◆ことばの話450「年賀状印刷承ります。」

10月中旬、会社への道を急いでいると、いつも通るスーパーの壁面にこんな文字が記された大きな宣伝の幕がかかっていました。



「年賀状印刷承ります。12月26日まで。」



えっ?もう年賀状?まだ10月なのに・・・。

今年も残すところあと・・・まだ2か月以上あるじゃないか。ちょいと早すぎるんでないかい?もちろん、少しでも早くお客さんを確保しようということなんでしょうけど。

その背景には、ここ数年年賀状を出す人自体が減ってきていることや、印刷には出さずに自分のパソコンを使って年賀状の印刷をする人が急激に増えてきていることがあるんではないでしょうか。まだ自分のパソコンで印刷せずに、印刷屋さんに頼っている私などは、印刷屋さんにとっては「最後のお得意様」という感じなんでしょうね。

20年ほど前に「プリントごっこ」が出てきて、印刷や手書き・版画の年賀状が減った時代もありました。ここ数年、プリントごっこで作った年賀状をもらうことは大変珍しくなりました。それと同じようなことが、印刷の年賀状にも起きているのでしょうね。

まあそうなると、かえってそちらの方が珍しくてよいのかもしれませんけど、個性があって。

そう言えば、いつの頃からか10月初旬から翌年の「手帳」が文房具店に並ぶようになりましたね。私も、もう購入しました、2002年の手帳。今日(10月26日)、本屋さんに行ったら、来年のカレンダーのコーナーが出来ているではないですか!?は・や・い!

うーむ、「ドッグ・イヤー」効果はこんなところにまで?来年はイヌ年ではないけど。(ウマ年ですね。)それともここ数年、地震に不況に凶悪事件と、イヤなことばかり続くので、早く旧い年は終わって、新しい年を迎えたいというみんなの気持ちが強くなっているのでしょうか。



今年の後半は(もう振り返ってるけど)、狂牛病に同時多発テロ、それに続く「報復」に「炭疽菌テロ」と、新しい年を祝おうなんて気持ちは、今のところこれっぽっちも湧かない。今年を終えることで、毎日を過ごすことで精一杯なんですけどねえ。

来年は、待ちに待った日韓ワールドカップサッカーの年なのに、全然実感が湧かないなあ。チケットも手に入らないし。

ハアー。

あと一週間ほどで、お年玉つき年賀ハガキの売り出しです。

読売テレビ前の木々も、少し色づき始めました。草々。("くさくさ"と読まないようにして下さい。)

2001/10/26


◆ことばの話449「イノブタ」

夕方のニュース番組で、和歌山県でイノブタの赤ちゃんが生まれたという映像を流してました。イノシシの赤ちゃんのウリボウも可愛いですが、イノブタの赤ちゃんもかわいいですね。

それを見ていた4歳の息子が「あれなに?ブタ?」と聞くので、

「あれはね、イノブタって言うねん。お父さんがイノシシでお母さんがブタなんだよ。」

と応えると、横で聞いていた妻がいきなり、「ひどいっ!!」と怒るのです。何がひどいのかと聞くと、どうやら、「お母さんがブタなんて、あてつけだ。」ということらしいのです。そんな事を言われても・・・・。めげないお父さんは、

「じゃあ、お父さんがブタで、お母さんがイノシシなんだよ。」

と言ったところ、

「・・・それでもひどい・・・」

別にうちの家庭のことを言ってるんじゃなくて、イノブタの話なのに・・・。

どう、せいっちゅうねん!!

翌日の朝の番組で、またイノブタの赤ちゃんの映像を流したところ、視聴者の方からメールがきました。

「イノシシとブタを交配させると、イノブタですよね。では、イノブタとブタを交配させると、イノブタブタで、イノブタとイノシシを交配させると、イノイノブタでしょうか?イノブタとイノブタを交配させると、イノイノブタブタになるのでしょうか?」

・・なんてバカらしい・・・とは思わずに、調べてみました。イノシシとブタのどちらがオスでどちらがメスかも興味があったし。

確か、和歌山県すさみ町には「イノブータン王国」というのがあったはず。そこで、すさみ町役場の観光課に電話してみました。謎は、一気に解けました。

「オスがイノシシで、メスがブタです。」

「決まってるんですか?」

「はい。」

「その逆はないんですか?」

「ありません。オスのブタはメスのイノシシには行きません。」

「そうですかあ・・・。で、イノブタとブタや、イノブタとイノシシが交配して、イノブタブタとか、イノイノブタとかにはならないんですか」

「そういうことはしません。一代限りです。」


キッパリ。

そうかあ、世の中そういうふうになっているのね。

で、イノブタとイノブタが交配したら「イノイノブタブタ」になるのか?ということについて、よーく考えてみると・・・それで生まれるのは「イノブタ」ではないでしょうか。普通に考えると、当然そうなりますよね。でも、一代限りだと、そうはならないから、不思議ですね。

2001/10/26


◆ことばの話448「骨をうめる」

今期限りでの退団を表明した、オリックス・ブルーウエーブの仰木彬監督のニュースを、A局でやっていました(10月22日)。見慣れない若い男性アナウンサーがそのニュースを読んでいました。その中で、仰木監督の言葉として、



「神戸に骨をうめる覚悟で・・・」



と読んでいました。

なに?骨をうめる?

