2003/9/7
(追記)
早稲田大学非常勤講師の飯間浩明さんから、メールをいただきました。それによると、
「私は『です』の広まりについて、ちょっと慎重に見る。山本夏彦の説は一面の真実ではあるかもしれないが、『ないです』といった言い方は、大辻司郎の登場より前からあった。『行くです』『よいです』などといった言い方は、明治の『書生言葉』で、飛田良文『東京語成立史の研究』によれば、尾崎紅葉『金色夜叉』(明治31〜36年)に『遊ぶです』『造るです』『よいです』『宜しいです』『いです』『難しいです』『近いです』『ないです』、そして、『ますです』『ませんです』『忘れられんです』などが使われているそうだ。大辻司郎も大隈重信の書生だったそうだから、そういう言葉遣いをしていたのだろう。
もっとさかのぼって江戸時代にも『医者か飛脚か我ながら解せぬです』(人心覗機関)、『ならばおせわ申たいです』(同)、『これでなければ嬉しくないです』(郭の花見時)と使われている例があるそうだ(中村通夫『東京語の性格』)。
大辻が弁士として活躍したのは大正時代の、震災前後ということなので、それより前に多くの人が使っていたのは間違いない。ただ『書生言葉』とさげすまれていた(?)このような『です』の用法を、誰かが一般化させた、その一人が大辻だったのかもしれない。」
ということで、「行くです」の形は大辻司郎が広めたかもしれないが、
「それ以前から、ある事はあった」というご指摘です。ありがとうございました。
そうだ、この「行くです」というしゃべり方、
「とっとこハム太郎」に出てくるハムスターがしゃべっていた、ということを、前にどこかに書いたな。どこだっけ?新しく付いた
「全文検索」で一発検索!!
あ、出た!
平成ことば事情991「うれしいでした」の追記で、ハム太郎とサザエさんのタラちゃんも使っていると書いていました。
便利だなあ、全文検索!
2003/9/15
(追記2)
豊田泰光著『サムライたちのプロ野球〜すぐに面白くなる7つの条件』(講談社+α新書2003,5,20)という本を読んでいると、こんな表現が。
「あの時、新米の豊田は野球の厳しさというものをしっかり教わりましたです、ハイ。」(170ページ)
この「教わりましたです、ハイ」というのは、「知らないデス」に通じますが、先輩などに少し恐縮したような時に、少しおどけて言うような感じでもあります。また、後ろに「ハイ」を付けると、より恐縮した感じがして、昔の映画に出てくる役場の課長あたりが、手をモミモミしてゴマをすっているような感じがしますねぇ。
◆ことばの話1383「おり傘」
週に一度、教えに行っているアナウンス学校へ向かう途中、梅田の地下街を通りました。その時、地下街の売店で売っていた「傘」の前に、手書きでこう書いてありました。
「おり傘 500円」
お、安い!・・・と感じるよりも早く、
「おり傘」という文字に注目しました。(しかも「傘」は略字でした。)普通、私はこの手の傘のことは、
「折り畳み傘」
と言います。「おり傘」というのは初めて目にしました。インターネットの検索エンジンGoogleで調べてみました。しかし、
「おり傘」だと411件あったものの、
「・・・しており、傘が」
というようなものが多かったので、あまり参考になりません。そこで漢字と混じった形で検索しました。
「折り傘」・・・・・・・・・・218件
「折りガサ」・・・・・・・・・・1件
「折りがさ」・・・・・・・・・・3件
「折りかさ」・・・・・・・・・12件
「折りカサ」・・・・・・・・・・1件
「折り畳み傘」・・・・・・・2800件
「折りたたみ傘」・・・・1万3100件
「おりたたみ傘」・・・・・・・193件
「おりたたみガサ」・・・・・・・6件
「折りたたみガサ」・・・・・・・35件
「折り畳みガサ」・・・・・・・・34件
「おり畳みガサ」・・・・・・・・・0件
ということで、
「折り傘」は218件と思った以上にありました。とは言うものの、やっぱり
「折りたたみ傘」が1万3100件とダントツですが。
この「おり傘」というのは、方言なんでしょうか?『日本国語大辞典』にも載っていません。『三省堂国語辞典』にも「折り紙」はあっても「折り傘」は載っていません。『新潮現代国語辞典』にも「折り鞄(カバン)」は載っていても「折り傘」は載っていません。
この言葉、ご存知の方はご一報ください!
2003/9/4
(追記)
今週、同じ売店の前を通ってよく見たら、
「折傘」と漢字表記もありましたし、折りたたみでない傘も売っていて、そちらには、
「長傘」と書いてありました。