◆ことばの話1725「白黒か?黒白か?」
さっそくですが、
「しろくろ」と「こくびゃく」。
どっち?
ええ、もちろん、どちらもあるのでしょうが、もともとは、どっちなんでしょうね?「しろくろ」は訓読みだから和語で「こくびゃく」は音読みだから漢語かな。漢文なんかでレ点つけてさかさまから読むから、そういう意味で中国語と日本語で語順が逆だから「白黒」と「黒白」なんだろうか?
一方「赤白」=「あかしろ」とは言うが「白赤」=「しろあか」とは言わない。もちろん「びゃくせき」とも言わない。「あか」については、「紅白」=「こうはく」という言い方はあるが、「白紅」=「はくこう」なんて言い方もしない。
「しろくろ」つけたいのですが、よくわかりません・・・。
2004/5/18
(追記)
NHK放送文化研究所のホームページの「ことばQ&Q」というところに、研究主幹の豊島秀雄さんがこんなことを書いていました。ちょっと参考になるかも。
(Q)雪や霜であたり一面真っ白になっている状態を言う場合の「白一色」について、「しろいっしょく」と「はくいっしょく」の二とおりの読み方・言い方を聞きます。放送では、どのように言っているのでしょうか。
(A)原則として、「しろいっしょく」と言っています。
(解説)
「白一色」が「はくいっしょく」とも読まれるのは、「明るく白いさま」を意味する「皚(がい)」という漢字を使った成句「白皚皚<はくがいがい>」の影響もあるかと思われます。しかし、「はくいっしょく」は、「白皚皚 霜や雪などのきわめて白いさま」(『日本国語大辞典』小学館)のような慣用が固定した成句ではないうえ、今の時代の話しことばとしては、「しろいっしょく」の読み方のほうが適切だと思われます。(中略)ただし、文章全体が文語調・漢語調の場合など、前後の調子によっては「はくいっしょく」のほうが適切な場合もあります。
ところで、「白」という漢字の読みのうち「常用漢字表」で示されている音訓には、音読みで「はく」(漢音)と「びゃく」(呉音)があります。また訓読みでは「しろ」「しら」「しろい」があります。さらに、この「白」の熟語の読みには、例えば同じ「白衣」でも、[ハクイ](医師、看護師などの衣服)と[ハクエ](「白衣」の古い言い方「〜の装束」)と[ビャクエ](仏教用語「〜観音」ほか)などというように、それぞれの意味・使い方によって読み方が違います。(『ことばのハンドブック』P92、『日本語発音アクセント辞典』P435参照)
「白雨<ゆふだち>や綺麗な空にして戻り」(千代女)*白雨(はくう)は、「夕立」「にわか雨」。夏の季語。
2004/5/20
(追記2)
2005年1月7日の産経新聞のコラム「チャイム」に、「オセロ」の第30回世界選手権が平成18年(2006年)秋に、発祥の地・水戸で初めて開催されるという記事が出ていました。あの、囲碁とはさみ将棋を合わせたようなゲームの「オセロ」です。それによると、「オセロ」は60年前に水戸市出身の長谷川五郎さん(72)が、囲碁を元に考案したそうで、いまや全世界にオセロ人口は4000万人だそうです。この記事の最後には、
「大会を機に、水戸の街おこしは成功するか。『シロクロ』をつける戦いが始まる」
とあります。オセロだけに「シロクロ」ですね。
2006/4/22
(追記3)
この「和スイーツ」のことを知っているか?と、「あさパラ!」という番組でよくそういったところの取材をする清水健アナウンサーに聞いたところ、
「もちろん、普通に『和スイーツ』って言いますよ。『豆腐スイーツ』なんていうのも、取材したことありますよ。」
とのこと。
「でもさあ、『和菓子』って言葉があるんだから、それを使えばいいんじゃないの?『スイーツ』は『洋菓子』のことでしょう?」
と言うと、
「恐らく、『スイーツ』がよく使われるようになったので、『洋菓子』という言葉があまり使われなくなってしまって、それに伴って対語である『和菓子』も使われなくなったんじゃないでしょうか?」
という意見を。なるほどねー。
「じゃあ、『水菓子』のことは『水スイーツ』って言うの?もともと『水菓子』は「果物」のことだけどさ。最近は『水ようかん』などを指して『水菓子』ともいうみたいだけど。
『水飴』は『和スイーツ』なの?『水スイーツ』なの??」
とイジメルと、
「さあ・・・どうでしょうか。」
また、Google検索してみました。
「水スイーツ」=145件
うーん、さすがに、ずばり「水スイーツ」という言葉は出てきてないみたいです。
「洋菓子」= 384万件
「和菓子」= 561万件
「スイーツ」=2800万件
いまや「和菓子」「洋菓子」よりも、ネット上ではずっとずっと「スイーツ」が使われているようですね。
「豆腐スイーツ」= 189件
「とうふスイーツ」= 66件
「トーフスイーツ」= 7件
「トウフスイーツ」= 90件
でした。そういえば、以前Yアナウンサーが「和チック」という言葉を使ったことがあったな。(平成ことば事情521「和チック」=2001年12月)思えば「和スイーツ」もそれと同じような心理から作られた言葉なのかもしれませんね。
2006/4/22