これは明らかに「骨をうずめる」の間違いでしょう。

「うめる」も「うずめる」も漢字で書けば「埋める」ですから、このアナウンサー君は素直に(?)「うめる」と読んでしまったのでしょう。きっと、先輩からお目玉を食らっていることだと思います。

しかし、「うめる」と「うずめる」だと、どう意味が違うのでしょうか?確かに同じような意味のようにも感じますね。

さっそく辞書(新明解国語辞典)を引いてみました。すると、



*「うめる」

【1】穴や窪地に何かを入れ、上を元のようにおおう。「壷を庭に埋める」(広義では「うずめる」と同義に用いられる)

【2】あいていた所を満たしたり欠けている所を補ったりする。「穴をうめる」「余白をうめる」

【3】欠けた部分を補って、元通りにする。「赤字(欠員)をうめる」

【4】 熱い湯に水を入れてぬるくする。



*「うずめる」

【1】そのものの存在が全く分からなくなるように、何かですっかりおおう。(広義では、「うめる」と同義にも用いられる。例、「宝を庭にうめる」「柱の穴をうめる」)「骨をうずめる」(=aその土地で死ぬ。b、定年になるまでその勤め場所で働く)「灰をかけて炭をうずめておく。「布団の中にすっぽりからだをうずめる」「紅葉が一面をまっかにうずめる」

【2】 (場所を)すきまなくいっぱいにする。「ノートを乱暴な字でうずめる」 (下線は、道浦による)


辞書にも、「骨を埋める」は「うずめる」と出ていますね。当然でしょう。

意味の違いで考えると、「うめる」は、あらかじめ穴のあいているか窪んでいるところに

何かを入れて平らにするのに対して、「うずめる」は必ずしも穴があいてなくて、平らなところの上にうずたかく積んでいっても良いということになりそうです。微妙な意味の違いが浮かび上がってきましたね。

言葉としては「骨をうずめる」を使うとしても、「骨を埋める」と漢字で書かれると、つい間違って読んでしまうこともありますよね。

そこで提案なのですが、先輩記者・デスクの皆さん、漢字で「埋める」と書くのではなく、ここは一つ「うずめる」とひらがなにしてやるか、「埋(うず)める」とルビを振ってやるとか、新人アナには優しくしてやってもいいかな?とも思います。

いずれにしろ、「骨をうめる」と読んだアナウンサー君は「"ず"抜けていた」ようです。

2001/10/22


◆ことばの話447「極めて安全性の高い牛肉」

狂牛病の全頭検査が始まって5日目。(10月22日現在。)検査で「シロ」と認定された牛肉が、スーパーや小売店に出回り始めました。

その牛肉を週明けの月曜日(10月22日)から販売し始めたスーパーの店長が、店員を集めての朝礼で、こう話している様子がニュースで流れていました。



「今日から、極めて安全性の高い牛肉を販売させていただきます。」



この「極めて安全性の高い牛肉」という一言に引っかかりました。

店長は、「安全」を強調するために、「極めて〜高い」という表現を使ったのでしょうが、なぜか私には「危険なもの」に聞こえたのです。

もし、店長が「安全な牛肉を販売」と言っていれば、特に引っかかることもなかったと思うのですが、この「極めて安全性の高い」という表現だと、安全性が「99,9%」ぐらいに聞こえます。相当安全性が高いのは確かですが「残り0,1%は、危険性がある」と言っているような感じがします。たんに「安全な牛肉」というふうに強調しない方が、「100%安全」という感じが私はするのです。

「100%安全な牛肉」

「安全な牛肉」

「絶対安全な牛肉」


というふうな言い方を店長がしなかった背景には、やはり店長の心の隅のどこかに、"一消費者"としての店長個人の、検査に対する不信感や、牛肉の安全性に関する不安感が、微妙に現れていたのではないでしょうか。

極めて個人的な感想として、そう、感じました。

2001/10/22


◆ことばの話446「映画欄のウルトラマン・コスモス」

(このところ暗い話題ばかりなので、こんなのも、たまにはいいでしょう。)

