◆ことばの話1135「関東甲信地方」
先日、東京に出張したおりにテレビの天気予報を見ていて「あれ?」と思いました。
「関東甲信地方は・・・・」
と気象予報士が言っていたのです。私が大学時代、東京に下宿していた頃は、たしか
「関東甲信越地方」
と、天気予報には「越」が入っていたと思うのですが、いつから「越」は「関東甲信越」からはずされてしまったのでしょうか?
また、3月4日の夜11時50分頃、テレビ(日本テレビ)をい見ていると、
「甲信越地方で震度3の地震がありました。」
という速報スーパーが出ました。これは「関東」は入っていなかったのですが、「越」は入っていました。「越」ってどういう扱いなのでしょうか?
NHKの方に聞いたところ、
「気象庁では、関東1都6県に山梨・長野を合わせた『1都8県』を『関東甲信地方』と言い、『新潟』は『北陸地方』、さらに細かく区分すれば『北陸東部地方』になるとのこと。それで『関東甲信地方』と『新潟』がたまたま同じお天気であれば、NHKでは『関東甲信越』というくくりをする」
んだそうです。だから「関東甲信越」は、気象庁の用語ではないそうです。例えば、気象庁の発表が「関東甲信地方および北陸東部は"晴れ"」
という場合、NHKでは、
「関東甲信越地方は"晴れ"」
と"翻訳"することになるんだそうです。実は、気象庁の区分と、NHKの放送範囲の区分が異なることに端を発しているようです。NHKの地域放送の放送範囲は、山梨・長野・新潟は、関東の1都6県と合わせた「1都9県」で「関東甲信越」ブロック放送となっているのだそうです。
それでたとえば、気象区分の「関東甲信」地方に「大雨情報」が出ていて、気象区分の「北陸」地方には情報が出ていない場合、「関東甲信越」地方に向けて放送しているNHKの気象情報の放送で、新潟だけ「情報が出ていない」ことになります。そこで、文字情報(スーパーダブリ)で「関東甲信に大雨情報」と表記する(つまり「越」には出ていない、ということを意味しています)などにより、誤解を防ぐようにしているそうです。こういう時は、冒頭のようにNHKでも「関東甲信地方」という字幕が出ることもあるということですね。
なかなか1回聞いただけでは理解するのが難しいのですが、「越」「北陸東部地方」にあたる、新潟県の皆さんは、「天気予報」の時に、けっこう"やきもき"しているのかもしれませんね。
2003/4/5
◆ことばの話1134「部族」
イラク戦争関係の日本テレビのニュースで、
「部族」
という言葉を使っていたと、「ニューススクランブル」のSキャスターからの電話です。
「『部族』って言葉は、使って良いんでしたっけ?」
「そう言えば、随分前の用語懇談会で、『「部族」は差別語だから使わない方がいい』というような話がでたような気がするなぁ。」
と答えて、机の中をひっくり返して調べましたが、わかりません。一時間後、以前の用語懇談会の様子をメモしたノートを調べていて、ようやく見つかりました。
2001年11月21日に山口県下関市で開かれた用語懇談会の秋季合同総会の席で、北海道新聞の委員から、
「最近アフガニスタンの『パシュトゥン人』という表現が出てくるが、以前は『パシュトゥン部族』と言っていた気がする。『部族』というのは差別表現だろうか?」
という質問が出て、共同通信の委員から、
「以前は『部族の長が集まって』なんて原稿があったが、今は『各派の長』にしている。『部族会議』 も『各派会議』にしている。」
という意見が出されました。次いで、関西テレビの委員から、
「2年ほど前から『部族』という言い方を廃止すると、たしか共同通信さんから言い出したのでは・・・」
という意見が出たところまでノートに記されていました。
そのメモによると、どうやら共同通信の『記者ハンドブック』(=市販されています)に載っているようです。見てみると、「差別語、不快語」の欄(84頁)に、
「○○○族、○○○部族の表記は避け、○○○人、○○○民族、○○○系などとする。長めの記事では先住民族であることを書き加える配慮が望ましい。」
と記してありました。
共同通信のNさんに伺ったところ、