◆ことばの話1724「ググる」
この「平成ことば事情」でもよく使っていますが、インターネットの検索エンジン、
「Google」
「グーグル」と読みます。あ、ご存知ですよね。では、この「グーグル」を使って、キーワード検索することを、
「ググる」あるいは「グーグる」
と言うのはご存知ですか?わたしは、つい先日まで知りませんでした。言うんだそうですよ。その「Google」を使って「ググる」「グーグる」を検索してみると、
「ググる」= 9920件
「グーグる」=2520件(5月7日しらべ)
と、結構な件数、ネット上では使われていることが判ります。そして、このほど検索エンジンGoogleを使って情報を検索するためのハウツー本が2種類出たそうです。
タイトルは、『ググる』(津田大介著、毎日コミュニケーションズ)と『グーグる!』(インターネットマガジン編集部編、インプレス)。
表紙のデザインの、筆書きのような字体がよく似ているます。
このほかにもGoogleの使い方の本は出ていますが、「ググる」「グーグる」というふうに「グーグル」そのものを動詞にしてしまったタイトルは、この2冊だけのようです。
どっちが使いやすいのか、今度、本屋さんで見比べて見たいと思います。
2004/5/18
◆ことばの話1723「置いていた」
突然ですが・・・、
「置いていた」と「置いてあった」との違いは??
が気になってしまいました。
「置いていた」と「置いてあった」で例文を作ると、
「ぼくがここに置いていたサイフ、どこへ行ったか知らない?」
「ここに置いてあったサイフ、どこへ行ったか知らない?」
というふうになります。こう並べると、「置いていた」という方が、主語「ぼく」の意思が感じられますね。「置いてあった」の方は、置いたのはおそらくその主語の「ぼく」だと思うのですが、もしかしたら第三者が置いたのかもしれない、という可能性を残しています。
と、ここまで考えたところで、
『大野晋の日本語相談』(朝日文庫)の147ページに『「ている」と「てある」はどう違う?』と、まさにそのままのことが書かれていることに気づきました。それによると、
「テアルはそれほどむつかしくないのですが、テイルにさまざまの使い方があります。」
として、
「他動詞にしか付かないテアルは、(1)他動詞+テアル 『開けてある』『洗ってある』『直してある』。これは『開けた』『洗った』『直した』という、対象に働きかけた動作の結果がそのまま状態として残っているということ。テアルはこうした具合にしか使わない。
(2)他動詞+テイル 『開けている』『洗っている』『直している』。これは現在その動作をしている人の動作が進行中で持続していることを示します。」
と書いてあります。以下、全部写すのもなんなので要約すると、「着ける」も他動詞だが、着ける「動作」を指す場合と、着ける動作が固定して着けている「状態」になった場合があると。
また自動詞の場合は、(3)生物の動作、自然の作用(はっきり見える聞こえるもの)を表す自動詞+テイルは、動作作用が進行持続していることを表し、(4)自然的成り行きを表現する自動詞+テイルは、成り行きの結果がそのまま現在残っていることを表す、としています。
今回の「置いている」「置いてある」は、「置く」が他動詞ですから、(1)と(2)のケースですね。つまり(2)の「テイル」の方が、やはり動作の主(ぬし=主語)の意思が強く働いていることになりませんか。(1)の「テアル」は対象に働きかけたその結果ということで、もうその対象に、どうこうしようという意思は感じられません。つまり「置いてあった」は、「ほったらかし」ということです。管理を放棄していると取られても仕方がありません。それに対して、「置いていた」は、たとえ一瞬目を離したとしても、その動作の主の意思の元に管理下に置かれているという感じですね。そのあたりを見極めて使い分けるということで、いかがでしょうか。
2004/5/18
◆ことばの話1722「ボブ・デュラン」
フォークシンガーの小室等の本を読んでいたら、
「ボブ・ディラン」
という表記が出てきて、おや?と思いました。私の記憶の中で、このフォークの神様は、
「ボブ・デュラン」
だと思っていたからです。つまり「ディ」か「デュ」か?という問題です。英語に詳しいWアナウンサーに、
「アメリカで、フォークの神様と言ったら誰?」
と聞くと、彼女も、
「ボブ・デュラン」
と言うではありませんか。
「だって、♪きっみとよっく、こっのみせっに、きたもの・さー♪のガロの『学生街の喫茶店』の歌詞は、ボブ・デュランじゃなかったでしたっけ?」
そうでしょ、そうでしょ。そこでさっそく、意気込んでGoogle
で検索したところ、
「ボブ・ディラン」=3万1300件
「ボブ・デュラン」= 1520件
と、圧倒的に「ディラン」が多いのです。ついでに『学生街の喫茶店』の歌詞も検索してみると、やはり、
「片隅で聴いていた ボブ・デュラン」
となっていました!(作詞・山上路夫)
「もとの名前のつづりはどうなのか?」
調べてみると、
「Bob Dylan」
