◆ことばの話1450「ランチ公演」
秋の一日、ドライブをしながらカーラジオでFM放送を聴いていると、男性DJの声で、
「○○のランチ公演は11月×日・・・」
というのが聞こえてきました。
「へえー、外タレ(古い!?)が昼間のランチタイムに公演を行うなんて、珍しいな。でも、そんな短い時間でしかもランチタイム、お昼頃にコンサートして、客は集まるんかいな?」
と思ったときに、ハタと気づき、ハンドルを叩きました。
「ランチ公演ではなく、来日公演と言っているのだ、このDJは!!」
はっきりしゃべらんかいっ!!と声を大にして言いたいところですが、意外な言葉の発音が似ているということでもありますね。ローマ字表記してみると、
「ランチ」=RA N CHI
「来日」 =RAINICHI
ということで、このDJは「I」の音が2つ抜け落ちていますね。はっきりと「I」を発音しない、あいまい発音の方が「カッコイイ」と思っているのかもしれないですが、発音の不明瞭さが、別の意味になってしまうケースもあるので、放送では注意したいものです。
でも、ほんとは「ランチ公演」だったりして・・・・。
2003/10/30
◆ことばの話1449「スコアレス・ドロー」
最近、スポーツニュースでサッカーのニュースを聞いているとよく耳にする言葉に
「スコアレス・ドロー」
というのがあります。
「スコア(得点)」が「レス(ない)」「ドロー(引き分け)」
ということで、つまり簡単に言えば、
「0対0の引き分け」
なのですが、「スコアレス・ドロー」というと、ちょっとカッコよく聞こえますね。
サッカーは、バスケットボールやラグビー、野球に比べると、得点が入りにくいスポーツだけに、結構この「0対0」の試合が多く、そのためにサッカーのスポーツニュースの際に「スコアレス・ドロー」という表現をよく耳にするのかもしれません。
でも、中にはこの言葉の意味を理解していない人もいるかも知れません。
スポーツニュースなどは、そのスポーツに詳しい人、興味のある人が見ていることが多いので、それほど心配することはないかとも思うのですが、ちょっと最近気になる表現です。
2003/10/24
(追記)
新聞の切抜きを整理していたら、去年(2007年)6月6日の読売新聞で、
「オシム日本 初タイトル〜キリンカップ コロンビア戦0−0」
という見出しの記事が出てきました。その記事の中に、
「決定機をものにできず、スコアレスドローに終わった。」
とありました。「スコアレスドロー」が「・」(中黒)なしで使われていました。
1年とちょっと前ですが、「オシム日本」、とっても懐かしく感じました。
2008/7/10
(追記2)
2008年10月15日に行われた南アフリカワールドカップのアジア最終予選、日本対ウズベキスタン戦は、結局、1対1の引き分けに終わりました。それを報じた翌16日の新聞紙面の見出しは、
(読売)攻める日本同点止まり
(産経)岡田J痛恨ドロー
(毎日)日本どうにかドロー日経・日本、ホームでドロー
(朝日)日本痛いドロー
と、読売の「同点」以外はすべて「ドロー」という表現を使っていました。
2008/10/21
◆ことばの話1448「安藤か?歌川か?」
「安藤」というと、阪神のピッチャーとおんなじ名字ですが、野球の話ではありません。歌川なんてピッチャーいないだろうし。お察しの通り、浮世絵師の名字の話です。
9月30日、NHKのハイビジョンの番組の宣伝で、「東海道五十三次」の浮世絵の作者を
「歌川広重」
と言っていたのですが、たしか子供のときに覚えた名前は、
「安藤広重」
だった記憶があります。教科書で習ったというよりは、永谷園のお茶漬け海苔の中に入っていたカードを集めて応募してもらった「東海道五十三次カード」によって、ですが。あれは森永チョコボールの箱のキョロちゃんのくちばしで「金のエンジェル」が出れば1枚で、「銀のエンジェル」は5枚でもらえた「おもちゃの缶詰」の次ぎくらいに人気がありました。この「金のエンジェル」「銀のエンジェル」のパロディが、「トリビアの泉」の最後に出てくる「金の脳」「銀の脳」ですね、きっと。メロンパン入れになっているという、本当に何の訳にも立たないも、せいぜいオブジェかなというもの。「銀の脳5つで、金の脳とお取り替えいたします。」というのが、「金のエンジェル」のパロディでしょう。また、池に鉄の斧を落したきこりの話で、斧を拾った神様が池の中から出てきて、
「おまえの斧はこの金の斧か?それともこちらの銀の斧か?」
「いえ、私の斧は、その鉄の斧でございます」
というあのお話の「金の斧」「銀の斧」も「金の脳」「銀の脳」に引っかけているのではないかと思いますが。
話が横道にそれました。すみません。
その「安藤広重」なのですが、最近、「安藤」ではなく「歌川広重」として出ていることが多いような気がするのです。これって同じ人ですよね。ネットで調べてみました。まずはGoogleで数調べ。(10月2日しらべ)
安藤広重=5160件
歌川広重=6970件
おお!なかなかの接戦ですね。「歌川」が一歩リードか。記述を見てみると、
「歌川広重(うたがわひろしげ)」<寛政九年(1797)〜安政五年(1858)>
江戸時代後期の浮世絵師で江戸の生まれ。はじめ歌川派の浮世絵を習う。十六歳の時に師・歌川豊広から「広」の一文字を受けて「広重」と名乗る。役者絵・武者絵などを描いたが、のちに葛飾北斎の影響を受けて風景画に転向。幕末に、三代豊国・国芳とならび、「歌川三羽烏」と称される。代表作に「東海道五十三次」「近江八景」「木曽街道六十九次」「名所江戸百景」など。本姓は安藤、画号広重から、安藤広重とも呼ばれる。
やはり同一人物でしたね。
しかしなぜ最近は「歌川」が優勢なのかはわかりませんでした。もしかしたら、教科書の影響?かもしれません。
2003/10/24
◆ことばの話1447「まっかちん」
以前、埼玉県春日部市出身の三浦アナウンサーが、
「道浦さん、『まっかちん』取りましたよね、子どもの頃に。」
と話し掛けてきたことがありました。
「なにそれ?『まっかちん』って?」
「え!知らないんですか?ザリガニのことですよ。」
「初めて聞いたわ。」
という会話になりましたが、アナウンス部のほかの誰も「まっかちん」なんて呼び方を知りませんでした。おそらく埼玉の方言であろうということで、話は終わったのでした。
それから数年経ったつい先日、子どもを迎えに保育所に行ったところ、先生が十数人の子供たちに童話を読み聞かせていました。その童話というのが、なんと、
「まっかちんのおうさま」
というものだったのです。おお!「まっかちん」は童話になっているのか!
