◆ことばの話890「山椒って・・・」
「黒豚の肉は黒い」と思っていた、入社2年目のSアナ。その後も飛ばしています。
先輩3人に連れられて行った飲み屋での会話。
「今日のロケはどうだった?」
「いやーびっくりしました。山椒って・・・・魚じゃなかったんですね!」
「・・・ごめん、何を言ってるのか、わからないんだけど・・・。」
よく聞くと彼は「山椒」は「山椒魚」を乾かして、かつお節のように砕いて粉にしたものだと思っていたということです。そもそも「山椒魚」は魚じゃないじゃない。両生類でしょ。その後もさらに続きます。
「おまえ、ヘクトパスカルって知ってるか?」
「・・・あの・・・あれですよね。あの法則・・・。」
と言って彼は右手の親指と人差し指、中指をX軸・Y軸・Z軸のような形にしました。
「法則??それがヘクトパスカルとなんの関係があるねん?」
「いや・・あの・・・違いましたっけ。」
「違うやろ。まあいい。その指の形の法則は何や?」
「何って・・・フラミンゴの・・・」
「それも言うなら、フレミングや!!」
・・・やめときましょか、もう。彼の名誉のために。え?まだ聞きたい?じゃあしゃーないな。
「ヘクトパスカルって言うたら、ほら、台風の時とかに出てくるやろ。」
「ああ!」
「じゃあ、台風のときの気圧は、何ヘクトパスカルぐらいや?」
「え・・・・10・・・・・ぐらい」
「なにいいいいいい!」
「いや・・、1・・・ヘクトパスカル・・・」
ものすごい台風がS君に襲い掛かったのでした。
その後、彼1人に3人の先輩がかかりっきりで、
「年間の祝日(休日)の名前」「47都道府県の名前」「日本三景は?」「日本三名園は?」などといった「常識クイズ」を2時間にわたって特訓したのでした。その中で「野菜の名前を思いつく限り挙げよ」といった問題に対してS君は、
「はくさい、レタス、にんじん、グリンピース・・・・八宝菜。」
と答えたのでした。
「八宝菜!?おまえ“八宝菜”って何か分ってる?」
「え、でもホラ“あんかけ”がかかっていて・・・野菜でしょ?」
「いろんな野菜が入った中華料理なの!」
「そうだったんですか!」
翌日。
前日と同じ質問を彼にしたところ、答えられませんでした・・・・。
はあ〜。教育というものは難しいものですねえ・・・・。
さらに。
「そばは何から出来てる?」
「そば・・・ですか。白い粉・・ですよね・・・・。」
「・・・じゃあ、うどんは?」
「え?そばと一緒じゃあないんですか?」
「・・・じゃあ、ラーメンは?」
「・・・ラーメンは・・・・・麺。」
「じゃ、質問変える。日本三景の安芸の宮島は何県にある?」
「あ、これはぼく、広島に修学旅行で行ったんですよ、安芸の宮島。・・・山口県?」
おいおい、今、広島に行ったって言ったじゃない!
「・・・バターは何で出来てる?」
「え?・・・チーズ」
「なに?聞こえないよ。」
「チーズ」
「なんだって?」
「・・・チーズ」
「なにおお!?じゃあ、チーズは?」
「・・・北海道?」
「北海道だああ??」
ここまで来ると、何を言ってるのか、よく分りません。その前から何を言ってるかよくわからないのですけど。もしかしたら、「連想ゲーム」かな?誰もそんなことをしろなんて、言ってないのだけれど。
「じゃあ、豆腐は何から出来てる?」
「・・・とうにょう?」
「糖尿!?」
豆腐を食べて糖尿になるなんて、初耳です。
「いやいや、『とうにゅう』です、豆乳。あの薄い膜が・・・。」
「そうじゃなくて原料は何か?って聞いてるの。」
「あ、・・・だいず。そう、大豆ですよ。」
ようやく正解が出ました。
さらに、M部長補佐からたった今、メールが入りました。
「Sに『いろはにほへと』を言わせたら、なぜか『よ』で止まってしまい『これで全部ですよね!』と勝ち誇ったような爽やかな笑顔をしやがった。」
その後本人に確認したところ、
「『いろはにほへとちりぬるよ』と言った。」
そうです。ハア〜・・・。
・・・・Sアナ、入社2年目。なんで、去年の間に気付かなかったんだろ。
(その前に、入社試験の時に、なぜ気付かなかったんだろ?)