でした。そうか、これなら「ディラン」だなあ、「デュ」とは読めないわなあ・・・あ、そう言えば1980年代に、
「デュラン・デュラン」
というバンドがあったのではないか?それじゃあ、あれも本当は、
「ディラン・ディラン」
だったのか?と思ってインターネットを調べてみると、こちらは、
「デュラン・デュラン」(Duran Duran)
で良かったのでした。(結成は1978年になってました。)
「ディ」と「デュ」、どちらが言いやすいか?というと・・・ぼくは「デュ」の方が言いやすいな。「デュークエイセス」が、もし「ディークエイセス」だったら、言いにくいし。これは「イ」の音が伸びるからか。だって「ディレクター」って言えずに「デレクター」と言う人も多かったですよね。
もしかしたら、「ボブ・ディラン」と「デュラン・デュラン」が混同して、
「ボブ・デュラン」
になってしまったのかもしれません。
皆さんは、どっち派?
2004/5/18
◆ことばの話1721「スイーツ」
最近よく耳にする、目にする言葉に
「スイーツ」
があります。先日も、新番組の「なるトモ」(月〜木、あさ9:55〜で11:20)で、
「緑茶のスイーツ」
なるものを紹介していました。「スイーツ」は英語です。綴りは、
「 sweets 」
意味は「甘いもの、デザート、砂糖菓子」ということで、「甘い」という英語の「スイート」の複数形の名詞。若い女性にとってはこの「スイーツ」はもう日本語なのでしょうが、ニュースなどで何の説明もなく使うと、ちょっと違和感があります。「デザート」は説明がなくてもわかりますが。
新しい言葉を早く採用することで知られる『三省堂国語辞典』(2001、3)にも「スイーツ」は載っていません。「スイート」は載っていて、その派生語で「スイートスポット」「スイートハート」「スイートピー」「スイートホーム」「スイートポテト」「スイートメロン」までは載っています。ここまでは外来語、日本語として『三省堂国語辞典』には認められているということでしょうが、まだ「スイーツ」は認定されていないようです。
また、『広辞苑』『新潮現代国語辞典』『明鏡国語辞典』『日本国語大辞典』にも「スイーツ」は載っていません。サッカーの「スイーパー」は載っているのに。ついでに日本新聞協会の『新聞用語集』も見てみましたが、載っていません。読売新聞校閲部が出した『新聞カタカナ語辞典』(中公新書ラクレ、2002)にも残念ながら載っていません。
Googleで検索したところ(5月18日)、「スイーツ」は11万6000件も使われていました。
これだけ使われている上に、難しい文脈で出て来る専門用語というわけでもないので、今後もこの「スイーツ」は、なんの説明もなく使われることと思います。特に「流行語」というイメージもないですね。普段着よりはちょっとオシャレな外来語、といったところでしょうか。
時事用語を扱っている事典を調べてみました。
『現代用語の基礎知識2004』(自由国民社)には「甘いもの、菓子。ケーキ、パイなど。デザート」と載っていました。
『知恵蔵2004』(朝日新聞社)にもやや簡略ですが、「甘いもの。菓子。」と載っていました。
『イミダス2004』(集英社)には「スイーツ」は載っていませんでした。
これだけ使われているのですから、そろそろ国語辞典に採用されてもよい言葉ではないでしょうかね。
2004/5/19
(追記)
NHK放送文化研究所の塩田さんから、「以前、スイーツに関して、ちょっと書きました。」
と教えていただきました。NHK放送文化研究上のホームページの「ことばに関するQ&Q」というコーナーで、「水菓子」について書かれた中(2004年2月)で、こういった記述がありました。
『なお、最近よく使われる「スイーツ(スウィーツ)」ということばは、お菓子(甘いもののみ)・デザート・ケーキ・和菓子などをひっくるめて指すことばです。現在「お菓子」と言うとポテトチップスなどのスナックも入ってしまうし、また「デザート」と言うと食後に限定されてしまう、などということがあって使われるようになったのでしょう。放送で使う場合には、意味の説明をつけておくようにおすすめします。』
なるほど、やはり単独で「スイーツ」は、まだ早いかもしれません。
2004/5/20
(追記2)
5月31日のNHK12時15分からの「お昼ですよ、ふれあいホール」という番組で、
「スイーツ大作戦」
と題して、甘いお菓子の特集をしていました。で、担当の松本アナウンサーの説明では、「スイーツ」は洋菓子に限られるような感じでしたが、たしかに和菓子は「スイーツ」という横文字には、似合いませんね。
2004/6/2
(追記3)
「スイーツ」は洋菓子に限られる。でも「和菓子」の場合は、「和」を付けて、
「和スイーツ」
という言葉があるようです。2006年4月12日の読売新聞夕刊に出てきました。
『恋ナビ対決』という、雑誌『PopStyle』と『KANSAI一週間』とのコラボレーション企画だそうで、その特集の第2回が、
「ツカえる!和スイーツ」
という見出しタイトル。(なんで「使える」の「使」がカタカナで「ツカ」なの?漢字、書けないのか?)