「クルド族→クルド人、マオリ族→マオリ人、チベット族→チベット民族という書き換えをしているが、今年1月からの記事を『部族』『クルド族』のキーワードで検索してみたところ、通常の記事では、「○○族」「クルド族」は使われていなかった。しかし、一般名称での『部族』は使われている。例えば、『ラマダン副大統領はイラクの有力部族の出身で』(3月23日の記事)、『クルド人やイスラム教シーア、スンニー両派、伝統的部族などで分裂したイラク』(3月20日の記事)、『パシュトゥン人部族間の対立による殺人や誘拐事件が続発』(3月11日の記事)。このほか、羽田元首相が発言の中で『クルド族』を使った(3月22日の記事)。」というような情報を教えてくれました。
新聞用語懇談会の委員の方にもメールで「『部族』を使うか」を聞いてみたところ、個人的見解も含めて、答えが返ってきました。(順不同)
「軍事評論家の神浦さんは『クルド族』と言っているが、原稿では『クルド人』が常識。『部族 』『部隊』という表現にはあまり差別的なことを感じないので必要があれば使う。(日本テレビ)
「『部族』『族』は、使わないとは決めていないが、避けている。『○○人グループ』『民族』など場合に応じて工夫している。」(NHK)
「ごくたまに『部族勢力」などという言葉も出てくるが、『部族』は原則使わない。『クルド族』ではなく『クルド人』を使っている。『少数民族』で表現できない時は『部族』を使うこともある。』(TBS)
「『部族』という表現は、学者の間では、○○民族、○○人という表現の方が適切だという人も増えてきており、今後問題を含む可能性のある語だと認識しておく必要があるのではないか、と考える。しかし、『使わない』というとりきめはない。肝心なことは『部族』『族』という言葉の問題ではなく、その人たちをどう扱うかと言うことだ。」(テレビ朝日)
「考査の勉強会で『部族という表現は避けた方がよい』という話が出たことはあるが、『高砂族』『カレン族』など日本で昔から使われてきた表現は、その年代の人たちがいらっしゃる限り使うべきではないか。そうでないと、理解できなくなる。」(フジテレビ)
「『部族』という言葉を使うと、差別感があるとして視聴者からクレームがくることがある。しかし、民族学上、集団の単位としての『部族』という学術用語に差別感があるとは思えない、と報道から質問が出たことがある。場合によって『グループ』『集団』『政治グループ』『政治集団』『〜派』『共同体』などとした方が、実態がつかみやすいかも。」(テレビ東京)
「共同通信のハンドブックに準拠している。が『民族』に置き換えられないものや、違和感を覚えるケースはある。」(京都新聞)
「ずっと前に共同通信から『原則として"部族"は"民族"変える』という通達がきて、いつのまにかそうなってしまった。が、個人的には機械的に『族』を『人』に変えるのは抵抗がある。例えば『漢族』は『漢人』に出来ないので、『漢民族』」としている。」(神戸新聞)
「『部族』は普通の記事では使わない。『部族』の使用例は『コートジボワール内戦は、部族間抗争が発端』や『台湾の先住民は部族ごとに言語が違う』のように民俗学的要素が含まれる場合に限定される。1991年4月に『クルド族』は使用せず、『クルド人』とすることを決めている。理由は、クルド人は人口2000万〜3000万の大きな民族であり、単なる部族ではないから。ただ『族』という言葉に差別性が付着していることが問題だと思う。英語の『tribe(部族)』同様、植民地主義が背景になった言葉ではないか。『族』で使えるのは『漢族』くらいか。」(読売新聞)
「共同通信から『部族は使わない』という話があった時に、『追随しない』ことを決めて現在に至っている。私見だが、『族』は同じ旗の下に集まる血縁集団という意味なのに、どうして嫌われるのか。もしかしたら、『賊』と同音であるせいかも。」(産経新聞)
「『部族』という言葉自体は使っている。アフリカなら『ツチ族』だが、旧ユーゴでは「モスレム人」などとすることに意義を唱える向きがあることは知っているが、集団の規模の違いなど、一律に言いかえられるとは思えない。」(朝日新聞)