子どもに「『まっかちん』って知ってるの?」と聞いてみると、「今日初めて、あのお話を読んでもらった」とのこと。そのお話では大きくて赤いザリガニを「まっかちん」と呼んでいたようです。アクセントは頭高で「まっかちん(HHLLL)」でした。
童話になっているくらいだから、三浦アナ以外にも使っているひとがいるであろうと思い、ちょっとインターネットのGoogleで検索してみました。(10月17日しらべ)
「まっかちん」= 1470件
「まっかちん・ザリガニ」=164件
「マッカチン」= 1830件
この「マッカチン」、実はパチンコの台の機種の名前にも「マッカチンS」として使われているようです。ザリガニのハサミのように、いわゆる「チューリップ」が開くのでしょうね。
そのネットで調べた中に、ザリガニの呼び方の方言について調べたサイト(「ウィふり調査団」2003年3月調査)もありました。それによると、
「エビガニ」=山梨県、千葉県、東京都中野区、京都府、岡山県
「マッカチン」=山梨、千葉県北東部、東京都、群馬県、神奈川県横須賀市、福井県、岡山県
「とーちか」=岡山県
「アメザリ」=静岡県
「ザリ」=埼玉県
「赤チョキン」=埼玉県南西部
「あっかんまっかん」=静岡県焼津市
「ザルガニ」=福岡県飯塚市
「マッカチ」=神奈川県横浜市
だそうです。関西のデータは少ないな。
最近は「まっかちん」も「アメリカザリガニ」にも無縁な生活をしております。
2003/10/24
(追記)
『泉麻人のなつかしい言葉の辞典』(三省堂2003,10,15)180ページに「マッカチン」が載っていました。泉氏が「マッカチン」を取っていたのは東京の「下落合」だったそうです。
「マッカは色合いの『真っ赤』だろうが、下の『チン』はどういう根拠か?
(1)珍しいの『チン』
(2)デブチン・・・・などの愛称としての『チン』。
いくつかの仮説が出回っているようだが、僕の推理の一つに、当時子供の傷薬としてはポピュラーだった『赤チン』『ヨーチン』からの連想、というのがある。マッカチン採りに熱中する子供は、しばしば赤チンのお世話にもなっていた。それともう一つ、子供の頃、こんな"俗説"が流布していたような気がする。
『外人(主にアメリカ人)のチンチンはデカくて、なかが赤い。』
思えば、ザリガニの胴体部分とその形状は、なんとなく重なり合うところがある。(中略)マッカチン・・・発祥の段階では、そんないわゆる『アメ公』に対する悪口の意味合いが含まれていたのでは・・・と推察するのだが、どうだろうか。」
そうなのかなあ。どうでしょう?マッカチンって言葉を使っていなかったからなあ、私は。
2004/2/11
◆ことばの話1446「五條市か五条市か?」
朝日新聞のFさんからメールが来ました。
「奈良県のゴジョウ市の表記を読売新聞は去年から、それまでの『五条市』から『五條市』に変えたそうですが、読売テレビさんもやはりそれに合わせて変えられたんですか?」
「五條市」に関しては、たぶん、もっと前からだと思ったのですが、詳しいことはわかりません。
読売テレビ報道局に原稿を登録するコンピューターが導入されたのは1995年8月からなのですが、その原稿では「五條市」「五条市」のどちらがどういうふうに使われているかを検索してみました。結果は以下の通り。
|
「五條市」
|
「五条市」
|
1995年 |
0件
|
1件
|
1996 |
2
|
0
|
1997 |
6
|
1
|
1998 |
1
|
3
|
1999 |
4
|
0
|
2000 |
0
|
0
|
2001 |
3
|
0
|
2002 |
2
|
2
|
2003 |
9
|
0
|
という結果でした。(2003年は10月まで)これで見ると、おそらく1999年を境にして「五条市」→「五條市」に変わったのではないかと思いますが、はっきりとは、わかりません。1997年は「五條市」の方が多いのですけど。
コンピューターに登録されている「五條市」の初出は1996年4月16日、そして「五条市」の初出は1995年11月21日でした。
旧字体での市町村名を強く要望した市町村は、その希望にこたえて旧字体での表記に変わりつつあると思います。ほかに、兵庫県龍野市も、
「竜野市→龍野市」
になっています。
2003/10/24
|
|