2002/10/22
(追伸)
毎日毎日、こんこんと湧く泉のように、Sアナ(・・ええい、一回言ったし、もう言っちゃえ!)清水アナウンサー・通称シミケン!は、新しいネタを提供してくれます。
今日は「テレビヤンネット」という番組の収録を、アンティークのお店で行なったそうなのですが、そこに出演したシミケン、先輩女性アナに対して、
「へぇー、このアンティーク、全部新品ですか?」
ほーら、また「なに言ってるのか分らない」発言が出ました。
どうも最近は「わかってて、受け狙いに言っているフシ」も見えてきましたね。要注意!
でも今回のはおそらく、深い意味はありません。「アンティーク」の意味を知らなかっただけです、きっと。
こんな話をしていると、みんな大笑いをした後に、「他の人でこんな話もあるよ」と話し出します。「他の人の話」と言いながら、「自分の話」だったりするわけですが。
「某公営放送大阪局にいた女性アナウンサーのMさんが天気予報で、『寒気(かんき)団』と読むべきところを『さむけ団』と言った」
とか、
「『大陸から張り出した高気圧』と読むべきところを、『大阪から張り出した高気圧』と読んでしまった」
とか、あと「思い込み」で、
「『覆面パトカー』というのは、『覆面をしたおまわりさんが乗っているパトカー』だと思っていた」
という人とか、遠足で大山(だいせん)に行った時に、バスガイドさんが、牧場にいるジャージー牛を指差して「皆さーん、普通の白い牛乳は、白に黒い模様のあるホルスタインから搾れますが、あの茶色いジャージー牛からはカフェオレのような牛乳が出るんですよー」と言ったギャグを、クラスの中で一人だけ真に受けて「そうなんだぁ!」と声を上げた人だとか、とにかく、みんないろんな失敗をしているようです。
これだけ他人に「笑う喜び」を与える人は、実はとても素晴らしい人間なんじゃないか?
(一応「?」マークは付けておきます。)とも思えるようになってきました。
だからといって、シミケン、このままで良いということではないのだぞ。
今後もシミケンを、しっかりと見守っていきたいと思います。そして、ネタを拾っては、ご報告いたします!
2002/10/24
◆ことばの話889「お疲れさまです」
ニュースの本番が終わって副調整室(ニュースサブと呼んでいます。あるいはNサブ。)に
「お疲れさまでしたぁ。」
と挨拶に行きました。すると、年輩の技術担当のDさんが近づいて来て、
「ちょっと教えて欲しいんやけど・・・。」
と話し掛けてきました。
「最近若い人が、その日会社で初めて会った時でも“お疲れさまです”って言うんやけど、普通この業界では“おはようございます”やないやろか?“お疲れさまです”は、仕事が終わって帰る時に言うんやないの?」
そう言われてみればそうですね。初めて会った時は本来「おはようございます」ですけど、「お疲れさまです」と言う場合はありますね。それは、
「その人は自分よりも先に仕事をしていて、既に仕事をしていたことに敬意を表して“お疲れさまです”という言葉になったのではないか」
とも思うのですが、Dさんが言うには、
「俺は来たばかりでまだ疲れていないのに、“お疲れさまです”というのは、“年いってるから疲れているように見えるのかな?”というふうに邪推してしまう。」
ということなのです。
うーん、それは考え過ぎのような気もするな。
でもいきなり朝から「お疲れさまです。」は、やはりヘンな気きもします。
ヘンな気がすると言えば、前に書いた(平成ことば事情516「いまどきのおはようの挨拶」)けど、今ドキの大学生は学校で友達とすれ違った時(その日初めて会った時)に、いきなり、
「バイバーイ!」
と言うらしいのですが、それに感じるのと同じような違和感かもしれません。
2002/10/25
◆ことばの話888「ビミョー」
最近よく目にする英会話教室「NOVA」のコマーシャルで、アニメのピンクのウサギが音楽に合わせて踊っているものがあります。
そしてそのウサギは、その様子を見ている若者に向かって、
「かっこいい?」
と聞くのですが、それに対する彼らの答えは、
「ビミョー」
