昭和11年(1936年)に那須書房から出た岡本成蹊訳の「ドン・フアン」の復刻本で、61年後の1995年(平成7年)7月25日に日本図書センターから出ています。
「事実は小説より奇なり」のひとことの起源は、このバイロンの詩篇『ドン・ジュアン』からだと知って、その原点を求めて(と言っても原典ではなく訳本ですが)を読んでみた。いわゆる「ドン・ファン」のイメージと違う世界が、そこには広がっていた。大学生当時に「ファウスト」を読んだ時のような感覚。文体が戦前のものだから余計にそう感じたのかもしれないが。
最初に想像したよりもおもしろく、「詩」だと思っていたら、「物語」であった。どうも「詩」と訳されている中世の物は、実はこういった物語であることが多いような気がしてきた。「詩篇」というのは誤訳ではないか?いや、誤訳ではなくとも、知らない者を惑わせるのではないか。「物語」とした方がいいよなあ。
この訳者の岡本成蹊は、主人公がスペイン出身なので「ドン・フアン」(「ア」も大きい)と訳しているが、バイロンはイギリス出身で英語で書いたのだから、ここは「ドン・ジュアン」の方が良いと思う。
で、この訳は「抄訳」だからかもしれないが、「事実は小説より奇なり」の一文を見つけることは出来なかった・・・。ありゃ・・・。
|
|
|