毎日、朝刊に載っていて、利用する人は結構注目している・・・というコーナーに映画と演劇欄があるのではないでしょうか。

大体、2段くらいで、どの劇場ではこの映画が何時・何時から上映している、という情報が、電車の時刻表のように載っています。これを見て、「今日は何を見に行こうかな?」なんて考える方もいらしゃるでしょう。

いかんせん、スペースが余り広くないので、映画のタイトルが長いと収まりきらないことがあるようです。

例えば、この夏話題となった邦画「千と千尋の神隠し」などは「千と千尋の」までしか書かれていませんし、ジャッキー・チェン主演の「ラッシュアワー2」は、「ラッシュア」とか「ラッシュ2」という表記。「ブリジットジョーンズの日記」は「ブリジットジョ」になってました。飯島愛原作の「プラトニックセックス」は「プラトニックセ」です。では、「アギトガオレ」は何でしょう?

正解は「仮面ライダーアギト」と「ガオレンジャー」の2本立てでした。

以上は今日(10月22日)の朝刊に載っていた映画の紹介でしたが、以前、こんなことがあったそうです。

「ウルトラマン・コスモス」という、最新のウルトラマンシリーズが映画化されたのですが、その映画の紹介で、やはり字数が多すぎたために途中までしか、タイトルを紹介できなかったんです・・・そう、「コ」までしか。

いいのかな、いいのかなぁ。子供向けの映画なのに。まあ、関西は全然大丈夫ですが、関東はまずいんじゃないのかなあー。つけといた方がいいんじゃないかなぁ、「スモス」。

でも、しょうがないですよね、字数が多すぎるんだから。

こうして、地球の平和は保たれたのでした。

2001/10/26

(追記)

その後、今年(2002年)になってから、なんとウルトラマン・コスモスの主演男優が、傷害・恐喝などの疑いで逮捕されるというショッキングな事件が起きました。テレビ番組も、この俳優の出演部分をカットして放送したり、映画も中止か?というふうなことがありました。この事件はその後意外な展開を見せて、この主演男優は不起訴処分となりました。そして、ウルトラマン・コスモスは復活となったのですが、そのニュースを伝えた各新聞(特にスポーツ紙)の見出しは、思ったとおり、

「帰ってきたウルトラマン(コスモス)」

でした。これだけ足並みの揃った見出しも珍しい。そうだよな、ボクらの世代が今、デスクになっていたとしたら、絶対思いつくよな。

そう思わせた出来事でした。

2002/7/20

(追記2)

4年半ぶりの追記です。2006年5月18日の毎日新聞に、
「ウルトラマン・コイン」
という見出しが。住友商事がウルトラマンのテレビ放映40年を記念した金貨と銀貨6種類を5月22日から限定発売するという記事でした。写真はその1オンス金貨が載っていました。図案はウルトラマンが腕を十字に組み、「スペシウム光線」を発射しているポーズのカラー貨で15万7500円。もう一つの図案(写真はないけど)は、4分の1オンスのカラー貨で「アタック光線」のポーズだそうです。アタック光線って・・・あれかな?宮尾すすむのようなポーズかな?4万7250円。金貨は各777枚。あれ?それだと、
「ウルトラセブン」
にならないか?フィーバーしてるってこと?なお、銀貨はウルトラマンとバルタン星人の対戦をデザインしているそうです。
この「ウルトラマン・コイン」、くれぐれも「・」を付け忘れないようにお願いします。
さて、ウルトラマンと言えばいろんな怪獣・怪人と対戦しましたが、その中の一つ、
「ダダ」
が、2006年11月3日の新聞の全面カラー広告に登場しました(朝日新聞)。ダダが全面広告にデーンと出てくると、けっこう気持ち悪い。何の広告かと言うと、
「スカパー!110」
で、
『「デジタルテレビ」ですぐに見られるスカパー!110 本日より3日間 タダ』
という広告でした。つまり、
「ダダとタダをかけたダジャレ」
です。でも、どこにもこの気持ち悪い怪獣(怪人)の名前(=ダダ)が書かれていないから、知らない人はそんなダジャレだということが分らない。しかしおそらく、
「それが分る世代がこの広告の対象」
なんでしょう。しかも、
「オヤジギャグ好きな世代がターゲット」
なんでしょう。ついつい、乗ってしまうところでした・・・って、これに書いてる時点で負けだね。アッチャー。・・・よく見ると、ウルトラマンが変身した時の写真も小さく載っていて、ウルトラマンのセリフは、
「詳しいお問い合わせ、お申し込みは・・・・」
ウルトラマンの右手のこぶしには、
「電話の受話器」
が、しっかりと握り締められています。やられました・・・。
2006/12/12


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