◆ことばの話365「チャンネルを回す」
先日、東京に行ったおりに、有楽町の「そごう」のあとに入った「ビックカメラ」を見てきました。1階をぶらっと見て回っただけですが、なかなか楽しいですね。特にDVDと平面テレビのあたりは、思わず「買おうかな?」と思うくらい、うまくディスプレーされていました。テレビも液晶で薄くなったりデジタルになったり、もう大変ですが、お客さんも頭が薄くなったりリストラになったり、こちらももう大変。
さて、そのテレビのチャンネルについての表現なんですが、あなたは、いわゆるザッピングをする時や、チャンネルを2→4→6→8→10というふうにする時に、チャンネルを「どうする」と言いますか?
昔は「チャンネルを回す」と言っていましたが、(本当に回していたのは「ダイヤル」だったと思うのですが、)最近は皆リモコンになったので、「回す」ものがなくなってしまった現在、「チャンネルを回す」という表現そのものがなくなってきていると思われます。
同じようなものには、昔の電電公社から借りていた黒い電話があります。電話を掛けるのは、もちろん「ジーコ、ルルルルルル、ジーコ、ルルル・・・。」というふうに「ダイヤルを回して」かけていました。今はケータイで、しかも記憶させた、相手の電話番号を選んで1回押すだけですから、「ダイヤルを回す」は死語になっています。フィンガー5の曲の中に「ダイヤル回すよ」という歌詞があったような気がしますが、あれはもう30年近くも前の曲なんですね。納得。その電話の「ダイヤルを回す」に比べると、まだテレビの「チャンネルを回す」は、完全に死語にはなっていないようですが、それも時間の問題でしょう。
回すダイヤルは、一つにつながっていますが、プッシュするボタンは一つ一つバラバラです。ダイヤルやチャンネルは回すと戻って来ますが、プッシュボタンは行ったっきり。
などと書いていると、なんだかちょっと淋しくなってきました・・・。
2001/7/13
◆ことばの話364「エステ店」
先日の夜のニュースで、
「今日午後、大阪・ミナミのエステ店に5人組の男が押し入り、包丁で店長を切りつけて、現金10万円の入ったバッグを奪って逃走しました。」
というニュースがありました。この中に、
「エステ店」
という言葉が出てきました。それを耳にした時に、
「それも言うなら"エステティック・サロン"だろうが。いくらなんでも短くしすぎだ!音の上でも"テ"が続いて耳障り。」
と思ったのですが、調べてみるとちょっと状況は違ったのです。
つまり、その「エステ店」とは、女性がきれいになるために行くような「エステティックサロン」ではなく、男性が通うような「風俗店」だったようなのです。私も行ったことがないのでわかりませんが、情報通の人に聞いてみると、「垢すり」などのほかにもいろいろとサービスをしてくれるそうです。最近、「韓国エステ」のほかにも「香港エステ」なるお店もあるそうです。女性が行く「インドエステ」とはまた違うんでしょうね。なんでアジアの国のエステばっかりなんだろうか?