という一言です。最近この「ビミョー」をよく耳にします。このコマーシャルは英会話教室のものなので、英語の字幕が下に入ります。「ビミョー」の時には、
「I suppose・・・・・・」
という字幕が出ます。直訳すると、
「私はそう、思うけど・・・・」
という感じでしょうか。それを「ビミョー」と言わせるのは、彼が若者で、その若者が使っている言葉だからでしょう。確かにそのウサギは、お世辞にもかっこいいとは言えないのですよね。だからといって、「カッコ悪い」というのもウサギに悪い気がする。しかし文句なしに「かっこいい」と言うのは、ためらわれる。そんな時に、かっこいいかカッコ悪いかという判断を中断して、
「ビミョー」
というのは、ある意味で消極的な敬語、待遇表現なのではないかという気がします。
「かっこよくは、ないよ」
としっかり言ってやる勇気も必要かとも思うのですが、
「あまり関係の深くない人に関わり合うのは、自分にとって何の得にもならない」
という判断を下している、他人に背を向けた内向きの姿勢の現われのような気もします。
先日、大阪市内のある中学校の総合学習授業の一環として、ビデオ制作の実習授業を教えに行ったのですが、その時、生徒は自分たちの班の作ったビデオは見るのですが、「他の班が作ったビデオを見るから集まれ」と言っても、自分の机から動こうとしないのです。他の人たちのビデオを見ることで参考になったり、勉強になるのは言うまでもないことですし、そういう経験が出来るからこそ、「学校」という教育の場があるのだと思います。自分たちのやったものしか見ないのであれば、自宅でインターネットを使って先生と一対一の教育をやっていれば十分です。
この学校の現状が、他の学校でも「当たり前」のことだとすれば、中学校教育と中学生は、ちょっと困った状態になっていると言わざるを得ません・・・。
まさに「ビミョー」な状態です。
2002/10/24
(追記)
これを書いてから1年9か月。もう「ビミョー」は定着してしまいました。
『週刊文春』の2004年7月22日号の「阿川佐和子のこの人に会いたい」542回のゲスト、歌手の石川さゆりさんが、こんなことを言っています。
阿川「いや、可愛かったですっ!でも、ヒットしなかったのね。」
石川「ビミョ〜」(笑)
阿「何、微妙って?」
石「おばさんが使う『微妙』と、若い人の『ビミョ〜』と違うんですね。」
阿「あ、流行ってるの?若い人のビミョ〜はどういう意味なんですか?」
石「答えるのが面倒くさいとか、どうでもいいやというとき、すべて『ビミョ〜オ〜』、これで終わりなの。」
阿「あっ、そう。初めて聞いた。」
石「ダル〜い感じで言うんです。」
阿「お嬢さんがいらっしゃるからご存知なのね。どういうときにお嬢さんに『ビミョ〜オ〜』って言われますか。」
石「『私、ちょっと痩せたと思わない?』『ビミョ〜オ〜』って。」(笑)
という具合に、昭和33年生まれの石川さん(今年46歳)は娘さんから「ビミョー」という言葉を学んだようですね。
2004/7/16
◆ことばの話887「赤十字」
北朝鮮から来日帰国している拉致被害者5人に、北朝鮮赤十字会の男性が2人同行しています。それぞれのふるさとへは付いていかずに、東京にとどまっているのですが。このニュースを見ていたSキャスターが、こんな事を言いました。
「北朝鮮も赤十字なんですね。」
「そりゃあ、赤十字はあるだろ。まあ北朝鮮の場合は、政府から独立した組織では、ないんだろうけどね。」
「いえ、そういう事ではなくて、ほらイスラム世界の場合、赤十字って、組織は一緒なんだけど『セキジュウジ』じゃない名前だったでしょ、あれ、なんて言いましたっけね。」
「ああ、そう言えば、なんか聞いたことがあるね。」
「それと同じように北朝鮮では名称が違うのかな?と思って。」
「じゃあ、調べてみよう。」
と言いながら、インターネットの検索エンジンに、
「イスラム、赤十字」
というキーワードを入れると、あっと言う間に答えが分りました。こういう時に、パソコンの威力のすごさを感じますね。答えは、
「赤新月」
