまぜた、いわゆる麦ぬかに相当実が粉にしてもまじりますから、そういう麦ぬかを作って、これを飼料にする。そういう考え方をとるわけです。
と、国会会議録のウェブには昭和36年(1961年)の用例があることを教えてくださいました。ありがとうございます。専門用語だったのでしょうね。それが「食」が専門家多様化することで、それを売り物にする商法が出てきて徐々に広がりつつある、ということでしょうか。まあ、「粉」を「フン」と読んだ方が原料ぽく聞こえ、「コ」というと、いきなり台所の話のように聞こえますね。そういった感覚も重視されているのかも知れません。
「フン」か「コ」か?本当はどちらが正しいのかご存知の方、ご一報くださると、うれしいです。
2004/6/17
(追記)
8月5日の日経新聞の小さな小さな記事の、小さな小さな見出しに、
「全粒粉のパン使用」
というのを見つけました。本文(全13行)を見ると、
「小麦の表皮やはい芽を取り除かずに粉にした『全粒粉』から作ったパン」
という記述があり、日本ケンタッキー・フライド・チキンは8月26日から、「チキンフィレサンド」と「和風チキンサンド」のパンを「全粒粉」のものに切り替えるという業界ニュースでした。
2004/8/6
(追記2)
8年半ぶりの追記です。8年半の間に「平成ことば事情」は1776回から4930回にまで続けることができました!(8年半、毎日書くと約3100回分。ほぼそのくらい書いてるかな。)
きょう(2013年1月7日)、テレビのコマーシャルを聴いていたら、「ブルボン」の、
「アルフォートチョコレート」
のコマーシャルで、向井理君が、
「ぜんりゅうふん(全粒粉)入り」
と言っていました!そして、8年半前は国語辞典に載っていなかった「全粒粉」ですが、今回、辞書を引いてみると載っていました!『三省堂国語辞典・第6版』には、 「ぜんりゅうふん(全粒粉)」=「ふすま()や胚芽を取り除かないで、粉に「ひいた小麦粉。ぜんりゅうこ。」
と載っていました。
2013/1/7 |