「エジプトエステ」とか「アメリカエステ」「スペインエステ」「イタリアエステ」なんて聞いたことがないし、自分の国の「日本エステ」「ジャパンエステ」も聞いたことがないぞ。ここでもまた「アジアン」がはやっているみたいですね。そのうち「エスニックエステ」とか「無国籍エステ」あるいは「多国籍エステ」なんてえのも出てくると見た。(来ないか。)
えっ?「エステ店」はどうなったかって?その後のニュース原稿には出てきませんが、「韓国エステ」「香港エステ」という形では出てきてますよ。
2001/7/13
(追記)
また出てきました、「エステ店」。今度は「台湾式エステ」(あるいは「台湾エステ」)だそうで、そこに強盗が押し入ったというニュースでした。(=10月17日)
「エステ店」は「テが続くから気持ちが悪い」と書きましたが、「エステティック・サロン」でも「テ」(と「ティ」だけど)が重なっています。だから、「テ」が重なるから気持ちが悪いのではなくて、「(エ)ステテン」という音の響きが「スッテンコロリン」というふうな音を連想させて滑稽なので違和感があるのではないか?とも思いました。
エステテンコロリン、スッテンテーン。
2001/10/18
(追記2)
新聞にも「エステ店」が登場しました。10月27日(土)の読売新聞の社会面に、
「連続エステ強盗容疑、5中国人を逮捕〜大阪府警・警視庁」
という大きな見出しが。リード部分と本文を読んでみると、
「全国で続発しているアジア系風俗エステ店を狙った強盗事件で・・。」
「東京のエステ店に押し入ったとして・・・。」
「大阪でもエステ店を襲った。」
「東京都大田区の韓国エステ店に押し入り・・・。」
「こうしたエステ店を狙った強盗事件は約二年前から発生。」
「浪速区の中国エステ店に押し入った・・・。」
「新幹線を使って、エステ店を襲ってはすぐに逃走するヒット・アンド・アウエー方式で犯行を繰り返した・・・。」
と「エステ店」が7回も出てきました。この「エステ店」の説明も記してありましたので、 書き写しますね。
アジアの国名などを冠したエステ店は約三年前から東京や大阪で現れ、外見は一般のマッサージ店と変らないが、不法残留の外国人女性を雇っているケースが多く、「風俗サービス」を売り物にしている。
というものだそうです。やはり・・・。また、犯行グループによると、「従業員のほとんどは女性で、不法残留していることが多く、その弱みから被害届を出しにくいと思った」
というのですから、相手の弱みを突いた、卑劣な犯行ですね。
2001/10/28
(追記3)
今日(3月11日)、テレビ朝日のお昼のニュースで「エステ店」を使っていました。無許可で「プラズマ光脱毛」というのをやっていた人がつかまったというニュースでした。
2003/3/11
◆ことばの話363「節水に注意」
関東は梅雨が明けたそうで。関西はまだですが、今週初めからセミが鳴き始めました。
3歳10ヶ月の息子に「セミが鳴いてるねえ。」と言うと「もう、梅雨あけたんかなあ。」と答えました。ぬぬん・・・やるな、おぬし。もうまぎれもなく、夏です。
今年の梅雨は、近畿ではあまり雨が降らなかったような気がしますね。
さて、そういう状況を受けて、先日の「ニューススクランブル」の天気予報で、お天気キャスターの小谷さんがこう言いました。
「節水にご注意下さい」
ん?なんかヘンだぞ!?
「節水に注意」したら、節水しなくなるんじゃないかな?
それも言うなら、
「節水に留意」「節水を心がけましょう」「水の無駄遣いに注意」
ではないでしょうか。
小谷さんは、そのあとさらに、
「寝苦しい夜になりますので、寝不足にご注意下さい」
とも言ってました。これはあまり私はヘンだと思わなかったのですが、一緒にテレビを見ていた先輩が「なんかヘンな表現!」と指摘しました。
ということで、今回はこの「○○に注意」あるいは「に」がない形の「○○注意」という形について考えてみました。
この形の標語は結構ありますね。
【1】「飲みすぎに注意」「食べすぎに注意」「スピードに注意」「寝過ごしに注意」「遅刻に注意」「太りすぎに注意」「働きすぎに注意」「遊びすぎに注意」など。
【2】「段差に注意」「猛犬注意」「陽射しに注意」「火気注意」「子どもに注意」「チカン注意」「飛び出し注意」などなど。
とりあえず2種類に分けましたが、いずれにせよ、「○○注意」の「○○」には、「注意をはらうべき(危険な)もの」が入ります。
そして、【1】は、その「危険なもの」が「自分の行為」で、「本来あるべき姿ではない状態のもの」が入ります。「〜すぎ」という、「過剰な行為」が入ることが多いようです。
【2】は、「(自分の)行為」ではなくて「注意を払う対象」が入るでしょう。
「節水注意」は、「節水」という言葉自体が「水を節約する」という「行為が含まれた言葉」=「行為」に含まれますから、【2】ではなく【1】。
しかしこの【1】は「自分の行為を、そうしないように」注意!という意味合いになっていますから、ここに当てはめると「節水注意」は「節水しないように注意しましょう」と言う意味になってしまい、やはりヘンなんですね。「水に注意」とすると、「水資源を大切に」と言う意味ではなくて、「おぼれないように注意」「出水に注意」と言った感覚になります。
また「寝不足注意」がなぜおかしいか?