その後読んだ、ボブ・ウッドワード著、伏見威蕃訳『ブッシュの戦争』(日本経済新聞社、2003、2、24)の中に「部族」という言葉がたくさん出てきました。舞台はアフガニスタンです。忘れないように一応、書き記しておきましょう。
P161 部族の長老、各部族
P163 部族主義 (cf)多数民族であるパシュトゥン人
P269 協力的な部族、全部族派閥
P307 アメリカ軍ではなく部族の部隊が行なう
P312 部族指導者
P347〜348 部族支援のために
P390 反タリバンの部族
P393 南部の部族とのコネ
P394 南部の部族、南部の部族
P395 部族指導者
P418 部族の動員
と、私の見る限り、14回出てきました。
こうして見ると、「部族」を使わないのは、共同通信さんが主導で、あとは新聞、放送ともまちまちといった状況のようです。なぜダメなのか、に付いては、「なんとなく」しかわかりませんでした・・・・。
2003/4/10
(追記)
産経新聞に作家の曽野綾子さんが連載している「透明な歳月の光」というコラムの今朝(4月11日)の分(第53回、毎週金曜日掲載)で、「部族」が出てきました。今回のタイトルは「イラクの民主化」でサブタイトルは「同部族社会には無理な論理」。該当する部分を抜書きしましょう。
「そもそも彼らは、遊牧民の文化に属し、同宗教・同部族しか信用しない。」
「同部族の数が増えれば、安全と繁栄にがるからである。」
「何しろいとこ社会・同部族社会なのだから」
「よそ者に対するように契約なんかしなくても、部族の掟と人情で縛られれば裏切られることもない。」
こう見ていると、曽野さんの使う「部族」は、「非常に結束の固い集団」という意味で、「民族」のように「緩い結束」の集団とは別物に思えました。
2003/4/11
(追記2)
2004年2月の8日、Sアナウンサーからのメール。
「イラク関連で、部族とか部族長という表現が使われていますが、今日の朝日6面の見出しに『サマワの族長』と書いてありました。本記で『ドラウシャ族の族長』との表記。初めて見ました!『族長』というのは!ドラウシャ族は、サマワ最大のアルジアド部族を構成する六つの族の一つ…と記事に。やっぱり『族』なんや」
たしかに、「族長」だと、なんか「暴走族」みたいですねえ。
上のほうで共同通信の委員が、
「以前は『部族の長が集まって』なんて原稿があったが、今は『各派の長』にしている。『部族会議』 も『各派会議』にしている。」
と答えていたのに、「各派の長」がいまや「族長」になったのでしょうか。
Googleの日本語ページで「族長」を検索すると(3月29日)、なんと1万8500件も出てきました!ただ、よく見るとこの中には「部族長」も含まれているような感じです。「部族長」単独で検索すると、今度は970件でした。その差が「族長」かというと、どうもそう単純ではないようで。しかし、「部族」の長を表すのに「族長」はかなり使われているようですね。
2004/3/29
(追記3)
2010年11月18日に鳥取で開かれた新聞用語懇談会秋季合同総会の席で、こんな質問が出ました。
「『マサイ族』という表現をテレビ欄に出したら拒否され『マサイ』『マサイ人』に直されたが、『マサイ族』は使ってはいけないのか?各社の基準は?」
これに対して各社からは、
「過去に『部族』『族』の使用に関して『申し入れ』があったことは事実。現在は使用禁止していない。ルワンダの虐殺の際には『フツ族』『ツチ族』『部族』が頻出した。(A社)
「(使用禁止を)決めていない。クレームもない。以前の『ジプシー』に関しては『ロマの人びと』『ロマ族』『ロマ民族』も使っている。(B社)
「規定はない。ただ『ロマ民族→ロマ人』『クルド族→クルド人』などとしている。データベースでは過去5年で20件『マサイ族』が出てきた。『マサイ人』は0件。(C社)
「『マサイ族』『マサイ人』はデータベースで各1件。民族名で『マサイ族』は『要注意語』だが、『〜族』の使用を禁じてはいない(D社)
「昔は禁止していたが、今は使用禁止ではない」(E社)
*「『共同通信記者ハンドブック第12版』では『〜族』は避け『〜人』にすることになっているが、例外もある。『マオリ族→マオリ人、マオリ』『マサイ族→マサイ人、マサイ』としている。ただ中国の少数民族の『チベット族』『ミャオ族』やミャンマーの『カレン族』、アフガニスタン・パキスタンの『カチ族』などでは『〜族』を使う。」