でした。つまり今からおよそ1000年前、ヨーロッパのキリスト教徒たちがイスラム・トルコ帝国に攻め入った「十字軍」の「悪夢」が、未だにイスラムの人たちの頭の中には残っているようで、「赤十字」、つまり赤い「十字」のマークを見ると、
「敵だ!」
と感じるんだそうです。あのマークは、スイスの国旗の色をひっくり返したもので、「十字架」とは直接関係ないそうですが、そんなことは彼らにとってはまったく関係ないんでしょうね。感情的なものですから、頭でわかるとか、そういう事じゃないのでしょう。それで、赤十字と同じような救命活動を行うもののマークは、
「赤い新月」(細い三日月)
で、名前は「赤新月」。ちなみに、イスラム教徒とキリスト教徒が共に存在する地域での救急車には、どんなマークが描かれているのでしょうか?そんな問いにもインターネットは答えてくれました。
「赤い十字と三日月(新月)が並んで描かれている」
のだそうです。
「ところ変われば・・・」
なんですね。
2002/10/23
(追記)
2004年5月7日の読売新聞の「ことばのファイル」で「赤十字」を取り上げていました。
4月22日に北朝鮮の竜川(リョンチョン)駅で起きた大規模な爆発事故で、朝鮮赤十字会から支援を要請された国際赤十字社は125万ドルの緊急支援アピールを発表したことに関連しての「赤十字」の説明ですが、それによると、国際赤十字社の正式名称は、
「国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)」
と言うんだそうです。181か国が加盟しています。そして、あす、5月8日は「世界赤十字デー」。1901年に第1回のノーベル平和賞を受賞した赤十字の創設者、アンリ・デュナンの誕生日を記念して、この日になったと言うことです。
2004/5/7
◆ことばの話886「きみず」
秋の健康診断の季節です。
胃のレントゲンの申し込み用紙に、問診のアンケートがありました。それを読んでいると、こんな文章が出てきました。
「最近、胸やけ、げっぷ、きみずがありますか?」
胸やけもげっぷも特にないけど、なんだ「きみず」って?「しみず」なら後輩のアナウンサーにいるけど。周囲の人に聞いてみても、
「さぁー??」
と言うばかり。きみず?想像するに、黄色い水?
辞書を引いてみました。まず『新明解国語辞典』・・・・載っていません。次に『新潮現代国語辞典』。あ、ありました。見出しが「オウスイ」を見よ、となっています。その「オウスイ」を見ると、
「オウスイ(黄水)」=「胃から吐き戻す液。胆汁が混じっているため、黄色みを帯びる。きみず。おうずい。」(『新潮現代国語辞典』)
わかりました、「オエーッ」というヤツですね。やっぱり。『広辞苑』も引いてみました。
「おうずい」=胃から吐き戻す黄色い水。胆汁。(例)平家物語(6)「おうずいつくもの多かりき」(『広辞苑』)
「ずい」と濁ることもあるのですね。
インターネット検索では「黄水」は、1万6300件も出てきましたが、中国語のホームページが多かったです。「きみず・黄水」で検索すると、わずか10件。あまり使われていないのではないでしょうか。専門用語かな?
2002/10/23
(追記)
そう言えば、
「きしる」
という言葉は、子供の時から聞いて使っていました。ころんで膝小僧などをケガをした時などに、膿んだ傷口から出てくる半透明の黄色い液のことです。薬剤師の母から、
「それはリンパ液」
だと教わりましたが、『広辞苑』にはこの言葉は載っていません。『日本国語大辞典』を引いてみると、載っていました。ただし漢字は「黄汁」ではなく、
「生汁」
でした。しかも、「方言」と書いてあります。使われている地域は、
滋賀県彦根市、大阪府泉北郡、兵庫県加古郡、奈良県、宇陀郡、徳島県、高知県
で、意味はやはり「リンパ液」でした。うちの母は三重県上野市出身ですが、滋賀県の病院に勤めていたこともあるので、甲賀・伊賀地区でも使用されていたのでしょう。
それと、もう一つの意味として、
「精液」
の意味が載っていました。これも方言で使用地域は、「奈良県北葛城郡」だそうです。
2002/10/31
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