うーん、やはり私はおかしいとは思わないんですよね。「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」で、「〜すぎ」も「〜不足」も同じように、【1】の「〜しないように」の範疇に入るんじゃないかなと思うのですが。
ということで「細かいイチャモンつけに注意」と言われる前に、この辺で。
2001/7/13
◆ことばの話362「退社しました」
「カマタさんいらっしゃいますか?」
アナウンス部にこんな電話がかかってきました。カマタさんは数年前に定年で会社を辞められた先輩です。そこで、
「カマタは、もう数年前に退職しましたが・・・。」
と答えると、「はあ、そうですか。失礼しました。」という答え。
電話の用件はこれですみましたが、このやりとりを聞いていた周囲の人から、
「"退職"ではなく"退社"じゃないのか?」
という声が上がりました。
「いや、"退社"は会社から退くことも言いますので、間違わないためには"退職"でいいんじゃないですかね。"出社"と"退社"が対(つい)ですから。」
と答えたものの、念のため辞書を引いてみました。
「退社」 |
【1】 |
社員がその会社をやめること。
(例)「昨年退社しました」反対語=入社 |
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【2】 |
一日の仕事を終えて社員が会社から出ること。
(例)「定時に退社する」反対語=出社 |
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【3】 |
社団法人の構成員たる社員が、その法人から脱退し、法人との間の関係を絶つこと |
とありました。(広辞苑・第五版)また、「退職」は、
「退職」現職を退くこと。(例)「六○歳で退職する」反対語=就職
なるほど。確かに「出社・退社」で対(つい)ですが、「入社・退社」も、やはり対ですね。それと「退職」の対語が「就職」。言われてみれば、当然といえば当然ですが。
ちなみに最近、大学生の間で使われている略語で「就活」(アクセントは関西では「シューカツ」LHLLという中高アクセント)というのがあるようですが、これは、「就職活動」の略なんだそうです。
まあ、結局、結論を言うと、「退社でも退職でもよい」ですが、「退職」の場合は、【2】の「退社」の意味との混同を避けることが出来るというメリットがある、ということでしょう。「定年退職」は聞くけど、「定年退社」は・・・聞くこともあるな。結局「職」を退くのか「(会)社」を退くのか、その意識の違いですかね。まっ、わかれば、どちらでもいいんですけどね。
2001/7/9
◆ことばの話361「中水」
7月7日、神戸市営地下鉄の海岸線が開業しました。三宮・花時計駅から新長田駅までを15分で結ぶということで、さっそく乗りに行ってきました。
ハーバーランド駅から三宮・花時計駅までのたった3駅だけ乗りました。これまでの神戸市営地下鉄と違って、車両が少し小さい、大阪市営地下鉄でいうと長堀・鶴見緑地線のような「ミニ地下鉄」でした。身長172センチの私でも、手を伸ばせば天井に手のひらがべたっとつくサイズです。
さて、そのハーバーランド駅のトイレに行った妻が、次のような張り紙があったと言ってました。
「このトイレはチュースイを利用していますので、水が黄色いですが、汚水ではありません」
という意味のことを書いてあったそうです。そして、
「でも水がほんとに黄色くて、チュースイとわかっていても、気持ち悪かった。」
と話していました。
恥ずかしながら私、この「チュースイ」ということばを知りませんでした。
漢字で書くと「中水」。
そうです、上水でもなく下水でもない水が「中水」です。
辞書に載っているのかな?と思ってひいてみると、「中水道」として載ってました。
「一般の水道(上水道)に対して、飲用には不適だが洗浄などには使用できる水(中水)の水道。処理済の下水などを用いる。雑用水道・工業用水道など。」(広辞苑・第五版)
専門用語ですが、国語辞典には載ってるぐらいのものですね。しかし、上水道・下水道に比べると、大分、知名度が低いのではないでしょうか。「注水」と音が一緒で紛らわしいし。しかし今後、この「中水」を用いたトイレなどがもっと増えてくるかもしれませんね。
2001/7/9
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