といった回答がありました。
その後、11月27日(土)の関西テレビ(フジテレビ)の「世界衝撃映像」の放送で、
「スルマ族」
という表現が出てきました。
「エチオピア最強部族の村にホームステイ」
という企画(=サイドスーパー)。スーパーとナレーションで「スルマ族」としていました。
一方、11月28日(日)放送・日本テレビの「世界の果てまでイッテQ」では、オーロラの写真を撮影に行くシーンで、ノルウェーの先住民族
「サーメ人」
というのが出てきました。これは「族」ではなく「人」でした。
2010/11/29
◆ことばの話1133「危険が薄い状態で」
4月7日のニュースプラス1で、日本テレビの藤井貴彦キャスターが、こう言いました。
「この映像はアメリカ軍が高いところから、危険が薄い状態で撮影したものです。」
「危険」は「薄い・濃い」でしょうかね。ニュアンスはよくわかるのですが。
普通は、「危険が」と言うと「ある・ない」でしょうね。
「危険性」だと「強い・弱い」、
「危険度」は「高い・低い」。
「薄い・濃い」というのはどういう時か。「疑い」は「疑いが濃い・薄い」と言いますね。だから、この場合も、本当はどう言いたかったかというと、
「危険がある疑いが薄い」
ということなのではないでしょうか。それを省略したということでしょうか?
このあたりの言葉の使い方は本当に難しいですねえ・・・。
あわせて、平成ことば事情893「需要は高い」もお読みくださいね。
2003/4/7
◆ことばの話1132「イラクの地名」
米英軍が、イラクの首都・バグダッドまであとわずか10キロのところまで進軍しています。バグダッド周辺の地図が、各新聞にも出ているのですが、それを見比べていて、おやっとと思いました。地名の表記が新聞によって「ビミョウに」違うのです。
(読売)ナシリヤ
(毎日)ナシリヤ
(日経)ナシリヤ
(朝日)ナーシリヤ
産経は載っていませんでしたが、朝日だけ、表記が違います。「ナ」のあとに長音符号の「−」が入っています。また、NHK「ナシリーヤ」と言っていると、Sアナウンサーが報告してくれました。日本テレビ系列の読売テレビにも先日、日本テレビから「イラクの地名表記に関する統一表」が送られてきました。それによると、「ナシリヤ」です。このほか、
(読売)ヒッラ
(毎日)ヒラ
(産経)ヒッラ
(朝日)ヒッラ
日経は載っていませんでしたが、毎日だけ、表記が違います。小さい促音の「ッ」がありません。これを見たSアナは、こんなことを言いました。
「おれ、学生時代に世界史がキライだった理由にこれがあるんですよね。教科書と参考書、地図によって地名の表記が違うじゃないですか。あれがややこしくて、馴染めなかったんです。」
わかるような気もします。外来語表記には二つ問題があると思います。一つは「綴り字(表記)を元にカタカナで示す」という「目の外来語」なのか、それとも「音(発音)を聞き取ってカタカナで示す」という「耳の外来語」かという問題。そしてもう一つは、「外国語でアクセントのあるところを、長音符号や促音で強調して示す」のかどうか、という問題です。後者は主に「耳の外来語」に発生する問題だと思います。そしてこれが、今回の問題のポイントです。
「ナシリヤ」「ナーシリヤ」に関して言うと、おそらく「ナ」のところにアクセントが来るんでしょう。だから朝日は「ナー」と伸ばす発音表記をとったのだと思います。NHKの「ナシリーヤ」は、「リ」のところにアクセントが来るとした解釈です。もしかしたら、地域によってアクセントが違うので、現地では「ナシリーヤ」と言い、バグダッドでは「ナーシリヤ」と言い、米英軍は「ナシリヤ」と言っている、とかそういった事情があるのかも知れません。
いずれにせよ、同じ地域を指すのに何通りもの呼び名があるのは、読者、視聴者にとってはわかりにくいことではあります。できたら、日本のマスコミでは統一したいところなんですけどねえ。
2003/4/8
(追記)
2003年11月29日、イラクで亡くなった奥克彦大使が、生前ホームページに書き綴ったものが、『イラク便り〜復興人道支援221日の全記録』(産経新聞社)という本として出版されました。その中で、奥大使はイラクの地名を次のように記しています。