「きょうは甘いものが大好きな彼女のために、とっておきの和スイーツをリサーチ!」
として、「お汁粉」「揚げまんじゅう」「くずもち」が紹介されていましたが、なぜ、
「和菓子」
とすんなり言わないんでしょうねえ・・・目新しさを求めているのかなあ?
Google検索(4月22日)では、
「和スイーツ」=7万7700件
でした。既に相当、浸透しているようですね・・・。
2006/4/22
(追記4)
この「和スイーツ」のことを知っているか?と、「あさパラ!」という番組でよくそういったところの取材をする清水健アナウンサーに聞いたところ、
「もちろん、普通に『和スイーツ』って言いますよ。『豆腐スイーツ』なんていうのも、取材したことありますよ。」
とのこと。
「でもさあ、『和菓子』って言葉があるんだから、それを使えばいいんじゃないの?『スイーツ』は『洋菓子』のことでしょう?」
と言うと、
「恐らく、『スイーツ』がよく使われるようになったので、『洋菓子』という言葉があまり使われなくなってしまって、それに伴って対語である『和菓子』も使われなくなったんじゃないでしょうか?」
という意見を。なるほどねー。
「じゃあ、『水菓子』のことは『水スイーツ』って言うの?もともと『水菓子』は「果物」のことだけどさ。最近は『水ようかん』などを指して『水菓子』ともいうみたいだけど。
『水飴』は『和スイーツ』なの?『水スイーツ』なの??」
とイジメルと、
「さあ・・・どうでしょうか。」
また、Google検索してみました。
「水スイーツ」=145件
うーん、さすがに、ずばり「水スイーツ」という言葉は出てきてないみたいです。
「洋菓子」= 384万件
「和菓子」= 561万件
「スイーツ」=2800万件
いまや「和菓子」「洋菓子」よりも、ネット上ではずっとずっと「スイーツ」が使われているようですね。
「豆腐スイーツ」= 189件
「とうふスイーツ」= 66件
「トーフスイーツ」= 7件
「トウフスイーツ」= 90件
でした。そういえば、以前Yアナウンサーが「和チック」という言葉を使ったことがあったな。(平成ことば事情521「和チック」=2001年12月)思えば「和スイーツ」もそれと同じような心理から作られた言葉なのかもしれませんね。
2006/4/22
(追記5)
先週末、東京に行った帰り、新幹線に乗るまでに時間があったので、東京駅前の丸の内に3年前に出来たという、
「丸の内oazo(オアゾ)」
というショッピングモールをブラブラしていました。本屋さんの「丸善」が入っていて、時間をつぶすのにはもってこいだったのです。そこで見かけたのは写真のような垂れ幕です。
この真ん中あたりの
「お茶と、スウィーツとおしゃべりと」
とありました。ここでの表記は、
「スウィーツ」
でした。Google検索では(10月23日)、
「スイーツ」= 3210万件
「スウィーツ」= 428万件
でした。日本人は、どちらもお好きなようで・・・。
2007/10/23
(追記6)
2008年4月4日の読売新聞夕刊のカラーの特集「百貨店大研究」では、
「お薦めの 春の新作スイーツ」
と、やはり「スイーツ」を使っていました。Google検索(4月10日)では、
「スイーツ」 =4930万0000件
「スウイーツ」= 1万2900件
「スウィーツ」= 319万0000件
「スゥイーツ」= 5万8800件
「スゥィーツ」= 2万3700件
で、やはり「スイーツ」が圧倒的。「スウィーツ」も319万件もありますけどね。しかし、去年の10月23日と比べてみると、
(07年10月) →(08年4月)
「スイーツ」= 3210万件 → 4930万件(△154%=1、5倍)
「スウィーツ」= 428万件 → 319万件(▼ 75%=4分の3)
と、明暗を分けていますね。
2008/4/10
(追記6)
近くのミスタードーナツで見つけました。「スウィート(ショコラ)」でした。
2009/2/26
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