「サマーワ」
「ナーシリーヤ」
また、人名は、
「サッダーム・フセイン」
としていました。
ご冥福をお祈りします。
2004/2/26
(追記2)
2004年7月28日、イラク北部の町で、6月にイラクへ主権委譲してから最大規模のテロが起き、少なくとも70人以上が死亡しました。(日本時間の7月29日午前5時20分現在)このテロが起きた町の名前の表記が、新聞によって違いました。
(読売)バアクーバ
(産経)バアクーバ
(朝日)バクバ
(毎日)バクバ
(日経)バクバ
おそらく「バ」が少し長めで「ア」と言っているように聞こえ、さらに「ク」にアクセントがあるので、読売と産経は長音符号を使っているのでしょう。そういう意味では、読売と産経は「耳から入った音」で外国語をカタカナ表記しようとしています。一方、朝日・毎日・日経は「目から入った外国語」を日本語でカタカナ表記しようとしているのではないでしょうか?ちなみに日本テレビ系列の放送原稿では、
「バクバ」
でした。
2004/7/29
◆ことばの話1131「従軍記者」
イラク戦争を中継で伝えてくる日本人記者。イラクの首都バグダッドに残って報道しているのは、フリーのジャーナリストの方々です。周辺国からは、各マスメディアに所属している記者が伝えています。そんな中、進軍するアメリカ軍に同行して取材中継している女性記者、日本テレビの今泉浩美記者が「従軍記者」として注目を浴びています。
10年ほど前、系列の海外研修に参加した時に、今泉記者と一緒だったことがあったのですが、その彼女が連日イラクから情報伝えてくる姿を見ると、頑張っているなと思うと同時に、無事で・・・と願わずにはおれません。
で、その彼女のように軍と行動をともにしている記者を
「従軍記者」
と呼んでいるのですが、NHK放送文化研究所の原田さんから、
「NHKでは『同行記者』と呼んでいる。『従軍』という言葉を使うのはどうか」
というメールをいただきました。
なるほど。従軍記者と同行記者ではずいぶんニュアンスが違いますね。Googleで検索してみました。
従軍記者・・・2310件
同行記者・・・1710件
やはり「従軍記者」の方が馴染んでいるようです。「同行記者」には「戦争」とは関係ないイメージがありますね。記事を見ても「首相の同行記者」というようなものが多いように見受けられました。「戦争」というキーワードも加えて調べてみましょうか。
従軍記者、戦争・・・1230件
同行記者、戦争・・・・273件
「従軍記者」は約半分になりましたが、「同行記者」はさらに激減して7分の1になりました。当然と言えば当然ですが、「従軍記者」の方が、戦争との関わりは深いようです。
ちょうど読んでいた武田徹著『戦争報道』(ちくま新書2003,2,20)の第2章「ベトナム戦争の報道」に出てきたハルバースタム、アーネット、岡村昭彦、開高健といった人物を描いた文章の中に、「従軍取材経験」「従軍して初めて軍事作戦について学んだ」「従軍記者」といった表現とともに、岡村の『南ヴェトナム戦争従軍記』『続南ヴェトナム従軍記』(岩波新書)といった著書のタイトルにも「従軍」が使われています。
そしてタイミングよくというか、 今日(4月8日)の毎日新聞の「めでぃあ&メディア」欄の「開かれた新聞委員会から」で、
「イラク戦争のエンベッド取材の実態」
というテーマが載っていました。「エンベッド取材」というのは、初めて耳にした言葉ですが、説明によると、
「米軍部隊と寝食を共にするエンベッド(埋め込み)取材」
のことだそうです。これはまさに「従軍」ですよね。今回、毎日新聞は3月11日の紙面でこの取材のルールについて説明しているそうです。
「従軍」は「軍に従う」わけですから、どうしても「その従っている軍」の側の情報に偏りがちになりますし、いろいろな制限も設けられます。そのあたりを読者・視聴者も判断しながら情報に接する態度が求められるのではないでしょうか。
2003/4/8
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